婚約者を見限った令嬢は、1年前からやり直す。

伊月 慧

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27,男爵令嬢[リーザ視点]

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 この度、この国の第二王子であられるルイス様と侯爵家の令嬢であるヒューリア様が結婚なさった。

 結婚式当日、私の恋人であるカイン様はあんなにもヒューリア様のことを思っていたのに、今は晴れ晴れとした顔をしている。
 私にはこの人が分からない。つい先日私はこの方に泣かされたというのに、私はこの方から逃げることも出来ない。離れることが出来ないのだ。
 そうしてそばにいるしか出来ない自分が情けなくて本当に嫌だ。
 男爵令嬢として生まれたときから、カイン様とこんな風になるなんて思ったことはなかった。恋人になれた後も、王妃なんて大それた地位に就こうとなんて策略したこともない。ただ、彼のそばにいるだけで幸せだったのだ。
 高貴な身分と云えど所詮、男爵家。お父様は権力がお好きな方だけれど、私は権力には興味ない。ただ好きな人のそばにいたかっただけなの。

「なんだ?私の顔に何かついているか」

 こちらを見るカイン様から目をそらす。

「…いいえ」

 あんなことを言ったくせに、この人は付きまとう私を邪険にしない。というか、放ったらかし。
 これならば突き放された方がまだマシかもしれない。どうせ私とカイン様は誰も知らない恋人。この人を好きなまま、この人が身分の合った女を妃に迎えるのを目の前で見るくらいなら。


***


「リーザ、お前に素晴らしい話が舞い込んだぞ!!」

 家に帰ると、お父様が飛び迎えてきた。

「なんですの?お父様」

 普段金にしか興味がなく、自分とろくに話しもしない父がこんなに嬉しそうな顔をするなんて。きっとまたお金絡みね。

「平民だが、資産家の男がお前に一目惚れしたらしい。よくやったな!!」

 お父様がお金が好きなのは、先代の残したギャンブルの借金により、幼い頃から貴族の身でありながら苦労したからだろう。
 そういえば前々から、平民の男がお父様に会いに来ていた。中年のおっとりしてそうな男だ。

「平民…ですか」

 リーザは別に、平民が嫌だというわけではない。けれど父が平民との結婚を許すなんて思わなかった。平民でもお金があればいいのか。

「なんだ、嫌だと言うのか」

 ムッとしたようなお父様に慌てて笑う。

「いいえ。私はお父様の言いつけに従いますわ」

 言うことさえ聞いていれば優しい父。
 どうせカイン様は私が離れようが何も言わない。それが男爵令嬢としての私の人生で、私という女の運命なのだ。

 
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