血蝕の月華~春夏秋冬~

月見こだま

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第一章

07:もうひとり

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「るい」

 倒れ込んだ朧唯を茫然と見下ろす麗の前で、朔夜が動く。

「珍しいことじゃない」

 倒れた体を布団に寝かせる。その動作は手慣れていて、言葉に嘘がないことを証明していた。
 しかし、その『珍しくない』という言葉に滲むやるせなさ。

「枕投げ出来なかったー! っ喚いて終わるだけだから大丈夫」
「え」

 まだ夕方にもなっていない。だというのに、起きることはないと断言する。
 無意識に滲んだそれを感じ取った朔夜は失言だった、と目線を逸らす。
 しかし、すぐに折れた。

「こうなったら半日以上は目が覚めない。――でも、本人のリクエストだから真ん中に寝かせとこう」
「どうして――」
「本当は、ちゃんと状況把握してから説明したかったんだけどな」
「朔夜」
「……先に電話してきていいか? 怖いお姉さんたちに報告しなきゃいけなくて」

 そう言って、茫然とする麗に困ったような笑みを向けて、部屋を出た。
 それを立ちすくんだまま見送った。



――


 ブツッと電子音が途切れる。――ふぅ、と長く息をついた長い黒髪の女性に、ボブヘアの女性が声をかけた。

「朔夜から電話?」
「そう。朧唯が倒れたって。――それと、ひとり保護したみたい」
「ふぅん。私も行った方がいい?」
「孝太を連れて行くわ」
「そ。わかった。私は明日行こうかな。そろそろ冷蔵庫空っぽだと思うし」
「買い物ぐらい自分たちでさせなさいよ」
「やりたくてやってるだけよ」

 ふふ、と笑って目を細めるボブヘアの女性に、深々とため息を零す。
 長い髪の女性は煩わしそうに髪をかき上げ、立ち上がった。

「ま、別にいいけど。――それじゃ、あとは任せたわ」
「うん。行ってらっしゃい、けいちゃん」

 ボブヘアの女性が手を振る。それを一瞥し、長い髪を翻して扉の向こうへ消えた。


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