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本編
15日目~煌夜side~
しおりを挟む今日は土曜日だ。いつもなら真っ先に咲良の元へ行くのだが、その日起きたのは昼を過ぎた時だった。
昨日、湯島先輩に久しぶりに会った。
湯島先輩は中学の頃の部活の先輩で、まぁ普通に仲のいい関係だったと思う。
先輩は俺が小早川先輩と付き合った時も何も言わなかったし、それは今となってはどうでもいいことだ、けれど。
(なんであの人が病院にいたんだよ…)
湯島の兄が咲良の主治医だから、という湯島のことは分かる。けれど小早川は。
(湯島先輩は知ってるのか…?)
ふと、小早川が湯島をストーカーしているという可能性を考えてしまう。
いや、まさか。そう思うけれど、否定しきれないのが小早川という女だった。とにかく執着心が強くて、湯島のことになると目の色を変えていた。
そうだ。今日、湯島はいるんだろうか。というかわざわざ湯島が咲良の見舞いのために病院へ来たというのが信じられない。そもそも、湯島が咲良と仲がいいなんてことも知らなかったのだ。
(それにしても…)
先輩が咲良を見る目が無性に苛立って仕方無い。しかも昨日の発言。まるで、先輩が咲良を好き…みたいな。
「…いや、ねぇか」
昨日、湯島が帰った後に咲良に聞いたが、連絡も取っていないし、ここ一年以上は会うことも全くなかったという。それなのに好き、なんて。あり得ない。
「…やっぱ、行こうっと」
咲良が心配だし、湯島が来ていることも考えて、二人きりにはしたくない。
病院へつき、いつも通りエレベーターの方へと行こうとした時だった。
「…なにやってんですか」
思わず声をかけてしまった。相手の女は、ビクリと肩を震わせて…それから、俺の顔を見て、やっぱりとでも言いたげな顔をした。
「…秋野君」
何も気付かずに呑気に歩いて行った湯島先輩は、やはり気付くことなくエレベーターへと乗り込んだ。どうやら、また咲良のところへ行くらしい。
相手の女…小早川は、それを見ながら止まった階を確認していた。
正直湯島と咲良を二人きりにはしたくない。だが今はそれどころではない。
「前に来たときも見た。…ずっと湯島先輩のことストーカーしてたんですか」
違うと言ってほしいのは、面倒事に巻き込まれたくないからだ。
けれど、小早川は笑ってこう言った。
「秋野君、ずっと会いたかった…!」
「…は?」
「私ずっと、秋野君に謝りたくて…!あの時は私も余裕がなくて、すっごく傷付けたよねっ…!?でも私、秋野君のことが忘れられなくて…!」
なにを、言っているんだ、この女は?
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