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第2章 初めてのダンジョンクエスト
【1】悪役転生者(いい子)と謎の乙女
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天国の母様、お元気でしょうか?
僕ことレインは元気です。何なら元気すぎて父様が守る家を飛び出してしまいました。
いわば家出をしたのです。母様ならおそらく「なんて悪い子なの!」と怒ってしまうでしょう。
でも安心してください。僕は世話役のアリサと一緒におります。彼女は身分を捨てたはずの僕のためにいろいろやってくれてます。
ただ時折、身の危険を感じてしまいます。命とかそういう危機感は持たないのですが、なんとも言い難いものを感じます。
油断するとお風呂に入ろうとしますし、僕のベッドに入り込んできたりしますよ。
まあ、どうにかこうにかしてます。冒険者として過ごしててこの前、ランクアップしましたよ。
これはすごいことです。このままランクアップしてギルドを裏から牛耳っちゃおうと思います。
今日も今日でいいクエストを探してました。ですが、とても困ったことが起きてしまいました。
それは、アリサがいつもと違って色っぽくなってしまったのです。
「レイン様、ああ、私、もう、ガマンできません! 今ここで、あなたを食べちゃいます!!!」
「正気に戻ってアリサ! みんなが見てるから!」
僕は逃げられないようにアリサに跨がられ、身体を抑え込まれてます。なんでしょうか、この貞操の危機感は。
いつも感じてますが、今日はホントにヤバいと思ってます。
つまりですね、僕はみんなが見てる中でアリサに襲われてます。
天国にいる母様、助けてください!!!
★★十五分前★★
青い空、心地いい風、煌めく太陽が笑顔を浮かべて僕を見守ってくれている。
うん、今日もいい天気だ。僕はそう感じながらギルドにあるクエストボードを見つめていた。
この前、大量発生したスライム討伐というクエストで乱入してきた魔人を倒したこともあって僕のランクは三つ星だ。クエストの難易度が一気に上がっちゃったけど、その分稼ぎがよくなったからいろいろ余裕が出てきたよ。
ただ最近、ちょっとした悩みがある。それは、受諾するには四人以上いないといけないというクエストが多いことだ。
ちらほらと三人で受けられるクエストはあるんだけど、難易度が上がったこともあって最低四人からってものが多い。
僕のパーティーは僕含めて三人しかいないから、最近パーティーに加入してくれる人はいないかなって思って探しているんだ。
でもなかなかいい人がいない。というかアリサのお眼鏡に叶う人がいないんだ。
だから大変困ってる。ヴァンさんはそんな僕を見て楽しそうに笑ってるよ。死活問題だから協力してほしいよ、もぉー。
そんなこんなで今日も人探し、あとクエスト探しを僕はしているんだ。
にしても、困ったなぁー。アリサが怒らない人ってどんな人なんだろう?
この前は駆け出しの女の子を加入させられないか相談したら「若い娘がいいのね、プンプン!」って怒られちゃったし。
「あのっ」
僕がつい先日のことを思い出していると、誰かが声をかけてくる。振り返ると白いローブで身を包み、フードで顔を隠した小柄な女の子がいた。
知らない人だ、って思いながら僕は返事をすると、彼女はあるものを差し出す。それは綺麗な輝きを放つ指輪だ。
「これ、その、落とし物です!」
「え? いや、僕のものじゃないですよ」
「えっと、その、ヴァンさんのものだと、思います……」
「ヴァンさんの?」
僕は手に取って見てみる。
なんだか綺麗な指輪だ。うーん、でもこれヴァンさんのものかな? こういう高価なものには興味ない気がするんだけど。
「その、落とすところ、見て……」
「そうなの? うーん、わかりました。渡しておきますね」
「……ありがとうございます!!!」
僕が指輪を受け取ると、彼女は逃げるようにその場から去っていった。
なんだったんだろう? まあ、ヴァンさんの落とし物らしいから渡しておこうかな。
「よー、レイン。いいクエストを見つけたか?」
あ、ちょうどいいところにヴァンさんが来た。
「あ、ヴァンさん。ちょうどいいところに来てくれました」
「あん? 何がちょうどいいんだよ?」
「実は落とし物を預かりまして。今渡しますね」
「落とし物? そんなのした覚えはないが」
僕は女の子から預かった指輪を見せる。するとヴァンさんは頭を捻った。
どうやら覚えがない代物らしい。
「俺のじゃないな。というかこんな趣味はない」
「あ、やっぱりそうなんですか。じゃあ人違いかな?」
「ちなみにこれ渡してきた奴のことは覚えてるか?」
「はい。白いローブを着た女の子です。顔はフードを被ってて見えませんでした」
僕がそう告げると、ヴァンさんが非常に険しい表情を浮かべる。
なんというか、とても頭痛そうにしていて明らかに困っている様子だった。
どうしたんだろう、と思っているとヴァンさんはこう言った。
「悪いがそいつに会ったら返しててくれ」
どこか逃げるかのようにヴァンさんは去っていく。
どうしたんだろう、本当に。
「レイン様ぁ~」
僕がヴァンさんの背中を見送ると、アリサが入れ替わるようにやってきた。
いつものように僕は「おはよう」って挨拶をするとなぜかアリサは鼻から血を噴き出して崩れ落ちる。
あれ? 僕何かしたかな?
「大丈夫、アリサ?」
「はい、はい、アリサは幸せです! 朝から素敵な笑顔をありがとうございます!」
アリサは泣いていた。嬉しそうに笑い、血がずっと流れ出てる鼻を抑えながら笑ってもいた。
よくわからないけど、悪いことしたかな?
「あ、レイン様。その指輪!」
「これ? えっと、ヴァンさんの落とし物なんだけど違うって言われちゃって。後で返そうとと思っているんだけど――」
「最近、流行になってるラヴィンの指輪ですよ! これ、なかなか手に入らないものです。しかもこのデザイン、プレミアがついてるものじゃないですか!」
「え? そうなの?」
「ハートをあしらったデザインですし、普通に購入すると十プラント金貨かかります!」
「えー!」
十プラント金貨って、高級装備一式をそろえられるよ。
それをこの指輪一つで。すごいなぁー。
「あの、レイン様。もしよろしければ、私の薬指にはめてくれませんか?」
「どうして?」
「ああん、深い意味はありません! でも、でも、お願いです。レイン様、はめてください!」
うーん、いいのかな? でもアリサがどうしてもって言ってるし。
まあ、後でちゃんと返せばいいだろうし、このぐらいいいかな。
僕はアリサの頼みを聞き、薬指に指輪をはめる。アリサはなぜかおおいに喜び、目をキラキラさせていた。
「ああ、アリサ幸せですぅ~」
アリサは自分の身体を抱いてクネクネとしていた。
うん、よくわからないけど喜んでくれている。あまり深く聞かないほうがいいよね、これ。
僕がいつものように触れないでおくと、唐突にアリサがはめた指輪が輝きを放つ。
なんだろう、って思って視線を薬指に移そうとした瞬間、アリサが僕を押し倒した。
「っで!」
「レイン様ぁ~、ハァハァッ」
いつものアリサの暴走が始まった。そう思って身体に乗ってきたアリサの顔を見る。
するとその目はいつもと違ってとろんとしていた。頬はほのかに赤く染まっており、アリサの手が僕のシャツのボタンを一つ、また一つ外していく。
「あ、アリサ?」
「申し訳ございません。アリサは、アリサはガマンできません!」
「ガマンできないって、え? 待って、ちょっと待って! なんで服を脱がそうとするの!?」
「私は、レイン様と一つになりたいのです! ああ、ついに言ってしまいました。責任を取ってもらいますね、レイン様ぁ~」
「なんの責任!? いや、待って! たくさんの人が見てるよ!!!」
「私は、私はもうガマンできません! 受け止めてください、アリサの愛を!!!」
「正気に戻って、アリサー!!!!!」
こうして僕はアリサのとんでもない暴走を止めるために四苦八苦する。
みんなの協力を得て、どうにか迫ってくるアリサから逃げ出すことに成功したのだった。
★★★★★
今回の悪いこと︰アリサの想いに答えなかった。
僕ことレインは元気です。何なら元気すぎて父様が守る家を飛び出してしまいました。
いわば家出をしたのです。母様ならおそらく「なんて悪い子なの!」と怒ってしまうでしょう。
でも安心してください。僕は世話役のアリサと一緒におります。彼女は身分を捨てたはずの僕のためにいろいろやってくれてます。
ただ時折、身の危険を感じてしまいます。命とかそういう危機感は持たないのですが、なんとも言い難いものを感じます。
油断するとお風呂に入ろうとしますし、僕のベッドに入り込んできたりしますよ。
まあ、どうにかこうにかしてます。冒険者として過ごしててこの前、ランクアップしましたよ。
これはすごいことです。このままランクアップしてギルドを裏から牛耳っちゃおうと思います。
今日も今日でいいクエストを探してました。ですが、とても困ったことが起きてしまいました。
それは、アリサがいつもと違って色っぽくなってしまったのです。
「レイン様、ああ、私、もう、ガマンできません! 今ここで、あなたを食べちゃいます!!!」
「正気に戻ってアリサ! みんなが見てるから!」
僕は逃げられないようにアリサに跨がられ、身体を抑え込まれてます。なんでしょうか、この貞操の危機感は。
いつも感じてますが、今日はホントにヤバいと思ってます。
つまりですね、僕はみんなが見てる中でアリサに襲われてます。
天国にいる母様、助けてください!!!
★★十五分前★★
青い空、心地いい風、煌めく太陽が笑顔を浮かべて僕を見守ってくれている。
うん、今日もいい天気だ。僕はそう感じながらギルドにあるクエストボードを見つめていた。
この前、大量発生したスライム討伐というクエストで乱入してきた魔人を倒したこともあって僕のランクは三つ星だ。クエストの難易度が一気に上がっちゃったけど、その分稼ぎがよくなったからいろいろ余裕が出てきたよ。
ただ最近、ちょっとした悩みがある。それは、受諾するには四人以上いないといけないというクエストが多いことだ。
ちらほらと三人で受けられるクエストはあるんだけど、難易度が上がったこともあって最低四人からってものが多い。
僕のパーティーは僕含めて三人しかいないから、最近パーティーに加入してくれる人はいないかなって思って探しているんだ。
でもなかなかいい人がいない。というかアリサのお眼鏡に叶う人がいないんだ。
だから大変困ってる。ヴァンさんはそんな僕を見て楽しそうに笑ってるよ。死活問題だから協力してほしいよ、もぉー。
そんなこんなで今日も人探し、あとクエスト探しを僕はしているんだ。
にしても、困ったなぁー。アリサが怒らない人ってどんな人なんだろう?
この前は駆け出しの女の子を加入させられないか相談したら「若い娘がいいのね、プンプン!」って怒られちゃったし。
「あのっ」
僕がつい先日のことを思い出していると、誰かが声をかけてくる。振り返ると白いローブで身を包み、フードで顔を隠した小柄な女の子がいた。
知らない人だ、って思いながら僕は返事をすると、彼女はあるものを差し出す。それは綺麗な輝きを放つ指輪だ。
「これ、その、落とし物です!」
「え? いや、僕のものじゃないですよ」
「えっと、その、ヴァンさんのものだと、思います……」
「ヴァンさんの?」
僕は手に取って見てみる。
なんだか綺麗な指輪だ。うーん、でもこれヴァンさんのものかな? こういう高価なものには興味ない気がするんだけど。
「その、落とすところ、見て……」
「そうなの? うーん、わかりました。渡しておきますね」
「……ありがとうございます!!!」
僕が指輪を受け取ると、彼女は逃げるようにその場から去っていった。
なんだったんだろう? まあ、ヴァンさんの落とし物らしいから渡しておこうかな。
「よー、レイン。いいクエストを見つけたか?」
あ、ちょうどいいところにヴァンさんが来た。
「あ、ヴァンさん。ちょうどいいところに来てくれました」
「あん? 何がちょうどいいんだよ?」
「実は落とし物を預かりまして。今渡しますね」
「落とし物? そんなのした覚えはないが」
僕は女の子から預かった指輪を見せる。するとヴァンさんは頭を捻った。
どうやら覚えがない代物らしい。
「俺のじゃないな。というかこんな趣味はない」
「あ、やっぱりそうなんですか。じゃあ人違いかな?」
「ちなみにこれ渡してきた奴のことは覚えてるか?」
「はい。白いローブを着た女の子です。顔はフードを被ってて見えませんでした」
僕がそう告げると、ヴァンさんが非常に険しい表情を浮かべる。
なんというか、とても頭痛そうにしていて明らかに困っている様子だった。
どうしたんだろう、と思っているとヴァンさんはこう言った。
「悪いがそいつに会ったら返しててくれ」
どこか逃げるかのようにヴァンさんは去っていく。
どうしたんだろう、本当に。
「レイン様ぁ~」
僕がヴァンさんの背中を見送ると、アリサが入れ替わるようにやってきた。
いつものように僕は「おはよう」って挨拶をするとなぜかアリサは鼻から血を噴き出して崩れ落ちる。
あれ? 僕何かしたかな?
「大丈夫、アリサ?」
「はい、はい、アリサは幸せです! 朝から素敵な笑顔をありがとうございます!」
アリサは泣いていた。嬉しそうに笑い、血がずっと流れ出てる鼻を抑えながら笑ってもいた。
よくわからないけど、悪いことしたかな?
「あ、レイン様。その指輪!」
「これ? えっと、ヴァンさんの落とし物なんだけど違うって言われちゃって。後で返そうとと思っているんだけど――」
「最近、流行になってるラヴィンの指輪ですよ! これ、なかなか手に入らないものです。しかもこのデザイン、プレミアがついてるものじゃないですか!」
「え? そうなの?」
「ハートをあしらったデザインですし、普通に購入すると十プラント金貨かかります!」
「えー!」
十プラント金貨って、高級装備一式をそろえられるよ。
それをこの指輪一つで。すごいなぁー。
「あの、レイン様。もしよろしければ、私の薬指にはめてくれませんか?」
「どうして?」
「ああん、深い意味はありません! でも、でも、お願いです。レイン様、はめてください!」
うーん、いいのかな? でもアリサがどうしてもって言ってるし。
まあ、後でちゃんと返せばいいだろうし、このぐらいいいかな。
僕はアリサの頼みを聞き、薬指に指輪をはめる。アリサはなぜかおおいに喜び、目をキラキラさせていた。
「ああ、アリサ幸せですぅ~」
アリサは自分の身体を抱いてクネクネとしていた。
うん、よくわからないけど喜んでくれている。あまり深く聞かないほうがいいよね、これ。
僕がいつものように触れないでおくと、唐突にアリサがはめた指輪が輝きを放つ。
なんだろう、って思って視線を薬指に移そうとした瞬間、アリサが僕を押し倒した。
「っで!」
「レイン様ぁ~、ハァハァッ」
いつものアリサの暴走が始まった。そう思って身体に乗ってきたアリサの顔を見る。
するとその目はいつもと違ってとろんとしていた。頬はほのかに赤く染まっており、アリサの手が僕のシャツのボタンを一つ、また一つ外していく。
「あ、アリサ?」
「申し訳ございません。アリサは、アリサはガマンできません!」
「ガマンできないって、え? 待って、ちょっと待って! なんで服を脱がそうとするの!?」
「私は、レイン様と一つになりたいのです! ああ、ついに言ってしまいました。責任を取ってもらいますね、レイン様ぁ~」
「なんの責任!? いや、待って! たくさんの人が見てるよ!!!」
「私は、私はもうガマンできません! 受け止めてください、アリサの愛を!!!」
「正気に戻って、アリサー!!!!!」
こうして僕はアリサのとんでもない暴走を止めるために四苦八苦する。
みんなの協力を得て、どうにか迫ってくるアリサから逃げ出すことに成功したのだった。
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