ホーク・フリート

海飛

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第一章 開戦編

#9 形勢逆転 降り注ぐ雨

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  「松浦。一体どういう事だ。保証がないのにどうする気だ」
  「航海長。はぎかぜとかざぐもは敵艦隊の向こう側にいるんだな?」
  「えぇ。ですから、我々と会合は厳しいかと」
  「構わん。はぎかぜとかざぐもを利用する。奴らは空間の中にいるということは確実に結界のようなものを張っているはずだ。見張り員には全周見張りを厳とさせて、レーダー員には敵のミサイルを探知次第飛んできた方位をあげさせろ。その方位に向かってはぎかぜ及びかざぐもにミサイルを撃たせる」

松浦ははぎかぜとかざぐものミサイルを使い、谷口艦隊周辺に張られている結界を破ろうという作戦だった。その作戦に一同は賛成し、即作戦に移行した。

  「つまり敵は、はぎかぜ、かざぐもの両艦を視野に入れてないということか?」
  「あぁ。奴らは確実にこちらに気を取られており、はぎかぜとかざぐもの存在を忘れている。そして、先程飛んできたミサイルがもし、真っ直ぐにしか飛ばせないGSMだとしたら?」
  「なるほど。艦首は確実にこちらに向いてるということか」
  「あぁ。はぎかぜとかざぐもは敵艦から約15マイル。ふるたかについては敵艦から約5マイルの位置にいた。つまり、奴らがもし結界のようなものを張っているのであれば、おそらく半径4マイルのものだ」

松浦は谷口艦隊が張っていると思われる結界が半径4マイルのものと推測。そして、松浦の推測はほとんど誤差がなかった。谷口艦隊が張っている結界は半径4.5マイル。直径にして9マイル。約14.5kmに及ぶ結界だった。松浦はこの結界を破るにはぎかぜとかざぐもが必要不可欠なのだと主張した。

  「しかし、松浦。例え、奴らの結界が破れたとして、そのあとはどうするつもりだ」
  「策はある。まずは、奴らの姿を出すことからだ。はぎかぜとかざぐもに伝えろ。全周警戒を厳とし、敵ミサイルをレーダーで捉えた直後にその方角にミサイルを発射せよ。と」
  「了解」

松浦は策があるといい、その策を明かさずに作戦を決行した。そして、松浦の指示はそのままはぎかぜとかざぐもに伝わり、両艦は即座に警戒を厳とし、いつでもミサイルが発射できる体勢となった。

  「艦長!CICより、敵ミサイルを感知。同時に、はぎかぜ、かざぐも両艦からもミサイルが発射されました!なお、敵ミサイルは現在、真方位250度、距離4マイル、針路は…うらかぜに向かっています!」

うらかぜ艦内では。

  「CICより、レーダー探知!!本艦に向かって発射された模様。真方位300度、距離4マイル…」

そこで、報告は途切れた。敵から発射されたミサイルはうらかぜに命中し、大爆発を起こした。被弾した所から勢いよく海水が浸水し、大きく左に傾き、沈み始めた。

  「艦長。敵ミサイル、うらかぜに被弾。うらかぜは左に傾き、沈み始めています」
  「まやを救助に向かわせろ。1人でも多くの隊員を救え」
  「了解しました」

まやは被弾し、傾斜しているうらかぜ乗員の救助に向かった。しかし、うらかぜが沈む速度が徐々に早くなり、多くの隊員がうらかぜと共に沈んでいく。その間も敵艦隊の脅威は収まることはなかった。そして、はぎかぜ及びかざぐもから発射されたミサイルは敵艦隊の姿を隠す結界に到達しようとしていた。

━はぎかぜ艦内━

  「まもなく、本艦から発射されたミサイルが目標地点に到達します」

━かざぐも艦内━

  「ミサイル到達まで、あと10秒。5秒。3 2 1 着弾」

はぎかぜ及びかざぐもから発射されたミサイルは敵艦隊の結界に到達。そして、見事にその結界は破壊され、敵艦隊が姿を現した。しかし、姿を現した敵艦隊のほとんどが火柱を上げ沈み始めていた。

  「松浦。どういう事だ。なぜ、あの艦隊のほとんどが大破してる」
  「狙い通りだ」

松浦は敵艦隊が大破してることは狙い通りだと言った。姿を現した谷口率いるさがみ以外の艦艇が空高く火柱を上げている。そして、その艦艇が徐々に沈み始めていたのだ。ついに敵艦隊はさがみ1隻となった。そして、沈み始める谷口艦隊の後方から姿を現す艦隊が見えた。そう、この艦隊こそが松浦が密かに計画していた作戦のひとつなのであった。
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