十字館の犠牲

八木山

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夜時間

ほらやっぱり!

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「あの指の意味、わかったかもだわ」

向日葵の言葉に、二人は姿勢を直す。

「マジか。それで、やっぱり黒須だったんだろ?」
「・・・うん」

サングラス越しにもわかる、動揺。黒須は、絶句していた。

「わかる、マジ?ってなるのはわかるんだけど。まずは、うちの考えを聞いてほしい」
「・・・わかった」ようやっと黒須の口から出たのは、小さな小さな音だけ。

「まずあの指が何を意味してたか言うわ。あれは、やっぱり本棚の本を指してたの」


左手が2、右手が4の形に曲げられた指。
あの部屋の本棚はテーブルに本が出されていて、3つの段にそれぞれ5冊しか入っていなかった。
上下方向には3つしかない以上、4が表すのはその段の何冊目なのか、2が示すのはどの段か。
2段目を見ると、左から右にかけて背表紙の3桁の数字が小さくなっていくから、左から数える。
するとそこにあるのは・・・

「『アート教育の効果的なカリキュラム設計の10の秘訣』、これは、つなっしーを指してる本っしょ?」
「それでも、自分じゃない」
「にゃんたそは」

向日葵は、言葉を続けた。黒須の言うことに耳を貸さないと言わんばかりに。

「自分が殺された時のために、本棚にダイイングメッセージを事前に仕掛けてた」
「落ち着け向日葵、これは仰木の罠だ」
「違う。あんたがにゃんたその罠にはまったんだよ!」

黒須は、「まずい、まずいぞ」と小さく譫言のように呟く。
仰木は黒須の肩に手を置き、優しく言った。

「生き残るためだったんだろ?なら何をしても仕方ないって思うけどな、俺は」
「違う」

黒須はその手を払いのけて、立ち上がった。

「何をしても仕方ないと割り切ったから、お前は偽装工作をしたんだ」
「何の根拠もないだろ!」

黒須は何も言わずに、向日葵が持っていたノートのメモをひったくった。
そして目にするや否や、向日葵に尋ねた。

「これ、本当に本棚にはこの本しかなかったんだな?」
「そうだけど」

黒須は深く深呼吸した。

「せめて最後に自分の自己弁護を聞いてほしい。いいか?」
「よくない、死刑!」と叫ぶ仰木を手で押さえながら、向日葵は頷いた。
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