寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

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転機

幕間【ヨシアキVSトウシロー】

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 これはガルン伯爵家一同がサカキ侯爵家に招かれていた時の話。
 サカキ侯爵家の広大な敷地内には、道場と呼ばれる剣の修練場がある。そこに2人の男がいた。

「さて、トウシロー殿。俺のワガママを聞いてくれて有難う」

「フフフ、ヨシアキ殿。礼は要らぬ。俺も興味があったのだ。故郷を離れて果たして進化したのか、劣化したのか…… サカキ流戦刀術の今の真髄を見せていただこう!」

「フム、劣化はしておらぬと俺は見ているのだが…… だが、相手は神鬼活性流じんきかっせいりゅう創始者のトウシロー殿だ、ゆめゆめ俺に遅れは取るまいと思ってな……」

 2人とも微妙に相手を貶める言葉を口にする。これは2人の故郷で武士と呼ばれる職業の者がよく使う戦術の1つだ。

「フフフ、相手にとって不足なし…… かな?」

「いかにも…… いざ!」

「オウ! いざ!!」

 どちらからともなく腰の大刀を抜き放ち、かたや青眼に、かたや下段に構える。

「基本に忠実だな、サカキ流戦刀術……」

「それが神鬼活性流じんきかっせいりゅう自然の位じねんのくらいか……」 

 互いに互いの構えに一言をいい、そして、

「いえぇぇぇーいっ!!」

「くあぁーーっ!」

 青眼から繰り出された1振りを下段からの大刀が斬った。
 キイィーーーンッ!!

「フム、俺の腕で斬れぬとは…… その太刀は?」

「フフフ、業差刀ごうさとうだ」

「ホウ、サカキ家の家宝と言われるあの……」

「それよりもそちらの太刀は?」

竜羅刀るらとうだ」

「死闘を繰り広げた真竜の牙から鍛造したと言われるあの……」

「どちらも豪刀のようだな……」

「そのようだ。太刀が互角ならば後は互いの腕のみ! 今一度、いざ!」

「参るがよい!」

 そして、再び上がる奇声と澄んだ音…… …… 


 それより1時間後、2人はにこやかに道場から出てきた。

「いやー、流石はトウシロー殿だ。参った参った」

 そうおどけていうヨシアキにトウシローは、

「なんのっ、やはりヨシアキ殿よ! 我が剣は未だ頂点に非ず! だ」

 とヨシアキをヨイショする。

 勝敗は分からないが、2人の剣客けんかくが互いを認めあったのだと、家臣一同やガルン伯爵家一同はホッとしていた……

 そして、シンに向かってヨシアキは言う。

「シン、お前はトウシロー殿に剣を見てもらえ。トウシロー殿ならば、サカキ流の基礎を覚えたお前の動きを殺さずに、尚且つ神鬼活性流を教えていただけるであろう。さすればシンは俺をも超える剣客ななるだろうよ」

 父の言葉にシンは打ち震えて

「トウシロー師匠、よろしくお願いしますっ!!」

 と地面に土下座してトウシローにひれ伏した。そんなシンにトウシローは、

「ひれ伏す必要はない、シン殿。我が剣でよろしければお伝えいたそう。本当はトーヤ様に覚えていただきたかったが、あの方はどうも違う事を考えておられるようだ…… ならば、真摯しんしに学ぶつもりのあるシン殿に、サカキ流と共にわが剣を覚えていただきたい。こちらこそ、よろしく頼む」

 そう答えて、シンを立たせた。そこにリラが、

「師匠、私も!! これからは真剣に学ぶから!」

 とトウシローに言うと、トウシローは

「いや、リラには我が剣ではなく相応しい師匠を見つけてある。フェル様の侍女であるレミ殿よりその技術を学ぶのだ。恐らくはリラにとって一番の技術だぞ」

 そう言ってからラメル夫人を見た。それに静かに頷くラメル夫人。横目でそれを見ていたリラは、

「分かった。レミさんを師匠と呼んでその持つ技術を継承する。そして、シンを守る!!」

 と宣言した。しかし、シンが

「なっ! 僕がリラを守るんだっ!!」

 と言い、それにリラが

「ううん、私がシンを守るのっ!」

 と返して堂々巡りしそうな時に、侯爵夫人のマヤが2人に言った。

「ウフフフ、仲が良くて嬉しいわ。でもね、夫婦めおとというものは互いを尊重し慈しみ合いながら生きていくものなの。だからどちらも相手を守るその気持ちを、何時までも大切に持っていなさいね」

 そうして、剣客2人の勝負は終わりシンは生涯最高の師を得ることになったのだった……
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