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15,もう一度
しおりを挟む「勝手ながら、申し訳ありません。私と婚約を破棄してくださいませ」
「ーーー言うと思ったよ」
笑ったルイスに、ヒューリアも笑った。
「街へ出たそうだな。おかげで民は皆、君と兄上の味方だ。どうだ?さぞかしいい気分だろう」
あからさまな嫌味に失笑してしまう。
「何か問題でもおありですか?」
「なに…?」
私を先に裏切ったのは貴方。
「私はルイス様のように生きただけですわ」
やり直しの人生を、婚約者の目の前で。こうすることが私の望みだったはずだ。ルイスを傷付けたくて仕方なかった。
「ご安心を。貴方様にはきっと、私よりもお似合いの方が現れますから」
「なんだと?」
「ある意味、貴方様の思い通りになりましたわね」
こんなに虚しいのは、どうして?
「ヒューリア…?」
「ーーさようなら」
愛していた。だから憎かった。ーー違う。今も愛しているのだ。だからこんなにも憎かったのだ、ルイスのことが。
心の底から慕っていた。きっとまた笑って話してくれる日が来ると信じていた。けれど目の前で他の女を連れていった彼に残るのは、膨大な恨みと少しの恋情。
「ーーーえ?」
カインとの婚約式の当日の早朝だった。
「…ルイス様が、亡くなられた…?」
遺書も何もない。建設がこの日と共に完成とするはずだったアルテミス塔から、ルイスが飛び降りたと言う。
「うそ………自殺…?」
どうして?
なんて。理由は一つしか思い浮かばなくて。
「私の、せい…?」
昨日の夜、カインは言った。ルイスは何も変わらずいつも通りに過ごしていると。それなのに、何故。
「…出掛けるわ」
「ヒューリア様!?」
「馬車を用意して…!早くっ…!」
「は、はい…」
塔には警備兵が立ち並んでいる。当たり前だ、王族がここで死んだのだから。
「これは…ヒューリアお嬢様」
声をかけてきた警備隊長が畏まる。
「申し訳ありません、塔へは今は立ち入り禁止とー…ヒューリアお嬢様!?」
そんなの関係ない。早く、行かなければ。
また出来るのかなんて分からない。失敗したら今度こそ本当に死ぬかもしれない。
それでも、彼がいなければ意味がない。
もう一度、過去に戻れるならば。
ポツポツと降る雨と、警備隊長の叫び声と、最後に見えたカインの姿。目を見開いた彼が手を伸ばすけれど、私はそれを掴むことはない。
「ごめんなさい」
きっとまた戻ることが出来たら、私はカインに真っ先に謝らなければならない。
友だと言ってくれたこの人の前で、私は醜く死ぬのだから。
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