絶対少女議事録 ~蟹座の私には、フェチニズムな運命を感じられずにはいられない~

只野誠

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挑む竜と神に弓引く大猪

【Proceedings.73】挑む竜と神に弓引く大猪.03

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「デュエルですね! 待っていましたよ!」
 その掛け声と共に猫屋茜が柱の影から飛び出して来た。
「茜…… やっぱり隠れてたか。でも、茜の出番は話しがまとまってからね」
 だが、巧観が冷静に対処して、そのまま茜を柱の影に押し返そうとする。
「ええー、ま、まあ、私はデュエルさえ開催してくれれば文句はないですけど…… なるべく明日以降でお願いできますかー?」
 巧観に押し返されながら、その言葉だけを何とか伝える。

「まあ、好きにすればいいさ」
 それを聞いた戌亥道明は余裕のある笑顔でそう言って見せる。
「やった!」
 それを聞いた茜は巧観によって柱の陰に押し込まれていく。

 その様子を見て葵は道明に声をかける。
「で、デュエルなんだろ?」
 余裕の笑みで少し、挑発するように。

 だが、その挑発に、そんな安い挑発に道明は乗らない。
「そうだ。ボクに勝てば葵君、キミは絶対少女だよ」
 そして、その事実を伝える。
 すでに葵は、道明以外のすべてのデュエリストを倒している。
 道明だけがまだ葵に負けていない。
 つまり、道明を葵が倒せば、葵はデュエルの優勝者となり、絶対少女になるのだ。

「その絶対少女って、そもそもなんなんだい?」
 葵が道明ならば知っているのでは、そんな気がして聞いてみる。
 今の所、葵の情報では称号のような物で、なるとどんな願いも叶う、という事しかわからない。
 まるで実態がないのだ。

「何言ってるの、葵。絶対少女は絶対少女だよ」
 だが、巧観は、茜を柱の陰に追いやった後、絶対少女という物が当たり前の事のように言う。
「うーん、願いが叶うとか、称号の様なものだとか…… そんな曖昧な話しか聞かないね」
 だが、葵はそう言って笑う。
 その笑いはいつもの優雅な笑いではない。
 葵にしては珍しく嘲笑するような笑みだ。

「まあ、巫女みたいなものかな」
 そんな葵の笑みを見て、道明も話すつもりになる。
 伝えるべきだと考える。
「巫女、巫女ね…… やっぱり巧観兄、生徒会長は色々と知っているんだね?」
 自らも巫女であると宣言したことのある葵だ。
 ただし、葵は普通の巫女とはかけ離れている。
 ある意味、最も神聖で最も罰当たりな巫女が葵なのだ。
 だからこそ、道明が言う巫女とやらにも想像がつく。

「まあね。と言っても、この絶対少女議事録のおかげだけどね」
 そう言って一冊の本を道明は制服の懐から出す。
 その本は少女が書く日記のような表紙が付いている。
「これは…… またまた随分な物を」
 それを見た葵は目を細めてそれを見つめる。
 手を出そうとはしない。
 葵はその書物から発せられる気に、気軽には手を出そうとは思わない。
 それ相応の覚悟がなければ、それに向かって手を伸ばす資格すら与えられない、そんな代物だ。

「やはり、これが何かわかるのかい?」
 道明も葵ならばと、思っていたが想像通りの反応で笑みが自然とこぼれる。

「正確にはわからないよ。でも、これ、神示でしょう?」
 そして、天辰葵は確信的な事の述べる。
 この見た目は少女の日記のようなノートを神示だというのだ。
 その書物が発せられる気は、人間がただ書いたものではない。
 神の言葉を書き記した物で間違いはない。
 葵はそう確信を持っているのだ。

 そもそも、神示とは何か。
 神示とは、簡単に言えば、神が人に伝えた物を書き記した物だ。

 道明もその答えには驚かされる。

「流石だね。その通りだよ。今は絶対少女議事録なんてふざけた名前になっているがね。元はある祭り、いや、儀式の仕方が書かれていた、葵君の言う通りにまさしく神示だよ」
 そして、道明もそれを認める。

「神示ってなんですか?」
 月子が葵に聞く。
 そして、少し不安そうに葵の腕を掴む。
 月子としても、この絶対少女議事録から何か感じるものがあるようだ。
「うーん、神様が人間に伝えた物を書き記した書物かな?」
 葵は月子の手を取り手で握り返して、神示のことを教える。

「話が早くて助かる。本来この神示には、とある神に捧げる儀式が記されていたものだったんだよ」
 そう言って道明は手に持っていた絶対少女議事録を大事そうに懐にしまった。
「それが何で議事録なんかに?」
 葵も不思議そうにそう聞くのだが……
 
「で、デュエルは開催されるという事で良いんですよね?」
 我慢できなくなった茜が柱から顔を出して聞いてくる。
「茜……」
 と、巧観が少し疲れたようにその名を呼ぶ。

 だが、戌亥道明は余裕ある態度で答える。
「ああ、明日で良いんだろう?」
 その視線は天辰葵に向けられたものだ。
 茜に答えるのではなく、葵に確認するかのようにだ。
「いいよ」
 と、葵も安請け合いするように答える。

「茜くんも色々やることあるだろう? 行きたまえ」
 そして、道明はこれ以上話を割り込んで欲しくないとばかりにそう言った。
「はい! あっ、そうだ。会長のデュエルアソーシエイトは?」
 茜は元気よく答え、そして、思い出したかのように聞く。
「今回は巧観だよ」
 それに対して、道明は自分の妹の名を呼ぶ。

「あっ、はい! わかりました! では、準備に取り掛かります! 解説役は誰に頼もうかな……」
 茜は若干迷いながらも学食から急いで出ていく。
 茜的にはここからが本来の仕事なのだ。
 いまかいまかと、食堂でデュエルが開催されるその瞬間を待っているのは仕事ではない。
 ただの茜の趣味だ。

「ボクで良いんですか、兄様」
 茜が完全に学食から出た後、巧観は兄である道明に聞く。
 通例では、道明が巧観をデュエルアソーシエイトに選ぶときは景清相手の時だけだったはずだ。
 だから、巧観は疑問に思うのだ。
 だが、なぜ通例では、と、そう思ったのかは、巧観は気づかない。気づけやしない。

「ああ、巧観は喜寅さんに取っておきたかったが、まあ、仕方がないというか、その喜寅さんに勝った相手だぞ」
 葵戦で道明の切り札でもある巧観を使うという事は、景清にそれを見られてしまうという事だ。
 それは避けたかったが、今回は仕方がないことだ。
 最悪、望に頭を下げて景清戦で力を貸してもらうしかない。
 それも、目の前の天辰葵に戌亥道明が勝てたらの話だが。

「ふーん、まあ、色々私としても聞きたいことあるけど…… 巧観はここぞというときに使うんだっけ?」
 道明の心の葛藤を見抜くように葵はその言葉をかける。
「そうだよ。と言っても今までは、ほぼ喜寅さん専用であったんだけどね。キミにも使わないと勝てる見込みがまるでなくてね」
 そう言って道明は苦しそうな表情を見せる。
 それでも勝てるかどうか怪しいと。
 いや、勝てる見込みはないとばかりにだ。




━【次回議事録予告-Proceedings.74-】━━━━━━━


 猪はまだ語る。
 語らねばならない、いや、伝えておきたいことは山ほどある。


━次回、挑む竜と神に弓引く大猪.04━━━━━━━━
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