あと1年、彼の隣に

伊月 慧

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本編

11日目

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 目が覚めたとき、空に陽が昇っていた。カーテンの隙間から見えた光に目を瞑り、力強く自分の手を握っている母親に声をかける。
「…お母さん」
「!っ…咲良…!」
 少しだけ頭の中を整理する。
(あぁ、私また…)
 心配させて、迷惑をかけてしまった。
「…ごめんね。今、何時?」
「まだお昼前よ、待っててね、先生を呼んで来るから!」
 慌ただしく部屋を出て行く母親の後ろ姿を見ながら、ため息をつく。
(…ほんと、親不孝者…)
 お母さんを傷付かせて、泣かせて、挙句には勝手に倒れて、救急車を呼ぶなと頼んだ。
「…あ、学校」
 携帯にはきっと、煌夜からのメールや電話が入っているだろう。
(学校、行かないと…)
 またこうして、煌夜につく嘘がゆっくりと増えて行く。



 咲良が学校に来なかった。正確には、家にも帰っていなかった。
「あ、今ちゃん」
 咲良が休みだと電話を受けたという担任の今野に声をかける。
 今野は眉根を寄せ、チッと舌打ちをする。
と呼べ、俺を敬え」
「はいはい。あのさ、咲良なんで休んでんの?」
 そう言った瞬間、今野の表情が固まったのを…見逃さない。
「…風邪だとよ。お前、幼馴染なんだろ?なにも聞いてないのか」
「風邪なら家で休んでるんじゃねぇの。今日家に行ったとき、誰もいなかったみたいなんだけど」
 問いかけるように、今野の表情の変化を見る。何故だろうか、こんなに嫌な予感がするのは。
「…先生」
「……風邪だと俺は聞いた。詳しいことはお前が聞け」
「先生!」
「お前がその呼び方をすると気持ち悪いな。じゃ、俺は職員会議があるから」
 そそくさと逃げて行く今野を追いかけようとするが、やめた。職員会議なら邪魔してはいけないー…と考え、はたと思い出す。今日は火曜日。…職員会議があるのは月、水、金だ。放送で緊急の職員会議があるとも聞いていない。
「っ…やられた…!」
 その後急いで職員室に行ったものの、今野は捕まらず。
「クソっ…てか、咲良も電話くらい出ろよ…!」
 苛立ちは増すばかりだった。
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