それなりに怖い話。

只野誠

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すきま

すきま

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 少女は深夜になっても勉強していた。
 十二時もとっくに過ぎた、そんな時刻だ。

 そろそろ少女も寝ようかと言うとき、キキィィと音がして自分の部屋のドアが少しだけ開いた。

 少女もすぐに気づく。
 そして、びっくりしながらもそちらの目をやる。

 おかしい。
 このドアは簡易的ながらも鍵が掛けられるドアで、少女は鍵も掛けていたはずだ。
 開くはずはない。

 けれどドアは開いた。
 三センチほど開き、その後ドアは動かなくなった。
 その後半の反応もない。

 少女はすぐ弟の存在を疑う。
 弟の名を呼び、そこにいるんでしょう、と付け加えるが、なんの反応もない。

 三センチほどのドアの隙間、そこから妙な視線を感じる。
 ドアの隙間からは黒く闇が広がり何も見えないのだが、そこに何かが、誰かが、いることだけは少女には感じられた。

 少女は、誰かいるの、と声をかける。
 返事はない。
 ドアの隙間からものすごい視線を感じるため、少女もその隙間から目を離せなくなる。

 しばらくにらみ合いのようなものが続く。
 時間にして一分に満たない時間だが、少女には、その間がいやに長く感じた。

 その睨み合いのようなものの後、ドアの隙間から、すっと何かが出て来た。
 ドアノブの少し下くらい、白い、青白い指が、細長く枯れ木のような指が出てきて、ドアを掴んだ。

 少女は恐怖で声が出なかった。
 少なくとも弟の手ではない。父や母の物ではない。
 家族の者の手にあんな節くれだった手をした者はいない。

 少女は呼吸が早くなりながらも、その手から目が離せなかった。
 ただその手はドアを開けるでもなく、閉めるのでもなく、ただドアを掴んでいる。
 無論、ドアの隙間からは強烈な視線も感じたままだ。

 そのまま、少女の呼吸が荒くなったまま、また一分ほど時間がたつ。
 何も進展はしない。
 だが、少女の精神が限界を迎える。

 少女は奇声を上げて、ドアに向かって走り、足で思いっきりドアを蹴って無理やり閉めた。
 少女の奇声と、ドアを勢いよく閉じた大きな音が深夜に鳴り響く。

 すぐに少女の両親が駆け付けてきて、少女の部屋のドアを叩き少女の安否を確認する。
 少女は恐る恐るドアを開ける。

 そこには心配そうな両親がいるだけだ。

 少女は先ほどのことを両親に話したが信じてはもらえなかった。


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