さぁ、離縁して下さいませ。

伊月 慧

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結婚生活

夫婦

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 ゼイルドが仕事から帰宅するのは、深夜だった。
 仕事柄そうだというのもあるし、ゼイルドが望んでその時間に帰ってきているということもあった。

(…もう、寝ているよな?)

 静かに廊下を歩き、自分の書斎へと入る。

「お帰りなさいませ」
「!?」

 とっくに寝ているはずのシャルロットが、自分の書斎にいる。という、光景。

「な、な、な、」

 なんで、という肝心の声が出ない。
 するとシャルロットがふうっとため息をつき、姿勢を正した。

「いつもこんな遅くに帰宅しているのは、私の顔が見たくないということでしょうか?」
「…は…」
「…私たちには、話す時間がなかったのではと思いまして」
「な、なんだと…」
として、落ち着いて話すことはもちろん、ただの女と男として話すことは、今までに一度もなかったでしょう」

 驚いた。こんな関係でも、シャルロットは夫婦と認めてくれていたのだと。

「…今から少しだけ、私の話を聞いてくださいませんか?」

 そう言って、シャルロットは笑った。



 ーー私の母は、平民の出でした。父にはもう正妻がいたけれど、父はこれ以上ないほど母を愛していました。
 母が私を身籠ったとき、父は喜んでレイドル家に連れてきました。けれどその時すでに、正妻は長女を生んでいました。もちろん彼女…正妻は、私と母を受け入れようとは到底しませんでした。

 生まれてからずっと側にいたルーラお姉様も、私には優しくありませんでした。父の目を盗んで、母や私に嫌がらせをしていました。
 そんな私の唯一の味方が、ユーリお兄様でした。
 ユーリお兄様はいつも、私に優しくしてくださいました。そんなユーリお兄様が大好きで、幼い頃から私は彼を慕っていました。
 けれど、きっと叶うことのない思いだと諦めていました。



「…あの男の所へ行きたいか?」
「次はゼス様の番でしょう」
「なに?」

 ゼス、と呼ばれたので驚いた。俺を嫌いだから呼ばないと言ったのに。

「何故、ルーラお姉様ではなく、私を選んだのですか」

 じっと見据えるシャルロットに、嘘は通じないのだと思った。
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