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ネタバラシ
その後の二人
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私はある人物を待って、海浜公園のベンチに座っていた。
警察の聴取やなんやかんやが落ち着いたのは、あの事件から2か月も経った頃だった。
いくつもの謎を残したまま、私たちは流されるままに事件から無理やり切り離されて今を生きている。
そんなことをしばらく考えていると、時間通りに彼女は現れた。
「ご無沙汰してます」
「あ、どうも」
ダークグレーのスーツ姿だったが、かわいらしいリスのような顔は忘れようもない。
彩芽は隣に座ると、手に持っていたスターバックスの甘ったるいクリーム入りの飲み物を一口すする。
そして前を向いたまま、口を開いた。
「色々と、ありがとうございました」
「あ、いや、こちらこそ。悠人君の無理を聞いてもらってしまって」
「いえ。八重の過去を見て見ぬふりをし続けた黛家も、ある意味では同罪だと当主は認めていますから」
あの後藍丈の部屋からは九と悠人くんんい相続権があることが記された家系図などが見つかり、正式に悠人くんが相続人となる。
でもそれは、決して喜ばしいことではなかった。
その悠人くんの意向もあり、双子の神主によって引き起こされた強姦事件の被害者へ、宿泊名簿の情報から特定できる限り賠償をすることになった。
そこに協力を申し出たのが、私を殺しかけた鳩羽の実家である、資産家の黛だった。
鳩羽の実母であり、かつては巫女として傍観を決め込んでいた八重を妻に娶っていた黛家の当主は、賠償への資金援助を惜しまないと宣言。
代わりに義理の娘である九を許してほしい、という交換条件付きではあったが、悠人くんの肩の荷が少しでも下りるならと、私はその条件を飲むことにした。
彩芽は黛の雇った調査員のようなもので、鳩羽が神社を相続しないように妨害する目的で潜り込んでいたと説明されたときには、頭が爆発しそうになったものだ。
あのふわふわした言動は取り繕ったものであり、役を落とすと実に生真面目な口調になるので、悠人くんと二人で吹き出してしまった。
そんな彼女がこっそりと抜き取った黄金酒に隠されていたダイヤモンドも、今では売り払われて賠償金に当てられている。
「それで、私を呼び出したのは何故です」
「・・・ずっと、菫について考えてたんです。どうしてあんなことをしたのか、その理由を」
彩芽は黙って頷く。
「警察の捜査について聞いてると、なんとなく、こうなんじゃないかなって思うものがあって。それを、誰かに聞いてほしかったんです」
「山吹さんに話すのは気が引ける、けど黙っていると心に靄が広がる。そんなところですか」
「そう、です」
彩芽はズズ、と飲み物を啜ってからまじめな顔を私に向けた。
「いいですよ、私でよければ。他言はしないと誓います」
警察の聴取やなんやかんやが落ち着いたのは、あの事件から2か月も経った頃だった。
いくつもの謎を残したまま、私たちは流されるままに事件から無理やり切り離されて今を生きている。
そんなことをしばらく考えていると、時間通りに彼女は現れた。
「ご無沙汰してます」
「あ、どうも」
ダークグレーのスーツ姿だったが、かわいらしいリスのような顔は忘れようもない。
彩芽は隣に座ると、手に持っていたスターバックスの甘ったるいクリーム入りの飲み物を一口すする。
そして前を向いたまま、口を開いた。
「色々と、ありがとうございました」
「あ、いや、こちらこそ。悠人君の無理を聞いてもらってしまって」
「いえ。八重の過去を見て見ぬふりをし続けた黛家も、ある意味では同罪だと当主は認めていますから」
あの後藍丈の部屋からは九と悠人くんんい相続権があることが記された家系図などが見つかり、正式に悠人くんが相続人となる。
でもそれは、決して喜ばしいことではなかった。
その悠人くんの意向もあり、双子の神主によって引き起こされた強姦事件の被害者へ、宿泊名簿の情報から特定できる限り賠償をすることになった。
そこに協力を申し出たのが、私を殺しかけた鳩羽の実家である、資産家の黛だった。
鳩羽の実母であり、かつては巫女として傍観を決め込んでいた八重を妻に娶っていた黛家の当主は、賠償への資金援助を惜しまないと宣言。
代わりに義理の娘である九を許してほしい、という交換条件付きではあったが、悠人くんの肩の荷が少しでも下りるならと、私はその条件を飲むことにした。
彩芽は黛の雇った調査員のようなもので、鳩羽が神社を相続しないように妨害する目的で潜り込んでいたと説明されたときには、頭が爆発しそうになったものだ。
あのふわふわした言動は取り繕ったものであり、役を落とすと実に生真面目な口調になるので、悠人くんと二人で吹き出してしまった。
そんな彼女がこっそりと抜き取った黄金酒に隠されていたダイヤモンドも、今では売り払われて賠償金に当てられている。
「それで、私を呼び出したのは何故です」
「・・・ずっと、菫について考えてたんです。どうしてあんなことをしたのか、その理由を」
彩芽は黙って頷く。
「警察の捜査について聞いてると、なんとなく、こうなんじゃないかなって思うものがあって。それを、誰かに聞いてほしかったんです」
「山吹さんに話すのは気が引ける、けど黙っていると心に靄が広がる。そんなところですか」
「そう、です」
彩芽はズズ、と飲み物を啜ってからまじめな顔を私に向けた。
「いいですよ、私でよければ。他言はしないと誓います」
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