血蝕の月華~春夏秋冬~

月見こだま

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第二章

02:レイ

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『それ』は、目を細める。

「俺と麗はそんなに違うか?」

 表情は面白いものを見つけた子供のようだが、視線は冷えている。

「そうね、私に性格の違いは分からないけど」

 慧都も同じように笑う。身を乗り出して、上から下まで『それ』を観察して、頷いた。

「もっと衝動的なんだと思ってたわ。普通に喋れるのね」

 背もたれに体重を預け、首を傾げて見せた。――最も、本当に恐ろしいのは衝動を隠せることだということを理解した上で、慧都は笑う。

「心外だな。ところかまわず暴れるわけがない。この体は俺のものでもあるんだからな」

 ――麗の顔をした『それ』は、大げさに肩を竦めた。
 こうしてみると、表情ひとつ、動作一つで別人だというのがわかる。

「――別の人格……というわけでも、なさそうだな」

 同じ顔で、しかし別人だと明確にわかる朋夜と朔夜。それに、重ねてしまう。絞り出すように、朔夜が問う。

「麗が俺をどう認識してるのかは知らないが、明確に『違う』が正しいだろうな。――なあ、だから医者なんて連れて来たんだろ」
「ああ。――まさか、ここまで会話出来るとは俺も思ってなかったが」
「あんた、本当に医者か?」
「ああ」
「ふうん」

 今度は、『麗』が孝太を観察するように見る。やがて、納得したのか頬杖をかいて朔夜を指さす。

「あれ。持って帰っていいぜ。ああは言ったが俺も興味がある。感謝しろよ」

 あれ、と指さしたのは麗の涙をたっぷりと吸ったタオル。そして、続ける。

「血も持っていけ。結果が出るまでは大人しくしてやっててもいい」
「……どういう心境の変化かしら」
「言ったろ。興味があるだけだ」
「あなたは知ってどうするつもり?」
「さあ?」
「そ。――孝太、採血して」

 腕を捲る『麗』を見て、慧都が指示を出す。
 今はまだ何も確定ではない。しかし、麗が怯えている『麗』は、ひどく淡々としていた。


「朔夜」

 目の前の光景を見るだけだった朔夜の名を、『麗』が呼んだ。

 そして、ただ真実だけを告げるように。その唇が、言葉を紡ぐ。



「麗に憂は守れない。お前にも何も出来ない」


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