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32,[カイン視点]証明
しおりを挟む結果的に証明出来たのは、上流階級の女は傲っていてこれ以上ないほど最悪ということだった。
***
ヒューリアに言われたことに納得がいかなくて、カインは公爵令嬢のユリアとかいう名前の女とデートした。政務の空き時間にいくつもりだったけれど、向こうの都合でカインが一日休もうとしていた日を丸々潰された。
しかも約束の日、わざわざ迎えに来させられた。それだけではない。散々待たされた挙げ句、出てきた女は特にこれといって特徴のない、普通の女。
リーザの方がよっぽど可愛らしい。
「あら、あの宝石とても可愛いわ!」
宝石!?これ、自分に買えと言っているのか!?
カインは思わず店の者に値段を尋ねると、目が飛び出てしまう。それはカインに与えられている一月の小遣いの半分だった。
しかもその日はカインが贔屓にしている画家の展覧会に行こうと思っていたのに、腹が減っただの足が疲れただの、挙げ句の果てには貴族お抱えの香水店に入り、その店で一番高い香水を買わされた。
王家の嫡男と云えど、無駄遣いをするべきではない。そもそもこの女にそんなものを買い与える価値はあるのか。そう問いたくなる。
その日使ったモノは、リーザと遊ぶ時の何千倍の金と、労力と、気力と、えげつない喪失感。
「ではカイン様!また明日、私の屋敷まで迎えに来てくださいませ!」
二度とごめんだ!!!!!
そう思って口に出そうとして、黙ってしまう。
街で馬車から降りてきた男女に目が行ったからだ。
(…リーザ…)
もちろんその隣でリーザをにこやかに見つめている男は、ブラウンだ。
(…そんな男が趣味だったのか?)
顔だけなら、自分の方が絶対に格好いいと断言できる。私の方が格好いい……しまった、ナルシストが入りつつあった。
「カイン様?」
こちらに気付かない彼女。いつもならどこにいても見つけてくれて、駆け寄った来てくれた彼女。けれど彼女が今見ているのはあの男で、二人の世界に入りきっている。
(…くだらない…)
自分にはもう関係ない。あんな女、あの男にくれてやる。
我儘も言わなくて、なんでもして、少し抜けていて、まぁそこそこ可愛らしい女。
こんな令嬢よりもよっぽど令嬢らしい、女。
「……私の負けのようだな、ヒューリア…」
どうやら、自分には彼女がいないとダメらしい。
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