それなりに怖い話。

只野誠

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こーひー

こーひー

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 男は仕事中なのに眠かった。
 寝不足というわけではないが、日ごろの疲れが出てきてしまったのかもしれない。

 そこで男はコーヒーを淹れることにした。
 インスタントコーヒーではあるが。
 自分のマグカップに、インスタントコーヒーを少し多めに入れ、お湯を注ぐ。
 そして、脳に栄養をと砂糖も入れる。
 
 匂いを嗅ぐとコーヒーの良い香りがする。
 それを一口飲み、自分のデスクに戻る。

 だが、目が覚めることもなく相変わらず眠い。
 男はコーヒーを飲む。
 熱いコーヒーは目を覚まさせるような、そんな錯覚をもたらすが、それは一時的なことで、すぐにまた眠くなる。

 眠くて少し頬けていた男は、マグカップを持ったまま、黒い液体、コーヒーを見る。
 コーヒーはまだかき混ぜた影響で、少しだけ渦を巻いていた。
 男はそれをじっと見る。
 まるでそのコーヒーの渦に引き込まれるような感覚に陥る。
 それどころか、視界がぐわんぐわんと歪みだす。

 そして、そのまま倒れ込み、マグカップのふちに頭をぶるける。
 机の上にコーヒーが飛び散り、男の顔にも熱いコーヒーがかかる。

 流石に目が覚める。
 周囲から視線を向けられるが、男は笑って頭をペコペコと下げた。

 しばらくはそれで問題なかった。
 だが、また眠くなってくる。
 頭が呆然としてきて、男は手に持ったマグカップを見る。
 もうコーヒーは渦を巻いていない。
 黒い水面が見えるだけだ。

 男がそれを見ていると、その黒い液体の中に引きずり込まれるような感覚に陥る。
 だが、男ももういい大人だ。
 さっきのようなことを起こすわけにはいかないと、首を横に振る。

 その時だ。
 同じくコーヒーを飲んでいた同僚の一人が机に倒れ込んだ。

 他の社員がその同僚を揺するが同僚は手を挙げ反応するのだが、起きれず何もしゃべれないかのようだった。
 それどころか痙攣のような動きすら始める。

 男はその時にひらめく。
 このコーヒーが原因ではないのかと。

 そして、給湯室に走り、インスタントコーヒーのラベルを確認する。
 そうするとそのコーヒーのラベルに三十年以上前の製造年月日が印字されていた。
 ただ匂いなどは普通のコーヒーと変わりないのだ。

 男はこれが原因ではないか、インスタントコーヒーの瓶を持って騒ぎ出す。

 そのコーヒーが原因だったか、それはわからないがそのコーヒーは流石に捨てられた。
 痙攣したかのようになっていた同僚もすぐに回復はした。

 ただ謎なのはこの会社、ほんの数年前に設立された会社なのだ。
 なぜそんな古いインスタントコーヒーがあったのか、誰もその理由を知らない。





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