それなりに怖い話。

只野誠

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かわのくい

かわのくい

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 街中を流れる川の中に、点々と等間隔で杭が打ってある。
 何のために杭が打ってあるのか、今となっては誰も知らない。
 だが、それを抜こうとする者もいない。

 今はこの杭を抜くと良くないことが起こる、とか、杭自身が不吉である、とか、そんな噂があるからだ。
 杭自体は木製の普通の杭だ。
 もうかなり古くなっているので、いつその杭が壊れてもおかしくはない。
 そんな杭が川の中にある。

 少女が部活帰りで川沿いを歩いていた。
 電灯もあるし広い道なので、日が落ちた時間では少女にとって何かと重宝している。
 ただ川の方はもう真っ暗で、緩やかに水が流れる音しか聞こえてこない。

 そのはずだった。

 少女は川の中に、ポゥと青白く淡い光を目にする。
 それが点々と、等間隔に並んでいるのだ。

 何だろうと、少女は目を凝らす。
 それなりに距離があるはずだったのだが、少女にはそれがはっきりと分かった。

 人の頭部だ。

 青白くぼんやりと光る、人の顔が川の上に並んでいるのだ。
 それが、その光る頭部が、川の中にある杭の上に、浮かび出ているの物だと、少女が気づくのには時間がかからなかった。
 少女も昔から、川の中の謎の杭として、色々と話を聞いてきたからだ。

 有名なのは杭の下に死体が埋められている。
 それが人柱となり、川の氾濫を抑えているとか、杭は川の神である竜の背に打ってあり、竜をこの場に留めることで、この川周辺の繁栄をもたらしている、そんな嘘か本当かわからないような噂話を少女も聞いていたからだ。

 少女の頭の中に浮かんだのは、人柱の話だ。
 杭の上に頭部が浮かんでいるのは、人柱にされた人が息継ぎに川の中から顔を出しているのではないか、そんな風に思えたのだ。

 少女は震えながらもなんとか、川から離れようとする。
 ある程度離れたところで、少女は川の方を見てしまう。

 そうすると、見ていたのだ。少女の方を。
 杭の上のが顔が、いくつもある顔が、すべての顔が、去っていく少女の方を向いていたのだ。
 少女はゾクゾクした寒気を感じる。

 そして、少女はすぐに察する。
 ああ、自分はもう助からないのだと。

 その後、少女はとぼとぼと、泣きながら、歩いて家に帰る。
 少女は家に帰るなり両親に謝る。
 謝られた両親は何のことだかわからない。

 だが、それから三週間後だ。
 少女が川で溺れて死んでいるのが発見されるのは。
 そして、朽ちた杭の代わりに、新しい杭が一本増えたのだ。




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