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本編
11日目~咲良side~
しおりを挟む煌夜からの十一件目の電話に出た時、煌夜は電話口で怒鳴った。
『お前今、どこにいんだよッ!』
「こ、煌夜」
『家にもいない、学校にも来ない、電話にも出ない!今どこだよ!』
「あのね、今ちょっと病院に…」
『なんで!』
「大したことないよ、ただちょっと体調悪かっただけで…」
『…お前、嘘ついてないよな?』
疑うような口調の煌夜に、慌てて取り繕う。
「嘘なんかついてどうするの。煌夜ってば本当、心配性ね」
と、その時、湯島先生が入って来る。
「咲良ちゃん」
その声を聞いて、煌夜がまた声を荒げてきた。
『誰だよっ!?』
「先生だってば!帰ったら説明するから!切るよ?」
『おい、咲良ー…』
携帯の電源を切り、先生の方を見る。
「彼氏?」
「…まぁ、そんな感じです」
「病院内では電話、やめてね」
「すみません」
少しだけ、ほんの少しだけ…湯島が緊張しているのが分かる。嘘をつき始めてから、他人の態度に敏感になってしまった。
「どう?まだ胸、締め付けられる感じする?」
「いえ、もう大丈夫です。すみません、いきなり…」
「いいんだよ。…それにしても、どうして救急車を呼ばなかった?」
少し怒ったような口調だが、顔では笑顔を見せている。
「…すみません」
「怒ってないよ。けどね、どうして車で来たのかな。本当に危ない状態だったんだよ?」
「………」
「…言い方を変えようか。呼びたくなかった理由があった?」
「っ……」
「あったんだね。良かったら教えてくれないか?そしたら力になれる」
「……煌夜が………煌夜に、知られたくないから…」
「?……煌夜?」
「私の、彼氏…です。…幼馴染だから、家がすぐ近くで…」
「…彼氏君は、君の病気のことを知らないのかい?」
「もうずっと前に治ったって言ってます。余計な心配かけたくない」
「咲良ちゃん。…心配をかけたくないからって、手遅れになってたらどうするつもりだったんだ?」
「…ごめんなさい…」
「…反省してるなら良し。なんなら、彼氏君に僕から説明…」
「それは嫌ですっ…!」
「わっ…」
いきなり大声を出したからか、湯島先生が驚いた顔をする。
「本当は治らないんでしょ?あと一年も生きられないんでしょ?どうしてみんな隠すの?」
驚いた顔は戻ることなく、そのまま咲良を見つめていた。
「小さい頃にも聞いてた!私は二十歳まで生きられないって、お父さんやお母さんが泣いてたの憶えてるっ…!」
「咲良、ちゃん…」
「お母さん達には言えないけど、先生には言っておきたいの!私は死ぬのは怖くないの…!だから、普通に暮らしたい!普通に過ごして、最後まで、煌夜の側にいたいの…!」
普通に過ごしていたい。そのためには、自分が死ぬことを悟られてはいけないの。
「…死なせない」
「…え…?」
「君を絶対に、死なせたりしない。二十歳になっても、ずっと生きていられるように俺がするから」
「…そんなの、」
「僕は君に生きてほしい」
「先生、私は、」
「ずっと話し合っていたんだ、君の両親と。…心臓移植をする気はないかって」
「……心臓移植…?」
「君は、…生きたくないか?」
私はその質問に、答えることが出来なかった。
死ぬ覚悟が出来ていた。いつからとか考えたことはない。ただ、人はいつか死ぬもので、私はそれが少し早いだけ。そう理解していた。
死にたいわけじゃない。けれど、いつ死んでも後悔はないようにするために、今、煌夜の隣にいる。
死ぬ覚悟があるからこそ、命を軽んじることはできない。心臓移植ということは、誰かから臓器を提供してもらうということだ。もし相手が脳死だったとしても、死んでいるわけではない。臓器提供の意思があっても、私が望めば人を一人殺すのと同じだ。
「…そこまでして、私は生きたいのかな…」
生きている人を、私を助けるために殺すなんて。
簡単に答えなんて出せなかった。
生きたくないか?
死にたくない。
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