ようこそ★夢月館へ!~今宵の物語は~

月紅 餅兎

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第一話 

第一話 「Blu-Sky(2)」

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ー…本に引きずり込まれる感覚に陥った。


○Blu-Sky○

 高校の入学式、それはドキドキの出会いの日。
新品の服を来て、パンを加え「遅刻するー!」とか叫びつつ身を走り道の曲がり角で運命の伴侶とぶつかる、というものではないだろうか。(漫画や小説の見すぎかもしれないが…)

 そう、そんな出会いがあればいいのにと思ってしまう。

 しかしながら、私にはそれはできない。

 何故なら今私の目に写るのは病院の天井だからだ。

 せっかくの入学式という日の前日に倒れてしまった。

 元々心臓が悪く、神経質で病弱な身体だった為イベントの前日に倒れるなんてことは慣れっこである。

 むしろいけた傾向がない。

 慣れてしまえば悲しさもあーあと呆れてしまうほど心が諦めて枯れてしまうのだ。

 入学式そうそう休んでしまうと、次に学校に行くとき行きづらくなるのも知っている。

 中学の時、入院しており初登校すると既にグループが出来ており混ざりにくかったのを覚えている。

 唯一の救いだったのが、クラスに幼馴染みの″望月 栢乃 モチヅキカヤノ″がいたことだった。
 栢乃は、とても女の子らしいというより男の子に近い性格の持ち主だった。
 いわば、がさつというかクールというかめんどくさがりといえばいいのだろうか。
 それでも、真は通っておりとても優しい子だ。
 栢乃のおかげで入退院繰り返しても大分と中学生活は満喫できたと思う。
 高校では、栢乃はいない。
 お互い夢のために別々の高校に進学した。
 今思えばこれほど虚しいものはないなと感じる。
 栢乃もいないのであれば、退院したあと学校に行ったときどうやってグループに入ればいいのだろうか。
 そもそも友達はできるのだろうか。
 
不安が沢山込み上げていく。
 考えても仕方ないと思い本を読むが気が乗らずすぐ閉じてしまった。
 
 (コンコン)ガラガラ…

 「大中 葵オオナカアオイさーん、具合はどうですか?」

 看護師さんが点滴を変えにやってきた。

 つまらない話をしていたとき、ふと思いついたことを聞いてみた。

 「あの…なにもしていないと頭がぐるぐるするんです。 この本読み飽きちゃったしどうしたらいいでしょうか?」

 看護師さんは、そんなのは簡単なことだと笑顔で答える。

 「外を散歩するですよ。あ、病院の敷地内からでないでくださいね。悩ましい時とか、癒されたいとは自然に触れると良いですよ。でも、まだ長時間はダメですよ?
そうだ、折角お母さんが花を生けられてるし、花を眺めてみては?」

 「はぁ…ありがとうございます。」

 花を眺めて何になるだろうか。
 母が生けてくれた花は綺麗だと思う。
 でも、ずっと綺麗だなと眺めていられるほど気は太くない。
 むしろ短気だとおもう。

 看護師さんは一通り確認をし終えると、次の患者へと歩み寄っていった。

 外を散歩するか。

 外は、とても快晴で太陽も輝いているからきっと温いだろう。

 日向ぼっこなんてもの昔していたことを思い出した。

 動ける状態ではないといわれたが、少しくらいなら行けるだろうと私は部屋を出た。

 外は案の定ポカポカとしており、眠気を誘ってくれる。

 ベンチに座りつつ、パンを加える鳩を眺める。

 (これはまだ考え事しなくてすむかもしれないな。)

 パンを取り合いする鳩を見ているとなんだか愛らしくくすっと笑みが込み上げる。

 しかしそんな笑みもつかの間に驚きに変わってしまった。

 バキバキバキッ

 《うぉぉぉぉっ!!!?》

 「え!?  へ?!」
 
 うううう上から木の上から人が降ってきた。

 その衝撃で心臓が一瞬出てくるかと思った。

 「いってぇ…。んだょ、急に暴れるんじゃねぇよ、あぶねぇなぁ。」

 (ね、猫を抱えた金髪の男の人?!) 

  男の人は、私の存在に気づくやいなやブツブツと何かを呟きながら起き上がった。

 「驚かせて悪かった。」

 そして、唐突に謎の謝り。
 確かに驚いたけれど。

 「あ、いえ、大丈夫です。あの木から落ちましたけれど、お怪我は?」

  大方猫を助けようとしたのだろうけど、あれほどまでに激しく落ちることはないとおもう。

 おもっきり尻餅ついていたし、ボロボロになってるし。

 金髪だし、少し不良なのかと疑ってしまう。

 「あー、大丈夫大丈夫。あんたこそ今の巻き込まれて怪我とかしてねぇ?っつか、此処で何してんの?」

 「…ぼっち日向ぼっこです。」

 「は?ぼっち日向ぼっこぉ??」

 何をしているかと言われてすぐに思いつかず唐突の思い付きで答えたがしかめた顔をされて、あ、引かれたなと内心思った瞬間大声で笑われてしまった。

 「あははははははっ!ぼっち日向ぼっことか初めて聞いたわ。しかも、真顔であははは」

 あまりにも笑われて恥ずかしさと怒りが込み上げてきた。

 「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか?!大体、私だって好き好んでぼっち日向ぼっこしてるわけじゃないんですからねっ!」

 「ははは、わりぃわりぃ。わかってるよ、それぐらい。あんた多分中学生だろう?ここの病院患者で、学校休んで行けなくて寂しくて概ね、暇だから外でいんだろ?」

 半分あたってるけど、中学生って言われた。

 そんなにおぼこく見えるのはきっと髪型のせいだ。

 「私は高校生ですっ!」

 「えっ、まじで。わりぃ、高校生に見えなかった。まじさっきからごめんよぅ。ははは」

 まだ笑うか!?
 
 どれだれ失礼な人だろう。

一分たりともここにいたくないとおもった。

 「私部屋に戻りますっ!」

 「あ、まじごめん。怒った?怒っただろ。冗談だって。本当にごめんなさい。」

 急に真剣に謝られたら何故か歯痒く少し笑みが溢れてしまった。

 (ー…おかしな人。)

 「あ、やべぇ。俺今日遅刻しちゃなんねぇんだった。わりぃ、じゃあな。」

 何を思い出したのか時計を見るや否や嵐の如く去っていってしまった。
  
 (世話しない人。)

 再びベンチに腰をおろし、空を見上げるととてもすんだ色の青い大空が広がっていた。

 看護師さんに見つかる前に病室に戻ることにした。

 結構リフレッシュできた気がする。

 あの男の人のおかげじゃないけど!

 あの男の人のおかげじゃないけど!

 
 入院してから一週間たったとき、やっと仮退院出来、学校に行けることになった。

 (さすがに一週間もたっているとグループとか出来上がってそうだな。)

 緊張でか少し胃がキリキリするけれど、いつまでも通わないわけにはいかない。

 いざ、出陣と朝は意気込んで制服の袖に手を通したが、実際教室の前にたつと怖じけついてしまった。

 (どうしよう…どうやって入ればいいのだろうか。普通におはようは変だろうし、はじめましてもおかしい。)

 悩んでいると誰かに後ろから声をかけられた。

 「ねえ、そこ邪魔なんだけどそこどいてくれない?」

 「わわっ!すみません。」

 私より身長は20㎝程高いだろうか。

 前髪が長く、色白のクールぽい男の人が立っていた。

 道を塞いでしまったのだと気付き急いでどくと、無言で扉をあけ教室へと入っていく。

 おはようと声をかけられ、おーと無愛想な返事をする彼。

 私は、彼に続きおずおずと教室をのぞきつつ入ると一気に周りはこちらに気付き辺りはしんっと静まり返った。

 (あ、、、どうしよう。変な空気になってしまった。)

 コソコソといろいろな人の声が飛び交う。

 「ねぇ、、、あのこ誰?」

 「ほら、入学式からそうそう休んでた子よ。身体が悪くなって入院してたんだってさ。」

 「へー、なんで今これてんの?」

 「さぁね」

 クスクスこそこそと面白おかしく小さな声で話し出す女子。
 ああ、こういう空気になった場合栢乃はどうするのかな。
 三年前は栢乃がいたけど、今はいない。
 なんとか自分で話しかけないと。

 《キーンコーンカーンコーン》

 固まっているとチャイムが鳴ってしまった。

 遅刻だとつけられる前に席につかないといけないのだが自分の席がわからない。

 空いているところが私の席なのだろうが、まだ来ていない人もいるからなのか、数ヶ所席は空いており座りようがない。

 「あの、私の席は何処かご存知ですか?」

 迷っていても仕方がない。
 思いきって立っている位置から近い女の子に聞いてみた。

 「大中さんの席は、あの窓際で寝ている男の子の隣の席よ。」
 
 「あ、ありがとうございます。」

 ちょっと冷たそうに見える女の子だが、親切に教えてくれた。

 一つとなりの窓際の席につくと、先生がやって来て主席を取り出した。

 横でぐうぐうと幸せそうに鼾をかきつつ寝る男子は、先生が丸めた厚紙でスパーンと叩き起こされる。

 「こぉらー!!安藤っ!朝から寝てねーでおきろっ!」

 「ふごぉ…林田先生、今日も元気だなぁ。」

 辺りはどっ笑いに包まれた。

 「ん??おまえ。」

 此方に気づくや否や顔をしかめジロジロと見てくる。

 何処かで見たその顔は思い出すまである一言で時間がかからなかった。

 「あー!ぼっち日向ぼっこじゃん!」

 「なっ///」

 ぼっち日向ぼっこという言葉で周りはクスクスとまた笑いだした。
 恥ずかしくなり本当にこの人を憎らしく感じる。
 穴があったら入りたいとも思った。

 「へー、お前一緒のクラスだったのか、俺は安藤 蒼アンドウアオイ、よろしくなー!」

 バシッ「こら、起きた瞬間女子をからかったり口説くんじゃないっ!」

 「いってぇ、悪かったって。」

 漫才のようなやり取りに笑いがおこった。

 でも、私はその時前のような笑みは出来なかった。

 

 
 

  
  

 

  

 

 
 
 
 

 
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