あと1年、彼の隣に

伊月 慧

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本編

6日目~煌夜side~

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 俺に初めて彼女が出来たのは、中学2年の時だった。
 学年がひとつ上の先輩は、一言で言うならば……美人。
 綺麗で、優しくて、いっしょにいたら楽しくて…本当に幸せだった。

「先輩が好きなんスけど」
「…うそ…」
「ウソじゃないです。…俺と付き合ってもらえませんか」
「っ……嬉しいっ!」

 片思いしてた時から咲良には相談に乗ってもらっていた。彼女のアドバイスは的確で、付き合うことになった時は咲良に本当に感謝していた。
 あの頃はただ、咲良を幼馴染としてしか見ていなかったので、咲良に好きな人が出来たら応援するとまで言った。
 …まぁ…後に、その言葉に後悔することになるけれど。

 咲良は俺と付き合う前、ある男と付き合っていた。それが俺の元親友である、瀬尾智樹だった。
 紹介したのは俺だ。
 そして、紹介して一瞬で智樹はこう言った。
「一目惚れしたので俺と付き合ってください」
 これには流石に、なにも言えなくなり呆れてしまった。
 普段なら「お前なに言ってんの?」と笑い飛ばすが、智樹の目があまりにも真剣だったからだ。
「へっ!?」
 まんざらでもなさそうな咲良の顔に、苛立ちを覚えた。それだけは憶えている。

***

「…あ」
 休み時間、トイレに行こうと教室を出ると、バッタリと智樹に会ってしまった。
「わっ………んだ、お前か…」
 話すのは久しぶり……何ヶ月ぶりだろうか。少なくとも、俺がこの男から咲良を奪ってからはまともに話していない。
「…チッ」
 軽く舌打ちをして通り過ぎようとした智樹を、思わず呼び止める。
「…おい」
「……あ?」
 やはり機嫌が悪い。まだ怒っているのか、咲良のことで。
 だが俺も怒ってるんだ。
「お前、咲良からシフォンケーキ奪ったんだって?」
 正確には違うと分かっているが、こんな言い方しか出来ない自分が嫌になる。
「…あぁ、美味かったけど?」
 ワザと挑発するような口調で言ってくるコイツ。こんな奴だと知っているが、久しぶりに聞いてしまうとやはり苛立ってしまう。
「…咲良に関わんな」
 とりあえず伝えたい要点だけをまとめると、智樹の眉間のシワがさらに深くなっていく。
「はぁ?…てか、俺に咲良ちゃん紹介したのってお前だろうが」
「…だから、あの時は…」
 まだ、咲良への恋心を自覚する前なので仕方ない。
「…てかさぁ、俺から咲良ちゃん奪っといてよくそんなこと言えるよな」
「……咲良は元から俺のモンだ」
「咲良ちゃんはモノじゃねーよ、この馬鹿が」
「馬鹿じゃねーし」
「馬鹿だろ。咲良ちゃんが人のモンにならないと好きだって気付けないとか」
「…お前だってモノ扱いしてるじゃねーかよ」
「……うるせぇ」
「いつまでも未練がましいことすんな」
「…うっせぇって言ってんだろ」
「………」
 心の奥がモヤモヤする。
(アイツ、まだ咲良のこと…?)
 咲良を好きなのは、俺だけでいいのに。
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