それなりに怖い話。

只野誠

文字の大きさ
366 / 769
ほそいかいだん

ほそいかいだん

しおりを挟む
 幅の狭い、細い階段がある。
 崖に、崖と言ってもコンクリートで固められたものだが、そこにかけられた階段だ。
 かなり昔に作られた物でもうさび付いている金属製の、本当に人一人が通るのがやっとの幅しかない階段だ。

 それを利用する人間はもういない。
 もしかしたら子供達の遊び場になっているかもしれないが、通行目的ではもうほとんど利用されない。
 崖と言ってもそれほど高い物ではない。精々二メートルから三メートルほどのものだ。
 低くはないが、それほど高いと言うこともない。

 ちょうど崖の上が普通の家屋の二階程度、と言えば想像しやすいかもしれない。
 その程度の崖にかけられた、それもいつかけられたかもわからない細い階段だ。

 男の家はその階段を通るとかなり近道ができる場所にある。
 だから、男は稀にその階段を使う事がある。

 急いでいるとき、なんとなく気が向いた時、利用するときはそんな感じだ。
 今日、男がその階段に足を駆けたのは後者が理由だ。

 カンカンカンと音を立てて、男は階段を登る。
 そうすると、男の後ろから、カンカンカンと、後に続くものがいる。
 男は珍しいと思いつつも、細い階段だ。
 振り返る様な事はしない。
 ただ、この細い階段。急ではないのだがその分余計に長い。

 男が半分ほど登ったところで、前からも人影を確認できる。

 珍しく鉢合ってしまったか、男がそう考えていると、前からやってくる者の全容が見える。
 白い靄だ。
 人の形をした靄が階段を、カンカンカンッと鳴らしながら降りて来ている。

 どう見ても人間ではない。

 男は逃げようとするが、後ろにも人がいる。
 慌てて男が振り返るが、後ろにいた存在もまた白い靄で、前から来ているようなものと同じような存在だ。

 男はか細い悲鳴を上げる。
 この細い階段では逃げ場もない。

 そして、この階段から飛び降りる勇気も男にはなかった。

 男が階段の中腹で固まっていると、その白い物やが男の横をすり抜けるように通っていく。
 妙に冷たく、物凄く生臭い、そんな靄だ。
 ねっとりと冷たい冷気が体にまとわりつく様なそんな感覚に男は襲われる。
 更に耳元に何か念仏のような、いや、複数人に同時に何か意味不明な言葉を投げかけられるようなそんな物が耳に聞こえてくる。

 男が恐怖で震えていると、それは通り過ぎていく。
 そして、すぐに、後ろの存在が、同じように男を追い越していく。

 男は足を震わせて、その生臭い臭いと冷たい気配に耐える。
 それらの存在同士は互いに干渉し合わずに階段を降り、登って行った。

 男にも何かするわけでもない。

 すぐに静寂が訪れる。
 男は震えながらに階段を登り切り、いうことを聞かなく震える足でフラフラとしながらも走って家まで帰ったそうだ。

 その後、男はその細い階段を使うことはない。
 ただ、それだけの話だ。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念
ホラー
一話完結のお話をぽつぽつとしたためております。ドロッとしたよくわからないものに対しての恐怖をお楽しみください

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

処理中です...