それなりに怖い話。

只野誠

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どあ

どあ

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 ドアがある。
 男が住んでいる場所の近くにちょっとした遊歩道的な森があるのだが、そこにドアが、ドアだけがある。
 正確には、ドアの枠とドアだ。

 それが森の中にあったのだ。
 ちょうど遊歩道から五メートルくらい森へ入った場所にあった。

 散歩でよくこの遊歩道を歩く男は、何でこんなものが、と不思議に思う。
 捨ててあるにしては丁寧に、地面に対して直角にドアが立つように、まるでそこに壁があり、ドアが付いているかのように、ドアが立っているのだ。

 男はそのドアのところまで行って確かめる。
 ただのドアだ。
 見えない壁があるだけではない。
 ドアの裏側にも何もない。
 それどころか支えもない。
 なぜドアとドア枠が倒れずに地面からまっすぐ立っているのか、男には理解できなかった。

 男は不気味と思いながらも、ドアの取っ手をつかみ、恐る恐るドアを開ける。
 ドアを開けるとそこは異世界に繋がっているわけもなく、普通にドアの裏側の風景が見えただけだった。

 男は首をひねりドアを閉め、遊歩道へと戻る。
 そうして、もう一度遊歩道から男は森の中のドアを見る。

 なぜかドアが開いている。

 閉めたはずのドアがなぜか開いている。
 そして、男の見ているまでドアはひとりでにしまった。

 男の目には見えない誰かが、そのドアから出てきてドアを閉めたかのように男には思えた。

 そう思った瞬間男はその場から走って逃げた。
 何かが、あのドアの向こうに住む見えない存在が、ドアから出てきたと、そう思えて思えてならなかった。

 男が振り返るがもちろん何も見えない。
 見えないのだが、何かが追ってきているような、そんな気配がしてならなかった。

 遊歩道を抜けた男はわざと人通りが多い繁華街まで行ってから、複雑な道を通って自分の家まで帰った。

 そして、後ろを何度も振り返り自分をつけて来るものがいないかを確認してから、家のドアを閉めた。
 そこで男はやっと一息つく。
 その時にはもう夕方の時間になっていた。

 だから、男は家の戸締りをする。
 その時だ。
 家の庭に、あの遊歩道から見た森の中にあったドアがあったのだ。

 そして、ドアはゆっくりと開き、それからゆっくりと音もなく閉じた。
 少ししてから鍵をかけたはずの玄関のドアがガチャリと音を立てたあとゆっくりと開いていくのを男は呆然と見ていた。

 その後、男がどうなったのか。
 結果から言ってしまえば、何も起きていない。

 見えない何者かが男の家に入ってきたことは事実だ。
 だが、何か男の身に起きたかと言えば、何も起きていない。
 ふとした瞬間に、誰かがいるようなそんな気配が、気配だけがするだけだ。



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