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18,[ルイス視点]幸せ
しおりを挟む僕は今、混乱している。それは仕方ない。
何故こうなったのか。馬で駆けながら、過ぎ去っていく風景に目を閉じる。危ないと分かっているけれど、どうしても前を見られない。
本当に、どうしてこうなったのだろうか。
***
ターリック王国が宣戦布告をしてきた。長年問題視されていたものの放置になっていた領土問題を蒸し返し、国境に軍が攻め入ったと云う。
今のところ軍に入っている王族は国王…父上の従兄であるライダス様だけだ。頭の使える指揮官がいなければどうにもならない。
カインほどではないけれどそこそこ頭のいいルイスに指揮命令が出るのは時間の問題だった。
「ルイス様…?」
柄にもなく狼狽えたのは、我が国にマトモな戦闘用意が出来ていなかったからだ。そんな実際に、先に戦場に向かったライダス様が負傷したと聞いている。
早く行けという父上は父親でなく、国王として命令している。
母上の抵抗など、あってないようなものだ。女が政に口を出すものではない。政治の席でそう言われ、恥をかいて終わった。
結局、僕の行くところなどヒューリアの元しかない。
「…明日、国境へ向かう」
「本当に、行かれるのですか…?」
「仕方ないだろう?」
自分がどんな顔をしているのか分からない。きっとこれ以上ないほど醜いだろう。
「と言っても、僕には中隊が与えられている。…まぁ負傷したり死んだりしても、それなりの功績を残せるだろう」
「何を仰っておられるのですか?何故ーー生きて帰ってくると仰ってくださらないのですか…!?」
こんな僕のために必死になってくれる。本当に、この女は。たった数秒で僕を幸せにしてくれる。
「…君が本当に、好きだ」
もしも僕が死んでしまったら。
死ぬことは怖くない。昔からそう思っていた。どうせ人間など死ぬ生き物なのだから、仕方ない。そう思って生きてきた。
けれど今は死にたくないと、強く思う。もしも僕が死んでしまったら、きっとヒューリアは他の男の元へと嫁いで行ってしまう。それだけは許せない。
「…ルイス、様…?」
抱き締めると、戸惑ったような、恥ずかしそうな声が聞こえる。
本当に、愛おしい。
「…何もしない。けれど、今日は君を抱き締めて眠りたいんだ。僕の部屋に、来てくれないか?」
本当に何もしない。抱き締めて眠るだけできっと、僕は生きて帰ってこられるはずだ。
「…私で…いいの、なら…隣に、います…」
耳まで真っ赤になったヒューリアを見て、笑う。彼女もそれを見て、笑ってくれた。
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