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しおりを挟む結子?と声をかけられた。広瀬君とのデート中だった。声をかけてきたのは多分、広瀬君がトイレに行っていていなかったから一人だと思ったのだろう。
「翔大…」
少したれ目ので穏和な顔つきをしている早川翔大は、私の元彼氏だ。連絡がつかなくなった、自然消滅と言っていいのか分からない男。
「…何やってんの」
ぶっすーとふくれた声で言う彼に、私はまだ広瀬君が出てきていないことを確認して返事する。
「買い物」
「見たら分かるけど」
早くどこかに行ってくれないかな、なんて思いながらため息をついてしまう。
「分かるなら聞かないでよ」
「…元気そうだな」
「そうだね」
それは最近職場でも言われる。
「なに、医者と上手くいったわけ?」
チクチクと言葉にトゲがあった。それに少しずつ苛立ちは増していく。
「先生からのセクハラ酷かったし、とっくに病院は辞めたよ」
は?と彼が不思議そうな顔をする。
「セクハラ?」
そういえば、説明する前にこの男は連絡がつかなくなったんだった。
「そう。あ、でももうこれ関係ないか」
「セクハラってどういうことだよ!」
「そのままの意味だけど?貴方は私の話なんて聞かないで他の女の話を信じたんだろうけれど。まぁ、今となってはよかったのかもね」
そのおかげで私はふんぎり付いたわけだし。
「言えよ!」
「言う前に責め立てて出ていったくせに」
「っ……悪かったよ、ごめん。俺、お前のことちゃんと信じるべきだった」
驚いた。あの翔大がこんなことを言うなんて。男の人って本当に大切なものを失ってからじゃないと謝れないのかな?
「この後、時間あるか?」
「…ごめんね。もう翔大とは会わないと思う」
「え?」
「結婚することにしたの。翔大と別れてから、私のことをよく分かってくれる人に出会えたの」
と、丁度その時だ。
「結子、何してるんだよ」
突然結子と呼ばれたことに驚きながら後ろを見ると、これまた不機嫌そうな顔をした広瀬くん。
「誰」
「あ、知り合い…」
翔大のことを何と説明すればいいのか分からない。所詮知り合ったのは合コンだし、大学関係ならそう言えたんだろうけれど。
「ふーん。…早く指輪買いに行こう。時間なくなる」
腕を引かれて、慌てて駆け寄る。
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