84 / 710
とけい
とけい
しおりを挟む
家に古く大きな壁掛け時計がある。
少しでも物音がなくなると、コツコツコツとその時計の秒針の音が鳴り響く様な、そんな古く大きな時計がある。
木材の彫刻で大きな花束の意匠が施されている壁掛け時計。
少し怖さのある、見ていると引き込まれそうになるような、壁掛け時計だ。
少女はその時計が怖かった。
理由はわからない。
ただその何の花かもわからない、花束を模られた大きな壁掛け時計が怖かったのだ。
留守番をしているとき、コツコツコツと音をなりび聞かせる壁掛け時計。
夜、静まり返った大部屋で、コツコツコツと秒針を鳴らす壁掛け時計。
なぜか少女が一人の時、その壁掛け時計から視線を感じる。
そんな気がしていたからかもしれない。
とにかく少女は壁掛け時計が怖かったのだ。
ある日の昼下がり。
少女は家に一人でいた。
なんとなく大部屋で暇を潰していた少女は、不意に視線を感じる。
視線の元を探るとやはりあの花束の意匠の壁掛け時計から視線を感じる。
今は一人だが、昼と言うこともあり少女は少し強気だった。
少女は壁掛け時計の前まで行って時計を観察する。
精巧で複雑な花束の意匠が施されている。
綺麗だとは思うが、少女にとっては不気味さの方が勝っていた。
ところどころくりぬかれているところがあり、時計の向こうの壁が見えている。
特に変わったところはない。
少女が観察している間も、時計は淡々とコツコツコツと時を刻み続ける。
少女はもうしばらく時計を観察する。
そして、やっと視線の正体に、時計が不気味に思えていた正体に気づく。
この時計は騙し絵になっていて、巧妙に人の顔が隠れて彫り込まれている。
花の模様が、葉と葉の間が、枝と枝の重なり合いが巧妙に折り重なり合い、よく見ると人の顔のように見えるのだ。
一度気づけばそれがはっきりとわかる。
年老いた老人の顔が花の意匠で隠れるように描かれている。
疲れたような難しい顔をした老人の顔が意匠によってだまし絵のように描かれているのだ。
少女は驚きはしたが、納得もした。
この顔が隠れていたせいで不気味に感じていたし、視線のような物も感じていたのだと。
少女は両親が帰ってからそのことを告げる。
そして、その時計を見る。
が、どこをどう見ても老人の顔は見えない。
両親は見間違えたんじゃないか、と言っているが、少女はそんなことはないと、しばらく壁掛け時計を見続けた。
ただやはり老人の顔はどこにも隠れていなかった。
その夜になり一人で少女がその時計をもう一度見る。
そうすると老人の顔を時計の意匠の中に見つけ出すことが出来た。
だが、昼間、見ることが出来た老人の表情とは違う。
今、浮かび上がってきた老人の表情は笑っていている。
それも、少女を嘲わらうかのような、嫌な笑みを浮かべていた。
少女は怖くなり一人でその時計の前に立つことをしなくなった。
少しでも物音がなくなると、コツコツコツとその時計の秒針の音が鳴り響く様な、そんな古く大きな時計がある。
木材の彫刻で大きな花束の意匠が施されている壁掛け時計。
少し怖さのある、見ていると引き込まれそうになるような、壁掛け時計だ。
少女はその時計が怖かった。
理由はわからない。
ただその何の花かもわからない、花束を模られた大きな壁掛け時計が怖かったのだ。
留守番をしているとき、コツコツコツと音をなりび聞かせる壁掛け時計。
夜、静まり返った大部屋で、コツコツコツと秒針を鳴らす壁掛け時計。
なぜか少女が一人の時、その壁掛け時計から視線を感じる。
そんな気がしていたからかもしれない。
とにかく少女は壁掛け時計が怖かったのだ。
ある日の昼下がり。
少女は家に一人でいた。
なんとなく大部屋で暇を潰していた少女は、不意に視線を感じる。
視線の元を探るとやはりあの花束の意匠の壁掛け時計から視線を感じる。
今は一人だが、昼と言うこともあり少女は少し強気だった。
少女は壁掛け時計の前まで行って時計を観察する。
精巧で複雑な花束の意匠が施されている。
綺麗だとは思うが、少女にとっては不気味さの方が勝っていた。
ところどころくりぬかれているところがあり、時計の向こうの壁が見えている。
特に変わったところはない。
少女が観察している間も、時計は淡々とコツコツコツと時を刻み続ける。
少女はもうしばらく時計を観察する。
そして、やっと視線の正体に、時計が不気味に思えていた正体に気づく。
この時計は騙し絵になっていて、巧妙に人の顔が隠れて彫り込まれている。
花の模様が、葉と葉の間が、枝と枝の重なり合いが巧妙に折り重なり合い、よく見ると人の顔のように見えるのだ。
一度気づけばそれがはっきりとわかる。
年老いた老人の顔が花の意匠で隠れるように描かれている。
疲れたような難しい顔をした老人の顔が意匠によってだまし絵のように描かれているのだ。
少女は驚きはしたが、納得もした。
この顔が隠れていたせいで不気味に感じていたし、視線のような物も感じていたのだと。
少女は両親が帰ってからそのことを告げる。
そして、その時計を見る。
が、どこをどう見ても老人の顔は見えない。
両親は見間違えたんじゃないか、と言っているが、少女はそんなことはないと、しばらく壁掛け時計を見続けた。
ただやはり老人の顔はどこにも隠れていなかった。
その夜になり一人で少女がその時計をもう一度見る。
そうすると老人の顔を時計の意匠の中に見つけ出すことが出来た。
だが、昼間、見ることが出来た老人の表情とは違う。
今、浮かび上がってきた老人の表情は笑っていている。
それも、少女を嘲わらうかのような、嫌な笑みを浮かべていた。
少女は怖くなり一人でその時計の前に立つことをしなくなった。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
百の話を語り終えたなら
コテット
ホラー
「百の怪談を語り終えると、なにが起こるか——ご存じですか?」
これは、ある町に住む“記録係”が集め続けた百の怪談をめぐる物語。
誰もが語りたがらない話。語った者が姿を消した話。語られていないはずの話。
日常の隙間に、確かに存在した恐怖が静かに記録されていく。
そして百話目の夜、最後の“語り手”の正体が暴かれるとき——
あなたは、もう後戻りできない。
■1話完結の百物語形式
■じわじわ滲む怪異と、ラストで背筋が凍るオチ
■後半から“語られていない怪談”が増えはじめる違和感
最後の一話を読んだとき、
短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)
本野汐梨 Honno Siori
ホラー
あなたの身近にも訪れるかもしれない恐怖を集めました。
全て一話完結ですのでどこから読んでもらっても構いません。
短くて詳しい概要がよくわからないと思われるかもしれません。しかし、その分、なぜ本文の様な恐怖の事象が起こったのか、あなた自身で考えてみてください。
たくさんの短いお話の中から、是非お気に入りの恐怖を見つけてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる