最弱と蔑まれた俺、実は世界唯一のチートスキル持ちでした ~隠して無双して学園生活を満喫します~

トワイライト

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第1章:無能と呼ばれた少年、学園で“隠しても隠しきれない力”を見せてしまう

第3話:実戦科トップ・レオン登場。逃げたいのに模擬戦が組まれる

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 昼休みが終わり、基礎科の午後授業が始まるはずだった。
 だが、その静けさは唐突に破られた。

 教室の扉が勢いよく開き、廊下から熱を帯びた気配が流れ込んでくる。
 次の瞬間、鮮やかな赤髪が視界に飛び込み、少年が教室の中央へ一歩踏み込んできた。

「よう、ここが基礎科Eクラスか?」

 声が響いた瞬間、教室中がざわついた。誰もがその名を知っている。
 レオン・アークライト。
 実戦科トップの天才。
 入学一年目にして実戦科の上位選抜を全勝で通った“炎の剣士”。

 その本人が、なぜか基礎科の辺境クラスへ乗り込んできた。

 僕は嫌な予感しか感じていなかった。
 そして、その予感は一瞬で現実になる。

「天城リオはどこだ?」

 教室の空気が凍る。

 レオンの視線がまっすぐ僕へ突き刺さった。

(……どうして僕なんだ)

 隣の席の男子が囁く。

「うわ……やば。なんで実戦科トップがアイツを?」

「もしかして、本気で無能かどうか確かめに来たんじゃ……?」

「てか普通に無理だよな、勝ち目ねぇって……」

 悪意のない囁きが、逆に胸へ痛く刺さる。

「お前が天城リオか」

 レオンが一歩近づく。
 その動きには迷いがなく、炎のような気迫があった。

「噂は聞いた。“魔力ゼロの無能”らしいじゃねぇか」

「…………」

「だけどよ、おかしいよな? 実戦科の生徒が言ってたんだ。
 “黒髪のやつが異様に素早かった” “避け方が普通じゃなかった” ってよ。
 ……まさかお前じゃないよな?」

(……あれは、偶然……ではないけど……説明できない……)

 肯定も否定もできない僕は、曖昧に視線を逸らした。
 その仕草を見逃すほどレオンは鈍くなかった。

「ははっ、おもしれぇ。
 お前、無能じゃねぇんだろ?」

「ち、違うよ……僕は本当に——」

「だったら証明してみろよ。模擬戦でな」

「……っ」

 教室が一気に沸き始める。

「え、模擬戦!?」「やば、死んだ……」「リオ終わった……」

 終わった。
 完全に終わった。

 僕は戦いたくない。
 ここで力を見せれば、また隠す場所がなくなる。
 でも戦わなければ、余計に怪しまれる。

(どうすれば……)

 そう迷っていると、レオンが肩を掴んだ。

「いいから来いよ、時間はとらせねぇ。避けるだけなら誰でもできる。
 それで本当に“無能”だって証明できるなら、俺は何も言わねぇ」

 避けるだけ……。

(……そのつもりだったんだけど)

 僕は唇を噛む。
 避けるだけのつもりでも、完全適応は勝手に最適化してしまう。
 戦意がなくても、回避能力や身体能力が勝手に上がってしまう。

 それでも——拒否する余地はなかった。

 教室の空気が「逃げるの?」と無言で押してくる。

「……わかった。少しだけなら」

「よし、決まりだ」

 レオンの笑みは挑戦者のそれだった。

 その後ろで、フィアが呆れたようにため息をつく。

「ほんとに行くの……? 無理だと思うけど」

 セレナは腕を組み、僕の全身を観察するように見ていた。

「リオ、本当にやるのか。……怪我するなよ」

 エリスは心配そうに小声で呼び止める。

「り、リオ……無茶しないでね……?」

 ミュリスだけは、なぜか楽しげに笑っていた。

「ふふ、リオって困ってる顔もかわいいね」

 ——お願いだから余計なこと言わないで。

 心の中で叫びつつ、僕は渋々、教室を出た。

 演習場に着くと、すでに噂を聞きつけた生徒たちが集まっていた。
 半ば学園行事のような騒ぎに、僕の胃は締め付けられるように痛む。

(……はぁ。どうしてこうなる)

 レオンは既に中央で準備運動をしていた。
 その姿勢は無駄がなく、身体能力の高さが一目で分かる。

「よし、お前の準備ができるまで待っててやるよ」

「準備も何も……戦わなくていいならそれで……」

「戦わなくていいならいいさ。避けるだけで十分だ。
 俺が本気で斬りかかっても避けきれたら、お前の勝ちだ」

「……それ、避けれる前提じゃない?」

「ははっ、避けられねぇから言ってんだよ」

 言葉通り、彼の自信は揺るぎなかった。

 観客席の端で、クロード教官が腕を組んで見守っている。
 その眼差しは優しいが、どこか僕を“測る”視線でもあった。

(……やっぱり見抜かれてるのかな)

 息を整えようとしても、胸のざわめきが止まらない。

 レオンが腰の剣を抜いた。
 炎の魔力を宿す細剣——赤熱の軌跡を描きながら構えが決まる。

「いくぞ。遠慮はしねぇ」

「……う、うん」

(避けるだけ……避けるだけ……避けるだけなら……)

 その瞬間——

「——始め!」

 観客の誰かの合図をきっかけに、レオンが地を蹴った。
 目の前の赤色が一気に迫る。

(速——っ!?)

 反射的に体が動いた。
 一歩下がり、上半身を反らし、剣先を紙一重で避ける。

 自分の意思より早く、身体が勝手に最適回避を選んでいる。

(やばい、完全適応が勝手に働いてる!)

「ほぉ……避けたか!」

 レオンが笑う。
 すぐさま二撃目、三撃目が襲いかかる。

 炎を纏った斬撃が連続で飛ぶ。
 そのたびに僕は、風の流れに乗るように身体を傾け、足を滑らせ、寸前で回避する。

(止めろ……もっと鈍く……!)

 願いとは裏腹に、動きはどんどん精密になっていく。
 レオンの剣筋を“見た瞬間に理解し、最適な避け方を選ぶ”という、常識外の動作。

 観客がざわめき始める。

「おい……今の見たか?」「避け方がプロの動きじゃね?」

「無能じゃなかったのかよ……!」

 視線が集まる。
 もう誤魔化すのが限界に近い。

「ちっ……避けられるなら、これはどうだ!」

 レオンの魔力が一気に膨れ上がる。
 炎の斬撃が地面を焼き、熱風が爆ぜた。

 避け切れない。
 この規模は——避けたら逆に不自然。

 なのに、僕の身体は——勝手に最適解を選んだ。

 地を蹴り、炎の軌跡の“死角”へ滑り込む。

 気づけば、レオンの懐に入り込み——

「う、わ——っ!?」

 レオンが勢いよく地面へ転がる。
 僕は彼の剣を無意識に弾き飛ばしていた。

 ——静寂。

 観客の視線が、すべて僕に向けられた。

 レオンが立ち上がり、驚愕と笑みが混じった顔で言う。

「……お前、本当に無能かよ」

 その瞬間、クロード教官が小さく息を呑む音がした。
 鋭い視線が僕の動きを正確に把握していた。

(……やばい。完全にやり過ぎた)

 演習場の中心で、僕の心臓は激しく鼓動していた。

——逃げられない。
 隠しきれなくなる予感が、確かな形で迫っていた。
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