美少女パパと最強娘! ~前世の娘がクラス召喚されてきた!? TS転生者のパパは正体を隠しつつ娘の為に頑張る! その美貌と悪辣さで~

ちりひと

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第三章. 最強娘を再教育

048. 犯人捜し

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 一方、レヴィアたちも必死に走っていた。純花と別れてしばらく経った後、背後から大量の魔物が現れたのだ。
 
「まだ追ってきますわ!」
「くっ! しつこいわね!」
 
 十数体の魔物を始末したものの、流石の二人とてあの数を倒しきる事はできない。実力に劣る聖騎士たちでは当然無理だ。そう判断した彼女らは仕方なく対処を諦め、別の出口を探していた。
 
「くそっ! 敵がいないからと油断しすぎたか!」

 ギルフォードが悪態をつく。やはり純花を連れてくるべきだったと考えているのだろう。実際純花がいれば楽勝で殲滅できたはずだ。

「いつもなら突破くらいはできたのに。ネイがいれば……」
「リズ、後悔は後にしましょう。他にも出口があるはずですから、どうにか見つければ……」

 盾となる戦士がいなければ二人が実力を発揮する事は難しい。
 
 多少の数ならレヴィアでも盾役となれるが、彼女の場合は防御ではなく回避と攻撃を主体としたアタッカーとしての守りだ。あの数では殲滅速度が間に合わず押されてしまい、そうなればリズの魔法構築もままならない。故にネイがいないのは致命的だった。同行する聖騎士の中にも戦士はいるが、実力に劣る彼にあの数を対処しろというのは酷だ。数分も持つまい。
 
「ジェス! どこにいるジェス! 返事をしろ!」

 未だにジェスは見つかっていない。大分走ったからここらで見つかるはずなのだが、影も形も無かった。先頭を走るギルフォードはジェスを探しつつ、彼に呼び掛けている。

「グオオッ!」
「なっ……!」

 そうして気を散らしていたのがまずかったのだろう。T字路に差し掛かると左からブラックウルフが現れ、ギルフォードに噛み付こうとする。不意をつかれたせいで彼は反応できていない。
 
「くっ!」

 レヴィアは魔力を足に集中し、床を蹴る。その勢いのままにウルフへと突っ込み、持っていた剣で刺し殺した。

「ッ! す、すまん! 助かった!」
「いいから逃げますわよ!」

 殺した魔物に続き、左からも大量の魔物が襲って来る。否応なく一行は右へと曲がり、その先へと走った。
 
「まずい。どんどん下に降りてますわ。恐らく出口は逆方向ですわね」
「嘘っ! レヴィア、どうしよう!?」

 リズは不安そうな顔をしている。絶望的な状況だった。牡丹一華結成後も絶体絶命の危機はあったが、何とか三人で切り抜けてきた。しかし今はその一人がいないのだ。冒険者になって一番のピンチかもしれない。
 
 レヴィアは必死に考える。どうしたらこの事態を切り抜けられるのかを。
 
(……駄目だ。一つしか思い浮かばねぇ。ものすごくやりたくないけど……)

 苦い顔をする彼女。しかしこの状況ではやらざるを得ない。仕方なく覚悟を決める。
 
(けど、ここじゃ駄目だな。崩落の危険がある。出来ればもっと広い場所に……)

 そう考えながら走っていると、通路が終わり、大広間に出た。だだっ広く何もない空間で、他に出口はないようだ。倉庫か何かだろうか。

「行き止まり!? そんな……!」
「くそっ! 万事休すか!」

 絶望にうなだれる一行。リズは顔を青くし、ギルフォードは歯を食いしばっている。聖騎士三人も恐慌状態にあった。
 
「皆、下がっていて下さいまし」

 そんな中、一人魔物を待ち構えるように立っているレヴィアの姿。いつになく真剣な表情だ。それを見たリズは手に持った杖を強く握り、元来た通路の方を睨む。
 
「……最後まで抵抗するって訳ね。オッケー。一花咲かせてやろうじゃない」
「リズも下がって。邪魔ですわ」
「なっ……! ど、どういう事?」
「いいから」

 目をつぶり、すーっと息を吸い込む。そしてそのまま自らの奥へと意識に潜らせ――
 
「……ん?」

 意識を潜らせようとしたものの、何やら正面から声が聞こえた気がして目を開ける。幾多の声が混じっており、そのほとんどは断末魔だ。しかし中には聞いたことのあるような声もあり――
 
「うおっ!」

 突然、ものすごい勢いで何かが飛んできた。

 その物体をギリギリで避ける事に成功。正体を確かめると、ぐちゃぐちゃになった魔物の死体であった。
 
「いた! レヴィア! リズ! 無事だったか!」

 ネイと純花がこちらへ駆けてきた。その後ろにはジェスの姿もある。
 
「二人とも! 無事だったのね!」
「それはこちらのセリフだ。間に合ってよかった……」

 リズに反論しつつ、ほーっと安心のため息をつくネイ。横にいる純花も小さくため息を吐いて安堵している様子。
 
「魔物の死体があったから、もしやと思いこちらに来たのだが……正解だったようだな。全く、肝を冷やしたぞ」
「いきなり現れたのよ。それまで何の気配も無かったのに」
「そうか……。ところでギルフォード殿」
「む?」
 
 ギルフォードも安心した顔をしていたが、前触れなくネイに呼び掛けられ不思議そうな顔をする。ネイの声が真剣な雰囲気だったからだろうか。
 
「聞きたい事がある。昨日、貴殿はどこにいたのだ?」

 それを聞かれた途端、ギルフォードは痛い所を突かれたように顔をしかめた。
 
「それは……」
「質問を変えよう。何故、援軍に来なかったのだ? 人々を守るのも聖騎士の務めだろう」
「ううむ……」

 何か答えづらそうにしている。彼の反応を見たネイは隣のジェスへと呟く。
 
「ジェス殿……」
「まさかギル。君が魔王の手先だなんて……」
「何っ!?」

 彼の言葉を聞き、ギルフォードは驚きの声を出した。

「な、何をおっしゃる! ギルフォード様が魔王の手先など!」
「ありえません! 何の証拠があって……」

 部下の聖騎士たちが反論。確かに、今の時点では言いがかりもいいところだ。ギルフォードは口元を引きつらせながら弁明する。

「じ、実はだな。昨日はたまたま不在で……」
「あれ? 確か町で見かけたわよね。昨日レヴィアがぶつかってたの、ギルフォードさんじゃなかった?」
「……!」

 が、リズの指摘によりあっさりと崩れ去った。しかもぶつかったのは魔物が来る直前だ。襲撃に気づかないなんて事は無いはず。
 
 彼の明らかな嘘にネイはさらに疑いを強くしたようだ。険しい顔をして警戒している。一方、ギルフォードは焦っているようだった。
 
 レヴィアは首をかしげつつネイに問いかける。

「いきなり動力が戻ったり魔物が現れたりと何者かの作為は感じられますが……それがギルフォード様の仕業だと?」
「ああ。そうとしか考えられない」
「援軍に来なかった事を根拠にしているなら、他の聖騎士の方々もそうではなくて? 少なくともわたくしの周りでは見当たりませんでしたが」

 その指摘にはっとするネイ。彼女がジェスに視線を送ると、こくこくと頷かれた。どうやら彼らも来ていなかったらしい。
 
「ま、待て! 本当に違う! 嘘をついたのは認めるが、これには理由があって……」
「そ、そうです! 司教様がビビリまくって放してくれなかったなど言えるはずも――」
「なっ……! ばっ、馬鹿者!」
「えっ? ……あっ!」

 ギルフォードと聖騎士が弁明。本当だとすれば確かに情けなく、他言するのははばかられる内容だった。

「往生際が悪いぞ。ここまで証拠がそろっているのだ。潔く認めろ」

 しかしネイに信じた様子は無い。確かに言い訳としてはあまりな内容だ。彼女は四人が犯人だと断定しているようだった。
 
「ふーむ」

 レヴィアはちらちらと周囲の反応を伺う。そして再びネイへと問いかける。
 
「ねぇネイ。逆光源氏ってどんな話でしたっけ?」
「えっ? ちょっ、なっ、何で今そんな話を!」

 ネイは慌て始めた。それはそうだろう。異性の前で恋愛エロ小説の事を語るのはかなり抵抗がある。
 
 その反応を見たレヴィアはネイから視線を外し、続けてリズ、純花へと順に顔を眺め、最後に……
 
「失礼。違ったらごめんなさい」

 男へと迫り、投げ飛ばして地面に叩きつける。「がっ!」と痛みの声を上げたが、叩きつける直前で勢いを殺したのでそこまでのダメージは無いはずだ。
 
「なっ! レ、レヴィア! 何をしている!」
「いえ、仮にこの中に犯人がいるとしたらこの方だと思いまして。



 ……ね、ジェス様」
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