それなりに怖い話。

只野誠

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らっぱのおと

らっぱのおと

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 夕方、日が沈むか沈まないかくらいの時間にラッパを吹く様な、そんな音が聞こえて来る。
 ただ吹き鳴らしているのか、何かの曲なのか、女にはわからなかったが。
 ただ、ラッパを吹き鳴らすような音が聞こえていたことは事実だ。

 近くに学校などがあれば、吹奏楽の練習なのだろうと分かるが、女が住んでいる家の近くにはそんな施設はない。
 音楽教室といった場所も近所にあったか女は覚えはない。

 ただ、こうしてラッパの音が聞こえてくると言うことは、そう言うものがあるか、できたのだろうと、女はそう思っていた。
 しかも、複数のラッパの音が聞こえて来るのだ。
 個人で吹いている、という訳でもないのだ。
 それに日が完全に暮れる頃にはいつの間にかに、ラッパの音は聞こえなくなっている。

 女も特に迷惑と感じたことはなかったので、気に留めることもなかった。
 だから、そのラッパの音がいつからなっていたのかもわからない。
 最近は最近だが、一ヶ月前にはもうなっていたいた気がする。
 少なくとも去年はなっていなかったはずだ。

 女にとってはそれくらいの感覚だ。

 夜になり夫が帰って来たので、女はラッパの音の話をする。
 夫も女の話を聞いて、近くに音楽教室でもできたんじゃないか、とそう言っていた。

 その日はそれ以上、その話はされなかった。

 だが、土曜日の夕暮れ時だ。
 ラッパの音がいつものようになり出した。

 女は、ほら、ラッパの音が、と夫に話しかける。
 話しかけられた夫は顔を顰めるだけだ。
 夫は、ラッパの音など聞こえてこない、と、そう言ったのだ。

 女はからかわれていると思い、その日は少しだけ喧嘩をした。

 次の日、近所の人と話す機会があったので、女はラッパの音のことを聞いてみた。
 そうすると、そんな音聞いたことはない、と返事が返って来た。
 今度は女が顔を顰める。
 夫はちょっと得意げな顔で女を見ていた。
 
 その日の夕方、ラッパの音が鳴りだす。
 女は夫にそのことを言うのだが、夫ももう相手にもしない。
 それで、女はスマホその音が録音できないか、そう思って試してみるが、ラッパの音が録音されることはなかった。

 その日の夜、女は急な吐き気に襲われる。

 そして、女はまだ確かめてないのだが喜んだ。
 あのラッパの音は、祝福の知らせだったのだと。






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