婚約者を見限った令嬢は、1年前からやり直す。

伊月 慧

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15,予感

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「ーーカイン王子」

 声をかけられ、視線を上げる。

「…王妃様」

 声をかけてきたのは弟の母親であり、私にとって義理の母にあたる人だ。

「どちらへ?」
「…父上に呼ばれましたので」
「なんですって?」

 王妃の眉が釣り上がる。

「奇遇ね。私も王様にご用があるの。ご一緒しましょうか」

 そう言いながら、王妃が目を細める。

「どうして貴方など呼んだのか気になるもの」

 フッと笑い、見下した目で笑いかけてくる。私はこの人が嫌いーー大嫌いだ。



***



「お父様?」

 城から邸に着くと、父が庭で何かを眺めている。

「あぁ、ヒューリア。帰ったのか」

 笑いかけてくるお父様に笑い返す。

「えぇ、今。どうなさったのですか?」
「…嫌な予感がするんだ」
「えっ?」
「近隣国から、どうも嫌な匂いが…な。まぁ、私の考えすぎだろう」

 お父様であるアルテミス侯爵は元々、軍人だった。そして次男だったのだが、お父様の兄が亡くなったことによって家督を継ぐことになったのだ。

 その父が嫌な予感がすると云うのだ。あながち間違いではないだろう。最近、国交が危うくなっていると聞いている。
 本来ならば向こうの国の姫をカインが迎えれば一件落着なのだろうけれど。

(カイン様、どうなったかしら…)

 あの国王の目を思い出す度、ヒューリアはドキリとするのだった。


     
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