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かけてくる
かけてくる
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少年はお盆に父方の田舎に来ていた。
普段、少年が住んでいるところよりはだいぶ涼しい地域で、過ごしやすい場所だ。
父方の実家、少年からすると祖父の家は田んぼの真ん中にある。
今はまだ青い稲が鬱蒼と生えている、そんな時期だ。
少年はそんな田んぼを見て、感動していた。
毎年見ているのに、今年の田んぼはやけに神々しく、何か特別に思えたのだ。
今年は母がお米が高い、と、ずっと言っていたせいかも知れないが、少年にはどこか凄い物に思えたのだ。
少年が田んぼを見ていると風が吹く。
そうすると、田んぼの稲が一斉に揺れだす。
まるで田んぼの上を何かが駆けて来るかのような、そんな光景が見られたのだ。
その光景をみて、少年はさらに圧倒され、感動する。
だが、祖父はその様子を見て言うのだ。
良くないものが来た、と。
畑を見てはしゃいでる少年の手を引き、祖父は急いで家の中へと入っていった。
少年がもっと田んぼを見ていたいと言ったが祖父はまた今度にでも、と言って家の中へ入り、普段は閉めない玄関の鍵をかけた。
そして、家中の雨戸も閉めた。
それを見た祖母も、祖父の話を聞いて心配そうな顔をする。
なんでも、田んぼの上を駆ける半透明の子供の姿を祖父は見たというのだ。
祖父の住んでいる地域では、それは良い物ではなく、子供を連れていってしまう存在だというのだ。
少年の父もその話は知っていて、本当に出たのか? と、驚いている。
なんでも父の子供のころ、その存在に友人を一人連れていかれてしまったそうだ。
その存在は子供の魂だけを連れていくとされていて、連れていかれた子供は植物人間のような完全に寝たきりの状態となってしまうそうだ。
母親だけはその話を信じてはいなかったが。
だが、少年はその話を信じた。
少年も見たからだ。
風と共に稲の上を駆ける子供の姿を。
だが、少年にはそれが悪い存在には見えなかった。
あれは田んぼの神様かなにかで子供が好きで連れて行くんだ。自分もつれていかれれば、ずっとあの田んぼの上で、風のように駆けていられる、そんな風に思えて仕方がなかった。
次の日、少年は急いで帰ることとなった。
帰る際、黒いゴミ袋を頭からかぶり、口のところだけ穴をあけた状態で父親の車に乗せられた。
黒い色は田んぼの存在からは見えなくなるという話だ。
少年がゴミ袋の中から、車の外の様子を見る。
あまり良くは見えないが、少しだけ透けて見える。
そこで少年も気づく。
自分が間違っていたことを。
車の窓に凄い形相で睨んでくる子供が、車の窓を何度も叩いているその姿が見えたからだ。
祖父の言う通り、これは良い物ではなく、悪いものなど、すぐにわかるほどに。
少年は声を抑えて泣いた。
事前に喋ってもいけない、そう言われていたからだ。
車が田んぼを抜けると、車の窓に張り付いていたそれは自然と離れていった。
少年は再び祖父に会うことはなかった。
成人するまでもう田舎には来るな、そう言われていたからだ。
祖父の葬式にも、少年は出席できなかった。
少年が成人し、田舎に戻ったとき、祖父の田んぼは既になく、ただ空き地があるだけだった。
そこにはマンションが建つのだという話だ。
無論、田んぼの上を駆ける存在などもういるわけもない。
普段、少年が住んでいるところよりはだいぶ涼しい地域で、過ごしやすい場所だ。
父方の実家、少年からすると祖父の家は田んぼの真ん中にある。
今はまだ青い稲が鬱蒼と生えている、そんな時期だ。
少年はそんな田んぼを見て、感動していた。
毎年見ているのに、今年の田んぼはやけに神々しく、何か特別に思えたのだ。
今年は母がお米が高い、と、ずっと言っていたせいかも知れないが、少年にはどこか凄い物に思えたのだ。
少年が田んぼを見ていると風が吹く。
そうすると、田んぼの稲が一斉に揺れだす。
まるで田んぼの上を何かが駆けて来るかのような、そんな光景が見られたのだ。
その光景をみて、少年はさらに圧倒され、感動する。
だが、祖父はその様子を見て言うのだ。
良くないものが来た、と。
畑を見てはしゃいでる少年の手を引き、祖父は急いで家の中へと入っていった。
少年がもっと田んぼを見ていたいと言ったが祖父はまた今度にでも、と言って家の中へ入り、普段は閉めない玄関の鍵をかけた。
そして、家中の雨戸も閉めた。
それを見た祖母も、祖父の話を聞いて心配そうな顔をする。
なんでも、田んぼの上を駆ける半透明の子供の姿を祖父は見たというのだ。
祖父の住んでいる地域では、それは良い物ではなく、子供を連れていってしまう存在だというのだ。
少年の父もその話は知っていて、本当に出たのか? と、驚いている。
なんでも父の子供のころ、その存在に友人を一人連れていかれてしまったそうだ。
その存在は子供の魂だけを連れていくとされていて、連れていかれた子供は植物人間のような完全に寝たきりの状態となってしまうそうだ。
母親だけはその話を信じてはいなかったが。
だが、少年はその話を信じた。
少年も見たからだ。
風と共に稲の上を駆ける子供の姿を。
だが、少年にはそれが悪い存在には見えなかった。
あれは田んぼの神様かなにかで子供が好きで連れて行くんだ。自分もつれていかれれば、ずっとあの田んぼの上で、風のように駆けていられる、そんな風に思えて仕方がなかった。
次の日、少年は急いで帰ることとなった。
帰る際、黒いゴミ袋を頭からかぶり、口のところだけ穴をあけた状態で父親の車に乗せられた。
黒い色は田んぼの存在からは見えなくなるという話だ。
少年がゴミ袋の中から、車の外の様子を見る。
あまり良くは見えないが、少しだけ透けて見える。
そこで少年も気づく。
自分が間違っていたことを。
車の窓に凄い形相で睨んでくる子供が、車の窓を何度も叩いているその姿が見えたからだ。
祖父の言う通り、これは良い物ではなく、悪いものなど、すぐにわかるほどに。
少年は声を抑えて泣いた。
事前に喋ってもいけない、そう言われていたからだ。
車が田んぼを抜けると、車の窓に張り付いていたそれは自然と離れていった。
少年は再び祖父に会うことはなかった。
成人するまでもう田舎には来るな、そう言われていたからだ。
祖父の葬式にも、少年は出席できなかった。
少年が成人し、田舎に戻ったとき、祖父の田んぼは既になく、ただ空き地があるだけだった。
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