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本編
12日目
しおりを挟む煌夜が病院へ来た。
「ただの風邪だってば!あまりにも熱が高かったから、お母さんが…」
「…本当か?」
「本当よ!お母さんに聞いてもいいよ?本当だもん」
「……なら、信じる」
お母さんには口止めしている。煌夜と付き合っていることは知っているから、渋々承知してくれた。
咲良の見舞いの後、病院を出ようと足を踏み出したときだった。
隣を横切っていった女に目が釘付けになってしまう。瞬間に頭を横切った顔に、見るなと頭が反芻している。なのに、顔が勝手に後へと向き、足が彼女の方へ向かう。
ふと見えたその女の顔に、嫌気が差す。
「…先輩…」
何年経っても変わらない、元カノの姿だった。
(…なんでここに……どこか悪いのか?)
嫌気が差すのに、ふと心配してしまう自分が本当に嫌だ。
忘れると決めたはずで、忘れたはずだったのに。
(んだよ…)
ズキズキと胸が苦しくなる。あの頃の痛みがまるで、蘇ったように。
先輩が、当時俺の部活の先輩だった湯島先輩を好きなのは知ってた。付き合っていたのも知っていたし、まず俺が一目惚れした時点でそれは失恋へと変わるはずだったのだ。
けれど、湯島先輩には敵わない、諦めようとした矢先のことだ。小早川先輩が、湯島先輩と別れたのは。
二人は学校でも知らない奴はいないくらいの秀才で、美男美女の完璧なカップルだった。だからこそ二人が別れたときは、二人に片思いしていた奴らが我先にと突進していったのだ。もちろん、俺もその中の一人だった。
湯島先輩と仲を取り持つフリをして近付いた。それが一番早かった。だって、部活内で湯島と一番仲が良かったのは自分だったから。
卑怯でも良かった。必死だった。初めて、心から好きになった人だった。
けれどそんなのも、永くは続かなかった。
小早川先輩は俺が適当に言ったアドバイス通り、何度も湯島先輩と話をしていた。そして湯島先輩から一言。
「好きな子がいるんだ」
それを偶々聞いてしまったとき、小早川先輩は諦めたと思った。諦めて、一番近くにいる俺の方を向いてくれたと思った。実際、そう錯覚していたのだ。
告白して、OKをもらえて、本当に嬉しかった。のに、ある日突然。
「湯島くんのことが忘れられないの」
その一言で終わったのだ。
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