AIと十字館の殺人

八木山

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黒い壁の部屋の床にずらりと並べられた本。
それを満足げに見下ろして、アカイタは小さく鼻を鳴らした。

結果から言うと、部屋の本は少しだけ違ったのである。

結論から言うとタナイタの部屋の本棚は、『3冊不足した』31冊しかなかった。
まるで十全たるがあるかのような言い方だが、実際そうだったのだ。
他3つの部屋に34冊の同じ本が、隙間なくぴったりと本棚に収まっていたのだ。


111「くりかえすこむら返り」
516「ひとつ屋根の下」
996「らららの唄」

欠けていた上記3つは他3人の部屋の本棚には揃っていたが、それは大きな問題にはならなかった。
もっと重要な事実が明るみに出たのだ。

気付いたのは、やはりアカイタだった。

「アサクラ、この本は何だ」
「ん?」

そう言って見せたのは、鮮やかな赤と青をしたカエルのイラストが表紙に書かれた本。
「東洋毒性動植物」と題されたその本は、どうやら中国語で書かれているらしい。

「そんな本、読んでないつーか、読めないし。その本が何だっていうの?」
「この本、お前とナカガミの部屋にしかなかった。俺とタナミチの部屋には代わりにこれがあった」

アカイタはそう言ってもう一冊をもう片方の手でつかむと、アサクラに乱暴に投げ渡した。
912「東方卍アベンジャーズ」だ。

「間取りは同じ、家具も同じ。それでもよく見れば部屋に差はあった、ってわけだ」
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