それなりに怖い話。

只野誠

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あとからついてくる

あとからついてくる

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 女が仕事の帰り道、誰かにつけられている。
 そう感じていた。
 けれど、振り返るのだが誰もいない。

 だが確かに、足音が二重に聞こえてきたり、視線を感じたり、背後からなにか気配を感じたり、誰かが女をつけてくるような気配だけは感じていたのだ。

 女にも自分の気のせいか、そうじゃないのか。
 その判断がつかない。
 気のせいじゃなかった時のため、警戒だけは怠らない。
 何度か後ろを振り返りながら、女は小走りになる。
 そうすると、重なるように響く足音も小走りになる。

 それでも後ろを振り返ると誰もいないのだ。

 一本道で隠れるような場所もない。
 音が響くような場所でもない。
 女は仕方なく後を見ながら、振り返りながら、歩き始める。
 そうすると、足音は自分のものしか聞こえてこない。

 けれど、前を女が向いたとたん、足音は二重に聞こえてくる。
 慌てて後ろを確認するが誰もいないのだ。

 もし、自分をつける者がいたとしても、あまりにも不可解だ。

 女は途端に怖くなる。
 何かよくないものに魅入られたのではないか、そう思うようになる。

 女は全力で走り出した。

 そうすると足音も走り出す。
 それどころか、自分のすぐ後ろに荒い息遣いまで聞こえてくる。
 もちろん、振り返っても誰もいない。
 すぐ後ろに誰かいるような気配までするのにだ。
 生暖かい息が女の髪の毛に当たるほどまですぐ後ろにきている。

 女は観念したように足を止めて振り返る。
 誰もいない。

 全力で走り、乱れた息を女は整える。
 そして、後を見ながら後退りし始め、ゆっくりと後ろ歩きし始める。

 足音はない。
 気配もない。
 息遣いも女のものだけだ。

 女はそのまま、曲がり角までやってきて、曲がり角を曲がった後、全速力で自分の家に駆け込んだ。

 それ以来、女はひどい肩こりに悩むようになる。
 女は気づいていないようだが、あとからつかれた、のだ。






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