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転機
幕間【サカキ侯爵家】
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ガルン、ラメル、リラ、トウシローに侍女のレラはサカキ侯爵家の領地に到着した。
「ようこそ、伯爵家の皆さま。私はサカキ侯爵家の執事長をしておりますヤタロウと申します。皆さまが快適に過ごせるように致しますのでどうかよろしくお願い致します」
門前で待っていたのは執事長のヤタロウの他に、門を守る兵士が5名。それに馬車を屋敷まで案内してくれる下男が2名だった。
「あ、あの、ガルンと言います。妻のラメルと娘のリラです。それと、侯爵様が会いたいと仰っていたトウシローさんに、リラ付の侍女であるレラです」
緊張した面持ちでヤタロウに答えたガルンだったが、
「ガルン様どうか私には普段通りの口調でお話下さいませ。私は侯爵家に仕える者で平民でございますので」
ヤタロウにそう言われて、アタフタ顔をしていた。そこに、ラメルが言葉を発した。
「それじゃあ、ヤタロウさん。お屋敷まで案内をよろしくお願いします」
「はい、承りました」
さすがお母さんだねとリラは思いながら、案内に従い馬車が動きだすと窓から顔を出して屋敷を見てみた。
「うわー、大きいね!」
思わず声が出たリラにヤタロウは笑顔で
「有難うございます。リラ様。コチラの屋敷は初代サカキ侯爵であったセイイチロウ様が設計をして建てられた家屋にございます。平屋ではありますが広さだけはございますので安心してお寛ぎいただけるかと思います。尚、屋敷ではお履物をお脱ぎいただく必要がございますのでその点だけはご了承下さいませ」
そう教えてくれた。そして、屋敷前に到着した一行を待っていたのはずらりと整列する侍女や執事だった。玄関前には中年だが美丈夫の男性と年齢と共に美しくなったと思われる女性、それにシンが立っている。
(もしも、トーヤがこの場面にいたならば前世の高級旅館だねとでも言っただろう。)
「ようこそお越し下さいました、伯爵家御一同様」
全員の声が一致してそう言うのに圧倒されながら、馬車から降りたみんなはヤタロウの案内で玄関前に行く。そして、
「ガルン様、ラメル様、リラ様、トウシロー様、こちらが侯爵家当主のヨシアキ・サカキです。隣は夫人のマヤ・サカキです。シン・サカキはご紹介するまでもなくご存知ですね」
とニッコリ笑うヤタロウ。ガルンだけでなく、ラメルやリラ、レラもその言葉にビックリしている。トウシローだけは当たり前の顔をしていた。
そこでトウシローが教えてくれた。
「俺の故郷では身内を他の人に紹介する際には呼び捨てで紹介するのが当たり前の事なんだ。それはどんな立場であろうともだ。だから、ヤタロウが侯爵やその夫人、そしてその子を俺達に紹介する際に仕える主家の者を呼び捨てにしても不敬には当たらないんだ。で、合ってるかな、ヨシアキ殿?」
その言葉にニッコリと笑ってサカキ侯爵は答えた。
「仰る通りで間違いはないですよ、トウシロー殿。そして、ガルン殿、ラメル夫人、リラ嬢、遠路はるばるようこそ来てくれた。色々と決めねばならぬ事もある。どうか滞在されてる間はゆっくりと自分の家にいるような気持ちで過ごして貰いたい。言葉については我が家では無礼講が盛んでな。というか、俺が丁寧な言葉遣いが苦手だから、ガルン殿もそのつもりで話して欲しい」
いきなり口調を崩して候爵がそう言う。それから、マヤ夫人もラメルとリラに向かって言う。
「まあ、ラメルさん。とてもお子さんを産んだとは思えない程見事なスタイルね。それにリラちゃん! 嬉しいわ! 義理とはいえ私にもやっと娘が!! この人ったら、子種に男しか無いんですもの! 次から次へと男ばっかり私に産ませて!」
と返事に困るような事を言い出す。シンは苦笑しながら、そんな母に言う。
「男ばかりでスミマセンね、母上。でも、こんな可愛い娘が出来たのはその息子のおかげなんですよ」
と、普段の生真面目なシンとは違う一面をチラッとリラに見せた。リラはその事に気づきニコニコ顔で応えている。
「まあ、そう言えばそうね! シンのお陰ね。父や兄達と違って出来る男に育ったわ!」
「いやいや、マヤよ。俺の子種の問題じゃなくてだな、マヤの畑が男ばかりを成長させて……」
途中で言葉を切ったヨシアキ。隣から強烈な鬼気が出ているからだ。
「アナタ、私が悪いとでも仰るのかしら?」
「いーやっ!! そんな事は一言も言ってないぞっ! 全ての責任は当主である俺にあるっ!!」
「お分かりなら良いんですよ」
「父上、母上、いつものお戯れはその辺りで。皆さんが困惑してますし、早く中に入って貰って長旅の疲れを取ってもらいましょう」
とシンが言うと、ヤタロウが続いて
「そうですぞ、ヨシアキ様、マヤ様。お客人の前ではしたない。私がヨシアキ様に幼少の頃よりお教えしてまいった礼儀作法を今一度初めから学び直しますかな? マヤ様は侯爵家夫人としての立ち居振る舞いを、教育係を引退なされたがまだまだお元気なシメ殿にお願い致しますかな?」
そう言うと2人とも顔を赤く、続いて青くして
「そ、それだけは止めて(くれ)!!」
とヤタロウに懇願していた。そうして到着してから夫婦漫才を見せられた名誉伯爵家一同は、緊張も解れて楽しく過ごせそうだと思った。
シンとリラの正式な婚約の件、ヨシアキがトウシローに模擬戦を申し込んだ件などのお話はまた後日に。
「ようこそ、伯爵家の皆さま。私はサカキ侯爵家の執事長をしておりますヤタロウと申します。皆さまが快適に過ごせるように致しますのでどうかよろしくお願い致します」
門前で待っていたのは執事長のヤタロウの他に、門を守る兵士が5名。それに馬車を屋敷まで案内してくれる下男が2名だった。
「あ、あの、ガルンと言います。妻のラメルと娘のリラです。それと、侯爵様が会いたいと仰っていたトウシローさんに、リラ付の侍女であるレラです」
緊張した面持ちでヤタロウに答えたガルンだったが、
「ガルン様どうか私には普段通りの口調でお話下さいませ。私は侯爵家に仕える者で平民でございますので」
ヤタロウにそう言われて、アタフタ顔をしていた。そこに、ラメルが言葉を発した。
「それじゃあ、ヤタロウさん。お屋敷まで案内をよろしくお願いします」
「はい、承りました」
さすがお母さんだねとリラは思いながら、案内に従い馬車が動きだすと窓から顔を出して屋敷を見てみた。
「うわー、大きいね!」
思わず声が出たリラにヤタロウは笑顔で
「有難うございます。リラ様。コチラの屋敷は初代サカキ侯爵であったセイイチロウ様が設計をして建てられた家屋にございます。平屋ではありますが広さだけはございますので安心してお寛ぎいただけるかと思います。尚、屋敷ではお履物をお脱ぎいただく必要がございますのでその点だけはご了承下さいませ」
そう教えてくれた。そして、屋敷前に到着した一行を待っていたのはずらりと整列する侍女や執事だった。玄関前には中年だが美丈夫の男性と年齢と共に美しくなったと思われる女性、それにシンが立っている。
(もしも、トーヤがこの場面にいたならば前世の高級旅館だねとでも言っただろう。)
「ようこそお越し下さいました、伯爵家御一同様」
全員の声が一致してそう言うのに圧倒されながら、馬車から降りたみんなはヤタロウの案内で玄関前に行く。そして、
「ガルン様、ラメル様、リラ様、トウシロー様、こちらが侯爵家当主のヨシアキ・サカキです。隣は夫人のマヤ・サカキです。シン・サカキはご紹介するまでもなくご存知ですね」
とニッコリ笑うヤタロウ。ガルンだけでなく、ラメルやリラ、レラもその言葉にビックリしている。トウシローだけは当たり前の顔をしていた。
そこでトウシローが教えてくれた。
「俺の故郷では身内を他の人に紹介する際には呼び捨てで紹介するのが当たり前の事なんだ。それはどんな立場であろうともだ。だから、ヤタロウが侯爵やその夫人、そしてその子を俺達に紹介する際に仕える主家の者を呼び捨てにしても不敬には当たらないんだ。で、合ってるかな、ヨシアキ殿?」
その言葉にニッコリと笑ってサカキ侯爵は答えた。
「仰る通りで間違いはないですよ、トウシロー殿。そして、ガルン殿、ラメル夫人、リラ嬢、遠路はるばるようこそ来てくれた。色々と決めねばならぬ事もある。どうか滞在されてる間はゆっくりと自分の家にいるような気持ちで過ごして貰いたい。言葉については我が家では無礼講が盛んでな。というか、俺が丁寧な言葉遣いが苦手だから、ガルン殿もそのつもりで話して欲しい」
いきなり口調を崩して候爵がそう言う。それから、マヤ夫人もラメルとリラに向かって言う。
「まあ、ラメルさん。とてもお子さんを産んだとは思えない程見事なスタイルね。それにリラちゃん! 嬉しいわ! 義理とはいえ私にもやっと娘が!! この人ったら、子種に男しか無いんですもの! 次から次へと男ばっかり私に産ませて!」
と返事に困るような事を言い出す。シンは苦笑しながら、そんな母に言う。
「男ばかりでスミマセンね、母上。でも、こんな可愛い娘が出来たのはその息子のおかげなんですよ」
と、普段の生真面目なシンとは違う一面をチラッとリラに見せた。リラはその事に気づきニコニコ顔で応えている。
「まあ、そう言えばそうね! シンのお陰ね。父や兄達と違って出来る男に育ったわ!」
「いやいや、マヤよ。俺の子種の問題じゃなくてだな、マヤの畑が男ばかりを成長させて……」
途中で言葉を切ったヨシアキ。隣から強烈な鬼気が出ているからだ。
「アナタ、私が悪いとでも仰るのかしら?」
「いーやっ!! そんな事は一言も言ってないぞっ! 全ての責任は当主である俺にあるっ!!」
「お分かりなら良いんですよ」
「父上、母上、いつものお戯れはその辺りで。皆さんが困惑してますし、早く中に入って貰って長旅の疲れを取ってもらいましょう」
とシンが言うと、ヤタロウが続いて
「そうですぞ、ヨシアキ様、マヤ様。お客人の前ではしたない。私がヨシアキ様に幼少の頃よりお教えしてまいった礼儀作法を今一度初めから学び直しますかな? マヤ様は侯爵家夫人としての立ち居振る舞いを、教育係を引退なされたがまだまだお元気なシメ殿にお願い致しますかな?」
そう言うと2人とも顔を赤く、続いて青くして
「そ、それだけは止めて(くれ)!!」
とヤタロウに懇願していた。そうして到着してから夫婦漫才を見せられた名誉伯爵家一同は、緊張も解れて楽しく過ごせそうだと思った。
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