それなりに怖い話。

がっこうのかいだん

がっこうのかいだん

　とある中学にある階段はあまり良くない噂がある。
　それは、よくある怪談の類ではあるが。

　日が暮れた後、その階段を使うと延々と階段を降りなくてはならなくなって、しまいには地獄に着くのだという。

　そんな噂だ。
　噂が本当かどうか、もちろん知るものは居ない。
　もし、いたら地獄に行って帰って来てしまったことになる。
　だから、その噂の真偽は不明のままだ。

　とはいえ、行方不明者がいるわけでもないので、その噂は限りなく嘘であるが。

　少女は部活を終え、自分の教室においてあった荷物を持ち、階段をゆっくりと歩いて降りる。
　もう日が暮れており、校舎内の電気も付いていない。
　ただ窓から少しばかりの明かりが差し込んできているので、真っ暗というわけでもない。
　それでも、急いで階段を降りるのは危険な暗さだ。

　少女は一段一段、確かめながら、ゆっくりと階段を降りる。
　その時だ、階段の噂のことを思い出す。

　そして、身を震わせ、まさか、とそう思う。

　一階を目指して少女は階段を降りる。
　一階、二階と、階段を降りていく。
　次はもう一階のはずだ、実際少女は一階に、地上階に着いたのだ。
　階段の脇に昇降口も見える。

　だが、少女の前には地下へと続く階段が見えている。
　無論、この中学校に地下などない。

　少女はこれが噂の真相だと気が付く。
　これは少女の想像ではあるが、この階段を一段でも降りてしまえば、もう戻っては来れないのだろう。
　それを知っていて降りる人間はいない。

　地獄へと続く階段は、一階に地下へと続く階段が現れそれを降りてしまうと、もう戻れなくなり地獄に行くしかなくなるのだ。
　それがきっと正しい噂なのだと、少女は勝手に確信する。

　それが本当なかどうか。
　知る者はいない。
　なぜなら少女はその階段を一段も降りずに昇降口へと向かい、学校から出て行って普通に帰宅したからだ。

　次の日、少女は昨日見たことを友人に話すかどうか迷い、その結果、誰にも話さなかった。
　ただの見間違いだったかもしれないし、そもそも地獄に行きつくとは決まっていない。
　何より、そんなことを言っても、嘘つき呼ばわりされるだけだと、そう少女は考えたからだ。

　だから、階段の噂の真偽は今も不明なのだ。