あと1年、彼の隣に

伊月 慧

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本編

20日目---2

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「あの、先生。外出許可貰えませんか?」
 いつもより明るい声を出して、期待の眼差しでこちらを見てくる咲良ちゃん。
 俺は悩んでいた。
 仕事に私情を挟むべきではない。弟なんて関係ない。それでもやはり可愛い弟。
(うーん…)
「外出ってデート?」
「あ、はい…煌夜と久しぶりに出掛けたいなって」
 その顔を見て、即決する。何よりも咲良ちゃんの心が穏やかであることが優先だ。それに元々横恋慕の応援をする気は全くないし。
 悪いな、弟よ。ていうか咲良ちゃんのことを俺が話したとか言うのやめろよ。これでも患者さんの病気についてっていうのは個人情報で外に漏らしちゃ駄目なんだから。
 いやまあ、話しちゃったのは俺だけど。
「…いいよ。……その代わり」
 余りにも嬉しそうな顔をするので、条件をつけてしまった。
「親御さんが煌夜くんと一緒に出掛けていいって言うならね」
「……お母さんたちの?」
 躊躇するのも当たり前だろう。多分、咲良ちゃんのお母さんは許してくれない。もしも外出先で何かあった時のことを考えているんだろう。
「そう、許可貰えたら俺も許可出すよ」
「ーーみんな、そればっかり」
「え?」
「先生もお母さんが許してくれないこと分かってて言ってるくせに」
 ……図星です。
「私はもう高校生だよ?過保護すぎるの」
「それは病気のこともあるし…」
「すぐそうやって病人扱い。…私が病人扱いされる度にどけだけ辛いと思ってるか、知ってる?普通の子じゃないってなに?私は普通なのに」
「それは………外で、発作でもあったら…万が一があったら危険だし」
「万が一があったら、そこが私の寿命でしょ?死に場所が病院よりいいじゃない」
「…君は生きたくないの?」
 心臓移植の件だって、はっきりと答えを聞いていない。
「ーー他の人の命を奪ってまで、私は生きようとは思わない。それに失敗したら?それこそお金と時間と二人分の命を亡くすことになる。それなら私一人で死ぬ」
「咲良ちゃん!」
「もしも移植の後に生きるのがたった数日、数時間だったら?そんな少しの時のために、生きる必要はあるの?」
「っ…そうとは限らない!」
「みんな言うの、私が少しでも永く生きれるようにって!少しって何なのよ!!そんな少しの時のために、私が周りを巻き込んでいるって、なんなのよそれっ…!」
 励ましのつもりで言った、「少しでも病気が治りますように」という言葉。その些細な言葉の数々が、彼女をこんなに苦しめていたとは知らなかった。
(…俺もまだまだ、一人前じゃないな)
「降参」
 本当の医者なら止めるべきかもしれないけど、仕方ない。病院を抜け出されるよりはよっぽどいい。
「分かったよ。許可を出してあげる。その代わり、面会終了時間が終わるまでに帰ってくること、昼の薬をちゃんと飲んでおくこと。それから、出掛けるというのだけは親御さんに伝えること。わかった?」
「…うん…」
 ありがとう。そう呟かれた言葉に、ため息をつく。
 俺はつくづく彼女に甘い。
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