それなりに怖い話。

只野誠

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うたたね

うたたね

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 女は休みの日の昼に、転寝をしていた。
 家のことをやり終え、昼食を取り、一息ついたら気が抜けてしまい、強い眠気に襲われたからだ。

 女はソファーの上で横になり、少しだけと目を閉じる。
 スッーと誘われるように眠りに落ちていく。

 それから、少しして女の意識が覚醒する。
 いや、未だ覚醒にまでは至らない。
 睡眠と覚醒の間。そこを女の意識は漂っていた。

 そろそろ起きなきゃという意識と、もう少しこのままでいたいという意識がせめぎ合う。

 そんな時だ。
 ガタン、と何かが落ちるような音がする。
 そして、ギィギィと床を鳴らして歩く音が聞こえてくる。

 女は何か嫌なものを感じ起きなきゃ、とそう思うのだが、体が動かない。
 体はまだ完全に寝ていて、意識だけ半覚醒している状態だ。

 足音が近づいてくる。

 女は必死に体を動かそうとする。
 なのに、体はまるでいう事を聞かない。
 女は焦りだす。
 だけれども、体は一向に動こうとしない。

 足音が女の目前で止まる。

 女は頭の中で何度も、起きろ起きろ起きろ、と、繰り返す。
 そして、目が開き、上半身をガバッと起こす。

 荒く息を吐き出し、深呼吸をしながら周りを見渡す。
 そうすると、そこにはないはずの物があった。
 子供の頃から大事にしていた人形が床に倒れ込むように落ちている。

 女はゾッとしたが、ピピピピッという電子的な警告音を耳にする。
 その音を聞いて、女はお湯を沸かしていたことを思い出す。
 昼食後にコーヒーでも飲もうと、お湯を沸かしたのを完全に忘れていたのだ。

 女は人形を拾い上げ、教えてくれようとしたの? と、声を掛ける。
 そして、その人形をソファーの上におき、女はお湯を沸かす火を止めに台所へと向かう。

 火を止めに向かった女を、人形はじっと身動きしないで見つめている。



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