婚約者を見限った令嬢は、1年前からやり直す。

伊月 慧

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11,[カイン視点]大嫌いな弟

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 今、私の目の前にいる女は不思議なことを言う。

 その女は私の大嫌いな弟の婚約者であるヒューリアだ。なにが不思議か。それは、私の妃になどなりたくないと言うのだ。

「カイン様?」


 私の側にいた女は大抵、みなが隙あらば玉の輿を…もしくは私の塒を掻くことを狙っていたのに。

 私は生まれながらにして、そうなる運命だったのだ。





 この国の第一王子として生まれた私は、周りから歓迎されなかった。
 私の髪は茶色だ。それは母譲りだった。
 王室の象徴である黒髪。それは私が喉から手が出るほど欲していたもの。
 それを一つ下の弟は、持って生まれた。当たり前だ。弟の母は正室であり、黒髪なのだから。
 私の母は平民の出なので茶髪だ。
 父は特に気にもしていなかったが、私はどうしても弟のルイスが憎かった。


 ルイスは私の欲しいもの全てを手にしていた。後ろ楯も、優しい母も、期待も、人望も。私がどうしたところで「卑しい王子」と蔑まれる。
 私の母は、私が生まれてすぐに亡くなった。
 ルイスの母である王妃様は、私をこれ以上ないほど嫌っていた。
 茶髪のくせに、王位継承者だから。

 別に王になりたかったわけではない。けれど期待してくれている父上の期待を裏切るわけにはいかない。


 恋人のリーザは私の心のよすがだったけれど、実際には役に立たない。彼女は権力を持っているルイスの方へとなびいた。
 だから私は決めた。いつか、ルイスの一番大切なものを奪ってやる。
 もうこの際、王位継承者は私だとふんぞり返ってやる。そう決めた、すぐ後のこと。

 ヒューリアという女が現れたのは。

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