螺旋の操り人形

操り人形

｢あーあ、気づいちゃったかな...？｣
研究施設ではモニターに向かうここの所長が、ニヤニヤと蛍を眺めていた。
部屋のあちこちに向かって叫び続ける蛍は、自分に助けを求めてきていた。
しかし解除装置には目もくれず、引き続きモニターを眺めた。
  蛍のことは近所のカフェから連れてきた。老夫婦が営むカフェでアルバイトをする大学生だった。
そんなによくは知らなかったが、実験には十分だった。
｢でもまさか、こんなに続くとはね...｣
実際こんなに続けても大丈夫だと分かったのは進歩だった。
そんなことを考えながらデスクの上のコーヒーカップに手を伸ばすと、少し位置がずれて落としてしまった。
｢あーあーあー...ったく......ん？｣
所長は頭の隅に何か既視感のようなものを感じた。
｢最近飲み物落とすなんてして無くないか...？なんだ、この既視感は......まあいい。｣
感じた感覚を無視して再びこぼした飲み物を拭き始めた_____


暗いモニタールーム。そこに男はいた。
ニヤリと口角を上げ、ヒヒッと笑い声を上げる。
後ろには配線で雁字搦めの男女の姿があり、男の目の前にはモニターが2つ並べてあった。
片方では女が部屋の空虚に向かって泣きながら助けを求めている。
もう片方では男が、丁度この部屋と同じような場所でこぼしたらしい飲み物を拭いていた。
｢......あーー、滑稽、滑稽。素晴らしいサーカスのようだねぇ...｣
 男がいる部屋のドアには、『会長室』と記してあった。

                                 END