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しおりを挟む静かに佇んでいたネオハルト公爵…お父様が口を開いたのは、オルキスがエドワード様にくっつき、私がそれに密かに怒りを覚えていたことをお分かりになったからでしょう。
エドワード様のハッキリと意見を言えないのは長所であり短所でもありますわね。
「ローレンス、落ち着け。オルキスも突然のことで訳がわからなくなっているだけだ」
分からない。確かにローレンスおじ様は言葉が足りないかもしれない。それでも、ここまであからさまなおじ様の態度に気付かなかったなんてーーあり得ないはず、だと思う。
「お前たちは二人とも言葉が足りない。とりあえず、エドワード」
「は、はい、ネオハルト公爵!!」
「部屋を用意してくれるか。長くなりそうだからな」
長くなりそうという言葉にエドワードが少し微妙な顔になる。疲れているのだろうけれど、一番疲れたのは私だ。
「それで、オルキスは?言いたいこともないのに帰りたくないと駄々を捏ねるの?」
いつまでも黙ってばかりのオルキスだが、ローレンスおじ様が一方的に話しかけている。
「私のオルキス、お前だけを愛しているよ。さぁ帰ろう私たちの屋敷へ」
「おじ様は少しお黙りください」
「私はどれだけ私がオルキスを愛しているかということをだな、」
「お黙りください」
もう一度強くいうと、おじ様が押し黙る。それを確認してから私はオルキスに再び問いかけた。
「オルキスは何が不満なの?」
正直悪いけれど、オルキスのことなんてどうでもいい。ローレンスおじ様も同様だけれど、このまま事を放置してエドワード様に迷惑をかけることを黙って見ているわけにはいかない。
「わ、私は、不満などでは…ただ受け入れられない、だけで」
「受け入れられない!?どうしてだ、オルキス!」
「おじ様お黙りを」
「だがリオナ!私がこんなにも愛しているというのに…!」
今思えば、おじ様はいつも私たちの前ではこんな感じだ。オルキスを溺愛し、目にいれても痛くないとはまさにこのことをいうのだろう。
けれどオルキスの前ではどうだろう。ツンデレのデレを私たちに見せ、オルキスに見せていたのはツンだけだ。
「…貴方、ずっとおじ様に聞きたいことがあったのではないの?」
いつも言っていた、おば様のこと。オルキスが難産だったために体力を消耗して、そのまま若くして亡くなった、ローレンスおじ様の最愛の人。
「……けれど」
「今を逃しては言えないかもしれないわよ」
早く終わらせてほしい。その願いを込めて言い放つと、オルキスはやや躊躇いがちに口を開いた。
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