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本編
1日目~咲良side~
しおりを挟む「余命、1年です」
主治医のその言葉に、泣き崩れる両親がいた。
私がそれを聞いてしまったにも関わらず、それを知らずに必死に隠そうとした両親がいた。
あと1年、365日。
まるで実感が湧かないけれど、私がしなければならないことは1つだけ。
最後の1日まで、彼と共にいること。
ワガママで、バカで、王様で、自分を中心に回っていないと気が済まない、愛されたい、そんな可哀想なひと。
「ねぇ、煌夜」
「んー、なに?」
「いつになったら浮気、やめてくれるの?」
「…だぁかぁらぁ。言ってんじゃん?お前が泣いて、やめてって言えば止めること、考えなくもないって」
「そう。…じゃあ、やめて?」
「………は?」
今まで私は、彼の前で泣いたことなんてない。
けれど私にはしなければならないことがある。
浮気ばっかしてたら、本当に大切な人はできないよ、煌夜。私はあなたが大好きだから。
だから、あなたは私が死んだ後、ちゃんと大切な人を見つけれるようにしなくちゃ。
それが今の彼女である、私の役目でしょう?
「な、なんだよ、なんかあったのか?」
焦る煌夜に、私は首を振る。
「なにもない。でも私、このままじゃ煌夜と付き合うことなんてできない」
「はぁ⁉ いきなりなんだよっ⁉」
「いきなりじゃ、ないよ。ずっと考えてたの」
「おい、咲良!」
「ほんの少しでも、煌夜が私のことを好きなら……もう、浮気はやめて。ね?お願い。私、もう嫌なの」
いつまでも傷付いた煌夜を見たくないの。
幼馴染で、初恋だった。
けれど彼は違って、中学の時、部活の先輩に恋していた。
見ているのも辛かったのに、応援した。
だって、煌夜が大切だったから。
本当に大切だったから。
先輩に傷付けられた時、煌夜、ボロボロになったよね。
私ね、煌夜を慰めることが出来る立場じゃなかったよね。
応援したくせに、最後、煌夜に告白した。
彼の弱みに付け込んだ。
最低だったよね。
でもね、あの頃よりはマシになったと思うの。
あの頃はただ、余命少ないと感じた私は、自分のことしか考えていなかったの。
けれどね、今は違う。
あなたのこれからを考えられるようになった。
ようやく自分の役割を自覚できた。
「んだよ、気持ち悪りぃな…」
彼はそう言って、私から顔を背けた。
「わーったよ、やめればいーんだろ。やめるやめる」
「…本当に?」
「やめるって言ってんだろ、うるせーな」
「…ありがとう、煌夜」
「っ……んだよ、いきなり……」
彼はそう言って、嬉しそうな私の顔を見つめた。
違和感が生まれたのはそこからだと、私は気付かなかった。
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