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ほそいかいだん
ほそいかいだん
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幅の狭い、細い階段がある。
崖に、崖と言ってもコンクリートで固められたものだが、そこにかけられた階段だ。
かなり昔に作られた物でもうさび付いている金属製の、本当に人一人が通るのがやっとの幅しかない階段だ。
それを利用する人間はもういない。
もしかしたら子供達の遊び場になっているかもしれないが、通行目的ではもうほとんど利用されない。
崖と言ってもそれほど高い物ではない。精々二メートルから三メートルほどのものだ。
低くはないが、それほど高いと言うこともない。
ちょうど崖の上が普通の家屋の二階程度、と言えば想像しやすいかもしれない。
その程度の崖にかけられた、それもいつかけられたかもわからない細い階段だ。
男の家はその階段を通るとかなり近道ができる場所にある。
だから、男は稀にその階段を使う事がある。
急いでいるとき、なんとなく気が向いた時、利用するときはそんな感じだ。
今日、男がその階段に足を駆けたのは後者が理由だ。
カンカンカンと音を立てて、男は階段を登る。
そうすると、男の後ろから、カンカンカンと、後に続くものがいる。
男は珍しいと思いつつも、細い階段だ。
振り返る様な事はしない。
ただ、この細い階段。急ではないのだがその分余計に長い。
男が半分ほど登ったところで、前からも人影を確認できる。
珍しく鉢合ってしまったか、男がそう考えていると、前からやってくる者の全容が見える。
白い靄だ。
人の形をした靄が階段を、カンカンカンッと鳴らしながら降りて来ている。
どう見ても人間ではない。
男は逃げようとするが、後ろにも人がいる。
慌てて男が振り返るが、後ろにいた存在もまた白い靄で、前から来ているようなものと同じような存在だ。
男はか細い悲鳴を上げる。
この細い階段では逃げ場もない。
そして、この階段から飛び降りる勇気も男にはなかった。
男が階段の中腹で固まっていると、その白い物やが男の横をすり抜けるように通っていく。
妙に冷たく、物凄く生臭い、そんな靄だ。
ねっとりと冷たい冷気が体にまとわりつく様なそんな感覚に男は襲われる。
更に耳元に何か念仏のような、いや、複数人に同時に何か意味不明な言葉を投げかけられるようなそんな物が耳に聞こえてくる。
男が恐怖で震えていると、それは通り過ぎていく。
そして、すぐに、後ろの存在が、同じように男を追い越していく。
男は足を震わせて、その生臭い臭いと冷たい気配に耐える。
それらの存在同士は互いに干渉し合わずに階段を降り、登って行った。
男にも何かするわけでもない。
すぐに静寂が訪れる。
男は震えながらに階段を登り切り、いうことを聞かなく震える足でフラフラとしながらも走って家まで帰ったそうだ。
その後、男はその細い階段を使うことはない。
ただ、それだけの話だ。
崖に、崖と言ってもコンクリートで固められたものだが、そこにかけられた階段だ。
かなり昔に作られた物でもうさび付いている金属製の、本当に人一人が通るのがやっとの幅しかない階段だ。
それを利用する人間はもういない。
もしかしたら子供達の遊び場になっているかもしれないが、通行目的ではもうほとんど利用されない。
崖と言ってもそれほど高い物ではない。精々二メートルから三メートルほどのものだ。
低くはないが、それほど高いと言うこともない。
ちょうど崖の上が普通の家屋の二階程度、と言えば想像しやすいかもしれない。
その程度の崖にかけられた、それもいつかけられたかもわからない細い階段だ。
男の家はその階段を通るとかなり近道ができる場所にある。
だから、男は稀にその階段を使う事がある。
急いでいるとき、なんとなく気が向いた時、利用するときはそんな感じだ。
今日、男がその階段に足を駆けたのは後者が理由だ。
カンカンカンと音を立てて、男は階段を登る。
そうすると、男の後ろから、カンカンカンと、後に続くものがいる。
男は珍しいと思いつつも、細い階段だ。
振り返る様な事はしない。
ただ、この細い階段。急ではないのだがその分余計に長い。
男が半分ほど登ったところで、前からも人影を確認できる。
珍しく鉢合ってしまったか、男がそう考えていると、前からやってくる者の全容が見える。
白い靄だ。
人の形をした靄が階段を、カンカンカンッと鳴らしながら降りて来ている。
どう見ても人間ではない。
男は逃げようとするが、後ろにも人がいる。
慌てて男が振り返るが、後ろにいた存在もまた白い靄で、前から来ているようなものと同じような存在だ。
男はか細い悲鳴を上げる。
この細い階段では逃げ場もない。
そして、この階段から飛び降りる勇気も男にはなかった。
男が階段の中腹で固まっていると、その白い物やが男の横をすり抜けるように通っていく。
妙に冷たく、物凄く生臭い、そんな靄だ。
ねっとりと冷たい冷気が体にまとわりつく様なそんな感覚に男は襲われる。
更に耳元に何か念仏のような、いや、複数人に同時に何か意味不明な言葉を投げかけられるようなそんな物が耳に聞こえてくる。
男が恐怖で震えていると、それは通り過ぎていく。
そして、すぐに、後ろの存在が、同じように男を追い越していく。
男は足を震わせて、その生臭い臭いと冷たい気配に耐える。
それらの存在同士は互いに干渉し合わずに階段を降り、登って行った。
男にも何かするわけでもない。
すぐに静寂が訪れる。
男は震えながらに階段を登り切り、いうことを聞かなく震える足でフラフラとしながらも走って家まで帰ったそうだ。
その後、男はその細い階段を使うことはない。
ただ、それだけの話だ。
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