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ばった
ばった
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男が住んでいる近くに空き地がある。
フェンスで囲まれているが男が知る限りずっと空き地で草が生えて藪のようになっている。
そこからたまに、歩道にまでバッタが飛び出して来ることがある。
子供の頃なら嬉しかったかもしれないが、大人になった今では驚いて顔を顰めるくらいの反応だろうか。
その日は午前中、所用があって午後からの出勤だった。
男としてはそのまま休みにしたかったのだが、取引先との打ち合わせの予定が入っていたので泣く泣くの出社だ。
所用である病院に行った帰り、その空き地の前を通る。
そうすると一匹の大きなショウリョウバッタが道に飛び出して来る。
男はびっくりして立ち止まる。
そのバッタが男の方を見る。
口の辺りが真っ赤だ。
バッタとは思えないような大きな赤い顎がついている。
本当にバッタか? と男がそう思っていると、子供の頃聞いた本当か嘘かも知らない噂を思い出す。
血吸いバッタ。
口元が赤いバッタで鋭い顎で噛みつき人の血を吸うのだというのだ。
まさに目の前のバッタがそれではないのか、男にはそう思えた。
とはいえ、相手はバッタだ。
男が一歩踏み出すと、空き地の中へと逃げ帰っていった。
午後に会社に出社した男は、まだ昼休み中だったので、その話を後輩にする。
すると、その後輩はクビキリギリスですよ、と男に教えてくる。
男はなんだそれは? ダジャレか? と思ったが調べると普通に出てきた。
そんな名前の虫がいたことに男は驚き、後輩をほめる。
取引先との打ち合わせを終わらせ、男が帰る時だ。
やはりあの空き地の前を通る。
そうすると一匹のバッタがまた男の前へと飛び出して来る。
だが、もう夜だ。
それがただのバッタなのか、クビキリギスなのか、男には判断がつかない。
だが、虫は虫だ。
少し脅してやれば、まだ藪の中へと戻っていくだろう、そう思った直後だ。
たくさんのバッタのような虫が藪の中から次々と飛び出して来る。
歩道を埋め尽くす勢いでだ。
さすがに男も驚き、逃げ出す。
だが、そのバッタ、いやクビキリギスは男を追いかけ、男に向かい、次々にたかっていく。
まるで昼間脅された仕返しだといわんばかりにだ。
そして、その大きな顎で男に噛みつくのだ。
男はたまらず悲鳴を上げて、クビキリギス達を手で払う。
のだが、振り払われたクビキリギス達は頭だけ残し、噛みついたまま絶命していくだけだった。
男が何とか近くのスーパーまでたどり着いた時には数十匹のクビキリギスの頭部だけが男に噛みついていたという。
男はそのまま即入院となった。
男の後輩がクビキリギスに噛まれて入院するだなんて、と笑いながらお見舞いに行くと、男を見て絶句した。
男は全身包帯まみれで、しかも今もその包帯に血がにじみ出ていたのだ。
また、感染症で男は熱にうなされてもいたのだ。
男はバッタの呪いだ、と、うわ言のように繰り返していた。
男がその後どうなったのか、その話は聞いていない。
フェンスで囲まれているが男が知る限りずっと空き地で草が生えて藪のようになっている。
そこからたまに、歩道にまでバッタが飛び出して来ることがある。
子供の頃なら嬉しかったかもしれないが、大人になった今では驚いて顔を顰めるくらいの反応だろうか。
その日は午前中、所用があって午後からの出勤だった。
男としてはそのまま休みにしたかったのだが、取引先との打ち合わせの予定が入っていたので泣く泣くの出社だ。
所用である病院に行った帰り、その空き地の前を通る。
そうすると一匹の大きなショウリョウバッタが道に飛び出して来る。
男はびっくりして立ち止まる。
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本当にバッタか? と男がそう思っていると、子供の頃聞いた本当か嘘かも知らない噂を思い出す。
血吸いバッタ。
口元が赤いバッタで鋭い顎で噛みつき人の血を吸うのだというのだ。
まさに目の前のバッタがそれではないのか、男にはそう思えた。
とはいえ、相手はバッタだ。
男が一歩踏み出すと、空き地の中へと逃げ帰っていった。
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すると、その後輩はクビキリギリスですよ、と男に教えてくる。
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そうすると一匹のバッタがまた男の前へと飛び出して来る。
だが、もう夜だ。
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だが、虫は虫だ。
少し脅してやれば、まだ藪の中へと戻っていくだろう、そう思った直後だ。
たくさんのバッタのような虫が藪の中から次々と飛び出して来る。
歩道を埋め尽くす勢いでだ。
さすがに男も驚き、逃げ出す。
だが、そのバッタ、いやクビキリギスは男を追いかけ、男に向かい、次々にたかっていく。
まるで昼間脅された仕返しだといわんばかりにだ。
そして、その大きな顎で男に噛みつくのだ。
男はたまらず悲鳴を上げて、クビキリギス達を手で払う。
のだが、振り払われたクビキリギス達は頭だけ残し、噛みついたまま絶命していくだけだった。
男が何とか近くのスーパーまでたどり着いた時には数十匹のクビキリギスの頭部だけが男に噛みついていたという。
男はそのまま即入院となった。
男の後輩がクビキリギスに噛まれて入院するだなんて、と笑いながらお見舞いに行くと、男を見て絶句した。
男は全身包帯まみれで、しかも今もその包帯に血がにじみ出ていたのだ。
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