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第18話 思いもしない言葉
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とりあえず情報はリアルタイムで得られそうだ。
「さすがは文明の利器だ。偉いぞ、俺の携帯」
竜弥がさらにページをスクロールさせていく。
「何を見てるの? わ、すごい。どうやってこれ表示されてるわけ?」
近づいてきたユリファが横からひょこっと画面を覗き込んできた。彼女は携帯が珍しかったのか、口に手を当てて驚く。
そういえばあやふやになっていたが、ユリファは異世界人なのだ。そのことを竜弥は再認識する。
「そっちの世界にはこういう通信端末はないのか? ないと不便そうだけど」
「わたしたちは、魔法である程度のことができるからね。情報伝達には基本、魔法を使うかな」
「へえ、一般人もみんな魔法が使えるのか?」
「普遍的な魔法ならね。戦闘で使うようなものや、大規模術式は魔術師じゃないと使えないけど」
竜弥とユリファは顔を寄せ合って、小さな画面に表示されるニュースサイトをざっと見ていく。
その中には写真や動画などの視覚情報も多い。これだけ大きな事件だ。SNS等で情報は拡散され、それがニュース記事にまとめられている。
それを見ていくと、どうやら転移の規模も色々のようだ。異世界転移が起こったのが夕方のこと。そのため、どの写真も夕暮れから夜にかけての写真だ。
小規模な地域の転移だと商店街の真ん中に氷河の一部が出現したり、大規模なものだと街数個をまとめた範囲が平原と置き換わったりしているのが確認できる。
「『日本領海内に、未確認の陸地出現』とかもあるぞ……マジで大変なことになってんな」
大量に表示される情報。その中でも繰り返し報じられていたのは、関東の被害状況だった。見出しを見て竜弥は驚愕し、目を丸くする。
「――はっ!? 東京消滅? まるごと異世界と置き換わってるって、おいおいマジかよ!」
「その東京っていうのが、この国の首都なの?」
ユリファは小首を傾げて訊ねてくる。竜弥は大きく頷いてその記事に目を通す。
「東京が消滅して、政府も主要行政機関も吹っ飛んだって書いてあるな……こりゃ、かなりのパニックになりそうだ」
事態の重さがだんだんと理解できてきて、竜弥の頬を冷汗が流れていく。
「てか、転移の瞬間とかに色々事故起きてるんじゃないのか……? 車とか電車とか乗り物類の事故、電線、水道管、ガス管なんかのライフラインの切断――その他も諸々……うわ、考えたくねえ」
最悪の想像が頭をよぎった竜弥だが、それに対しては、「安心して」とユリファが冷静に答えた。
「元々、アールラインを日本に転移させた大規模転移術式には、万が一、転移先に干渉した際の安全装置のような補助術式が組み込まれているわ。多分、アールラインと日本の境目に存在した物体は無事なはずよ」
「どういうことだ?」
「たとえば、乗り物の類なら少し移動させられることもあるし、ライフラインにどんなものがあるのかはよくわからないけど、切断っていうことなら、川なんかもなんらかの形で整合性が取れているはず。別の形になったり、小規模なものなら消滅したりね。あとは、転移時に二つの国の境目に存在した人間も、どちらかの領域に移動させられていると思う。身体が真っ二つになったりはしてないわ」
「それを聞いて、今日一番ほっとしたよ……」
竜弥は大きく安堵の息を吐き、胸を撫で下ろした。もし、転移術式がその辺の安全を考慮していなかったら、今頃日本は異世界など関係なく、大量に発生した事故で壊滅状態に陥っていただろう。
「わたしたちがお互いの言語を理解できるのも、転移術式内に翻訳術式が組み込まれていたから。国家規模の術式だから、ちゃんと考えられて組まれてるのよ」
確かに、竜弥は言語の問題についても気になっていた。なるほど、リーセア王国が用意した大規模転移術式とやらは、かなり手の込んだもののようだ。
「だが、これからどうなっちまうんだ、一体……?」
ユリファは再び木箱に腰かけると、足を組んで苦い顔をした。
「……当面は、この歪な状況の安定化に努めるべきでしょうね。リーセア王都は強襲でボロボロ、日本側も政府中枢が消滅。この状況でモンスターが襲ってきたり、さっきの魔術師たちがまた攻撃してきたりしたら、被害が大きくなりすぎるわ」
「おい、ちょっと待て。モンスターとかも存在するのか、そのアールラインって異世界には」
「いるよ。結構獰猛なのも多い」
「洒落になってねえな……そんなのが大宮なんかに出現したら一たまりもないぞ」
日本の都市は科学技術こそ発達しているが、モンスターやら敵対勢力やらと戦う能力は皆無といっていい。
モンスターが街中に出現=都市の壊滅といっても、間違ってはいないだろう。
「リーセアも日本に迷惑をかけるつもりはなかったから、今の状況は不本意でしょうね。リーセアの王国直属の騎士や魔術師にモンスターを押さえ込んでもらうのが最善だけど、王都がこんな有様じゃ、いつ頃の対応になるか……」
「加えて、さっき襲ってきた奴らもいる。そいつらのこともどうにかしないといけないんだろ?奴らはなんなんだ? 敵対している他国の魔術師とか? 目的は?」
「……あいつらは、他国の軍隊ってわけじゃないわ。リーセア王城に存在していたある物を狙う組織団体だった。今回の強襲もそれが目的。まあ、バックには、あいつらに金杖を渡したどこかの国家もついてるようだし、あながち外れてもいないけれど。その協力国の目的はリーセア王国の滅亡だったみたいだからね。でも、利害が一致しただけで、リー・ダンガスたちの団体と、バックの協力国は狙いが全く別」
そう言って、ユリファは木箱に座ったまま身を乗り出し、竜弥のことをじっと見た。
「そして――リー・ダンガスたちの目的の方は、永遠に達成されなくなった」
自嘲気味に唇の端を歪めたユリファは竜弥のことを、びっと指をさした。そうして彼女は、驚く一言を口にする。
「奴らが探していた物はね。竜弥、あなたの身体と混ざり合ってしまったの」
「さすがは文明の利器だ。偉いぞ、俺の携帯」
竜弥がさらにページをスクロールさせていく。
「何を見てるの? わ、すごい。どうやってこれ表示されてるわけ?」
近づいてきたユリファが横からひょこっと画面を覗き込んできた。彼女は携帯が珍しかったのか、口に手を当てて驚く。
そういえばあやふやになっていたが、ユリファは異世界人なのだ。そのことを竜弥は再認識する。
「そっちの世界にはこういう通信端末はないのか? ないと不便そうだけど」
「わたしたちは、魔法である程度のことができるからね。情報伝達には基本、魔法を使うかな」
「へえ、一般人もみんな魔法が使えるのか?」
「普遍的な魔法ならね。戦闘で使うようなものや、大規模術式は魔術師じゃないと使えないけど」
竜弥とユリファは顔を寄せ合って、小さな画面に表示されるニュースサイトをざっと見ていく。
その中には写真や動画などの視覚情報も多い。これだけ大きな事件だ。SNS等で情報は拡散され、それがニュース記事にまとめられている。
それを見ていくと、どうやら転移の規模も色々のようだ。異世界転移が起こったのが夕方のこと。そのため、どの写真も夕暮れから夜にかけての写真だ。
小規模な地域の転移だと商店街の真ん中に氷河の一部が出現したり、大規模なものだと街数個をまとめた範囲が平原と置き換わったりしているのが確認できる。
「『日本領海内に、未確認の陸地出現』とかもあるぞ……マジで大変なことになってんな」
大量に表示される情報。その中でも繰り返し報じられていたのは、関東の被害状況だった。見出しを見て竜弥は驚愕し、目を丸くする。
「――はっ!? 東京消滅? まるごと異世界と置き換わってるって、おいおいマジかよ!」
「その東京っていうのが、この国の首都なの?」
ユリファは小首を傾げて訊ねてくる。竜弥は大きく頷いてその記事に目を通す。
「東京が消滅して、政府も主要行政機関も吹っ飛んだって書いてあるな……こりゃ、かなりのパニックになりそうだ」
事態の重さがだんだんと理解できてきて、竜弥の頬を冷汗が流れていく。
「てか、転移の瞬間とかに色々事故起きてるんじゃないのか……? 車とか電車とか乗り物類の事故、電線、水道管、ガス管なんかのライフラインの切断――その他も諸々……うわ、考えたくねえ」
最悪の想像が頭をよぎった竜弥だが、それに対しては、「安心して」とユリファが冷静に答えた。
「元々、アールラインを日本に転移させた大規模転移術式には、万が一、転移先に干渉した際の安全装置のような補助術式が組み込まれているわ。多分、アールラインと日本の境目に存在した物体は無事なはずよ」
「どういうことだ?」
「たとえば、乗り物の類なら少し移動させられることもあるし、ライフラインにどんなものがあるのかはよくわからないけど、切断っていうことなら、川なんかもなんらかの形で整合性が取れているはず。別の形になったり、小規模なものなら消滅したりね。あとは、転移時に二つの国の境目に存在した人間も、どちらかの領域に移動させられていると思う。身体が真っ二つになったりはしてないわ」
「それを聞いて、今日一番ほっとしたよ……」
竜弥は大きく安堵の息を吐き、胸を撫で下ろした。もし、転移術式がその辺の安全を考慮していなかったら、今頃日本は異世界など関係なく、大量に発生した事故で壊滅状態に陥っていただろう。
「わたしたちがお互いの言語を理解できるのも、転移術式内に翻訳術式が組み込まれていたから。国家規模の術式だから、ちゃんと考えられて組まれてるのよ」
確かに、竜弥は言語の問題についても気になっていた。なるほど、リーセア王国が用意した大規模転移術式とやらは、かなり手の込んだもののようだ。
「だが、これからどうなっちまうんだ、一体……?」
ユリファは再び木箱に腰かけると、足を組んで苦い顔をした。
「……当面は、この歪な状況の安定化に努めるべきでしょうね。リーセア王都は強襲でボロボロ、日本側も政府中枢が消滅。この状況でモンスターが襲ってきたり、さっきの魔術師たちがまた攻撃してきたりしたら、被害が大きくなりすぎるわ」
「おい、ちょっと待て。モンスターとかも存在するのか、そのアールラインって異世界には」
「いるよ。結構獰猛なのも多い」
「洒落になってねえな……そんなのが大宮なんかに出現したら一たまりもないぞ」
日本の都市は科学技術こそ発達しているが、モンスターやら敵対勢力やらと戦う能力は皆無といっていい。
モンスターが街中に出現=都市の壊滅といっても、間違ってはいないだろう。
「リーセアも日本に迷惑をかけるつもりはなかったから、今の状況は不本意でしょうね。リーセアの王国直属の騎士や魔術師にモンスターを押さえ込んでもらうのが最善だけど、王都がこんな有様じゃ、いつ頃の対応になるか……」
「加えて、さっき襲ってきた奴らもいる。そいつらのこともどうにかしないといけないんだろ?奴らはなんなんだ? 敵対している他国の魔術師とか? 目的は?」
「……あいつらは、他国の軍隊ってわけじゃないわ。リーセア王城に存在していたある物を狙う組織団体だった。今回の強襲もそれが目的。まあ、バックには、あいつらに金杖を渡したどこかの国家もついてるようだし、あながち外れてもいないけれど。その協力国の目的はリーセア王国の滅亡だったみたいだからね。でも、利害が一致しただけで、リー・ダンガスたちの団体と、バックの協力国は狙いが全く別」
そう言って、ユリファは木箱に座ったまま身を乗り出し、竜弥のことをじっと見た。
「そして――リー・ダンガスたちの目的の方は、永遠に達成されなくなった」
自嘲気味に唇の端を歪めたユリファは竜弥のことを、びっと指をさした。そうして彼女は、驚く一言を口にする。
「奴らが探していた物はね。竜弥、あなたの身体と混ざり合ってしまったの」
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