それなりに怖い話。

只野誠

文字の大きさ
105 / 769
おおいかぶさる

おおいかぶさる

しおりを挟む
 男は一人暮らしだ。
 寝床はベッドではなく布団だ。

 会社から帰ってきたら動画サイトで安酒を飲みながら動画を見て寝る。
 そんな日常を送っていた。

 その日も、深夜十二時ごろに男は床に就く。

 まだ春先だと言うのに部屋に蚊がいたので、男は布団の中に潜り込んで寝ていた。
 それ程暑苦しいこともない。
 むしろ、この時期布団の中まで潜り込むと暖かくて寝やすい、男はそんなことを思っていた。

 その日もすぐに意識はなくなり眠りに着く。

 ふと男は布団の中で目を覚ます。
 部屋の中になにか違和感を、布団の中に居ながらにして気づく。

 すぐに男は気づく、部屋の中に誰かいると。
 男はすぐに泥棒かと考えるが、この部屋に盗めるような金目のものはない。

 気づかぬふりをしていれば、諦めて帰ってくれるのではないか、下手に起きていると気づかれて、殺されでもしたら馬鹿らしい、そう考えた。
 実際、この部屋に盗まれて困る物と言ったら、スマホくらいの物だ。
 そのスマホも起きたとき踏んで壊さないようにいつも枕の下に置いてある。
 流石にそんなところまでは探しはしないだろうと、男は思っていた。

 ただ変だ。
 どうも足音が泥棒と言った感じではない。

 忍び足をする感じではない。
 酔っ払いが何とか歩く、そう、千鳥足のようなそんな歩き方だ。
 酔っ払いが間違って部屋に上がり込んで来たのかと思ったが、流石に玄関のドアの鍵は閉めているし、玄関のドアが開けばそれだけで男は目を覚ます自信はある。
 なにせ部屋の違和感だけで起きれるほど、男は神経質なのだから。

 男がどうするか迷っていると、足音の主が男の布団の近くに寄って来た。
 迷いすぎたと男は思い今からでも起きようとするが、今度は体が動かない。
 指一つ動かせない。
 今、男に出来ることは布団の中で自分のことを気づかないでくれと願う事と小さく震えることくらいだ。

 足音の主は布団の上にも無造作に上がる込んでくる。
 器用に男の寝ている場所を避けて、布団の上を歩く。
 男を跨ぐようにそれは立つ。
 
 そして、男の顔をの真横に何かがドサッと音をさせて布団を沈めさせる。
 男には布団の中だったが、それが手をついたのだと想像できた。
 なぜなら、布団一枚を通して、何者かの息遣いを感じることが出来たからだ。
 男の顔を挟むようにもう一度ドサと音がして、布団が沈む。
 恐らくは両手をついたのだろう。

 男は何者かに布団の上から覆いかぶさられているような状態だ。
 男は性別を女と勘違いされているのではないか、そんなことを考えたが、布団の上で覆いかぶさっているものは、それ以降何かしてくるわけではない。

 ただ男の様子を伺うように、布団越しにその息遣いだけが聞こえてくる。

 男の体は相変わらず全く動かない。
 男は恐怖に身を震わせる。

 そうしていると男の顔に布団がのしかかる。
 男にのしかかっているものが、顔を押し付けているのだと、理解するまでに少し時間を要した。

 男の顔に布団を介してだが、のしかかってくる者の顔が当たる。

 それは奇妙だった。
 それが息をしているのは感じられる。
 だから、男の顔の真上にあるのが何者かの顔であることは間違いがない。
 だが、押し付けられたそれは平たいのだ。
 凹凸が何一つ感じられない。
 ただ平たいお盆か本か、そんなものが布団を挟んで顔の上に乗っている、そんな感覚なのだ。
 なのに布団越しに覆いかぶさっている存在の息がかかる。
 布団を通して、覆いかぶさっている何者かの息が、生臭い息が伝わってくる。

 男が恐怖で気が狂いそうになっていると、不意に顔にかかっていた圧が消え、布団を沈ませていた物も消えた。
 そして、千鳥足のような足音をさせて、それは男から去っていってた。

 男は一度落ち着いてから、体が動くようになっていることを確認し、起きてすぐに部屋の明かりをつけた。

 そこは普通の男の部屋だ。
 荒らされた後もない。
 何者がいた気配もない。

 時刻を見るとちょうど深夜の三時になった時だった。

 男がこんなことを体験したのは、これが初めてであり以降こんなことは体験したことはなかったと言う。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念
ホラー
一話完結のお話をぽつぽつとしたためております。ドロッとしたよくわからないものに対しての恐怖をお楽しみください

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

処理中です...