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うつるひと
うつるひと
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男は電車に乗っていた。
それも地下鉄のだ。
仕事で疲労していて、座りたかったが席は空いてない。
もう十時過ぎだというのに、電車はまだまだ混んでいる。
男は疲れた目でなんとなく、車両と車両を繋ぐドアを見ていた。
大きな窓の付いた車両を分けるドアだ。
二枚のガラス越しに向こうの車両が見える。
若干ではあるが向こうの車両の方が空いているようにも思える。
男が車両を移ろうかどうか、迷っていた時だ。
気づいてしまう。
車両を繋ぐドアのガラス窓。
そこにうっすらと不気味な女が映りこんでいることに。
くぼんで黒くなってよく見えない目。
長くぼさぼさの髪。
くすんだような灰色のワンピース。
そんな女がガラス窓に映りこんでいたのだ。
男は驚いて、映りこんだ女を観察する。
風貌は正に幽霊といった感じだ。
しかも、その女は車両を繋ぐドアの窓ガラスを覗き込むように凝視している。
それが車両を繋ぐ窓ガラスに映りこんでいる。
位置的には男の真後ろだ。
男はなんか嫌だな、と思いつつ、今度は視線をまっすぐに座席の上にある窓ガラスに向ける。
この電車は地下鉄だ。
窓の外は真っ暗で車内の様子を少しだけ映し出している。
それを使って男は自分の後ろにいるはずの女を確認しようとしたのだ。
だが、どういう訳か、座席のほうの窓には女が映りこんでいない。
角度が悪いとかではなく、そもそも男の後ろには人が映りこんでいない。
男が不思議に思い振り返ると、そこには誰もいない。
男は移動したか、気のせいだったか、そう思った。
だが、再び男が車両を繋ぐドアの窓に視線を向けたとき、あの幽霊のような女はまだ映りこんでいたのだ。
男もぎょっととして、後ろを振り返るがそこには誰もいない。
男は自分の後ろに幽霊がいて、それが車両を繋ぐほうのドアの窓にだけ映りこんでいると気が付く。
すぐにでもこの場から移動したい。そう男は考えるが、電車は混んでいる。
今更だし、移動するとしても真後ろにいる幽霊にぶつかりそうで怖かった。
だから男は思い切って、車両自体を移動することにした。
幽霊が映りこんでいるドアを開けるのは少し怖かったが、幽霊が真後ろにいる、また同じ車両内にいることの方が男には怖かった。
男は即座に行動する。
車両を繋ぐドアに手をかけそれを開いた。
その瞬間だ。
妙に生暖かく生臭い、湿った空気が車内に流れ込んでくる。
男はそこで本当のことに気づく。
幽霊は自分の真後ろにいたのではない。
車両を繋ぐドアとドア。
その間にいたのだと。
だが、開けてしまったものは仕方がない。
男は何食わぬ顔をして、生臭い空気と入れ替わるように別の車両へと移っていった。
その後は電車が駅に着くまで、男は決して隣車両、自分が元いた車両の方を、怖くて確かめることはできなかった。
それも地下鉄のだ。
仕事で疲労していて、座りたかったが席は空いてない。
もう十時過ぎだというのに、電車はまだまだ混んでいる。
男は疲れた目でなんとなく、車両と車両を繋ぐドアを見ていた。
大きな窓の付いた車両を分けるドアだ。
二枚のガラス越しに向こうの車両が見える。
若干ではあるが向こうの車両の方が空いているようにも思える。
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気づいてしまう。
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男は驚いて、映りこんだ女を観察する。
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しかも、その女は車両を繋ぐドアの窓ガラスを覗き込むように凝視している。
それが車両を繋ぐ窓ガラスに映りこんでいる。
位置的には男の真後ろだ。
男はなんか嫌だな、と思いつつ、今度は視線をまっすぐに座席の上にある窓ガラスに向ける。
この電車は地下鉄だ。
窓の外は真っ暗で車内の様子を少しだけ映し出している。
それを使って男は自分の後ろにいるはずの女を確認しようとしたのだ。
だが、どういう訳か、座席のほうの窓には女が映りこんでいない。
角度が悪いとかではなく、そもそも男の後ろには人が映りこんでいない。
男が不思議に思い振り返ると、そこには誰もいない。
男は移動したか、気のせいだったか、そう思った。
だが、再び男が車両を繋ぐドアの窓に視線を向けたとき、あの幽霊のような女はまだ映りこんでいたのだ。
男もぎょっととして、後ろを振り返るがそこには誰もいない。
男は自分の後ろに幽霊がいて、それが車両を繋ぐほうのドアの窓にだけ映りこんでいると気が付く。
すぐにでもこの場から移動したい。そう男は考えるが、電車は混んでいる。
今更だし、移動するとしても真後ろにいる幽霊にぶつかりそうで怖かった。
だから男は思い切って、車両自体を移動することにした。
幽霊が映りこんでいるドアを開けるのは少し怖かったが、幽霊が真後ろにいる、また同じ車両内にいることの方が男には怖かった。
男は即座に行動する。
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その瞬間だ。
妙に生暖かく生臭い、湿った空気が車内に流れ込んでくる。
男はそこで本当のことに気づく。
幽霊は自分の真後ろにいたのではない。
車両を繋ぐドアとドア。
その間にいたのだと。
だが、開けてしまったものは仕方がない。
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