寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

文字の大きさ
77 / 90
島国ヤパン

幕間【イーヨ大名ダウテ】

しおりを挟む
「場所が分かっておるのに何故直ぐに連れ戻さんのだ!?」

 とある城の一室で一人の男が家臣を怒鳴りつけている。その男は身長180cm程で筋骨隆々の大柄な体を怒りに震わせながら家臣を見下ろしていた。
 家臣はその威圧に震えながらも何とか答える。 

「お、恐れながら申し上げます。ナニワサカイ国にて材木問屋を営んでおります、キノクーニャ屋はナニワサカイ国の国王夫妻の覚えもめでたく、中々手を出しづらい状況が続いておる次第でございます」

 とブンザーエモンの事を伝えると、

「むうっ! 確かその者もかの村の出身であったな…… 何とか手に入れねばならぬが…… そもそもナニワサカイ国とて我が国ヤパンで敗北した大名が祖であろう…… しかし、今ではそれなりに力を持っておるのも事実か。とにかく草を放って何年かかっても良いからあの者どもを連れ戻すのだっ!」

 そう家臣に命じて下がるように告げた。

「はっ! 御意に!」

 家臣がそう答え出ていくと、イーヨ県を預かる大名、ダウテ・カネチカは小姓に自身の息子で次男のトウチカを呼びにやらせた。
 暫く待つとふすまの向こうから声がかかる。

「父上、トウチカにございます。お呼びにより参上いたしました」

「うむ、来たか。入るが良い」

 カネチカの言葉により、脇に控えた者がふすまを開くと、そこには年の頃15~16歳の少年から青年になろうかという男児だんじが平伏していた。

「良い、トウチカ。近うよれ」

「はい、失礼いたしまする」

 カネチカに呼ばれその前まで膝行で寄るトウチカにカネチカは待ちきれずに声をかけた。

「実はの、トウチカ。お主に旅に出てもらいたいのだ。ナニワサカイ国までじゃが、場合によってはサーベル王国まで足をのばして貰いたいのじゃ」

 トウチカは父にそう言われて戸惑いの表情を見せた。

「して父上、その旅で私は何をすれば良いのでしょうか?」

「うむ。トウチカよ、草となってナニワサカイ国に潜入し、叶うならば王族に取り入り王族を討ち果たして来るのだ!」

 いきなりな話の為にトウチカは驚くが、この父の言うことは絶対である。ここで否やと言えば直ぐに処罰されてしまう為に素直に頷いた。それに、トウチカにとってこれは絶好の機会でもある。

「畏まりました、父上。このトウチカ、必ずや父上の仰る通りに致します」

 そう言って平伏したトウチカを見ながらカネチカは言葉をかけた。

「良いか、兄のカクチカを差し置いてダウテの秘剣をモノにした其方そのほうは、この国に居てはならぬ存在じゃ。そんな其方を生かす為に父は苦渋の決断をしたのじゃ。見事、ナニワサカイの王族を討ち取って参れ! その時にはワシがカクチカにとりなしてやるゆえの…… 旅にはヒヨリを同道させる。路銀は家老のカクエモンから受取るがよい。話は終わりじゃ! 直ぐに出立の用意をいたせ」

「ハハッ!」

 再度、膝行し部屋を出たトウチカは家老のカクエモンの元に向かった。

「トウチカ様、コチラが殿より申しつかった路銀にございます。金貨5枚(5,000,000円)、小金貨10枚(5,000,000円)、銀貨20枚(2,000,000円)、小銀貨50枚(500,000円)、銅貨100枚(100,000円)でございます。そしてコチラが手形てがたにございます。身分は怪しまれぬ様に商人となっております。名も変えておりますゆえに、後ほどご確認をお願い致します」

「うむ、カクエモン。確かに受取った」

「道中のご無事を祈っておりまする……」

 家老より路銀と手形を受取ったトウチカはヒヨリを呼びに兄の私室に向かった。ふすまの前で立ち止まり、兄に呼びかける。

「兄上、トウチカにございます。父上の命によりヒヨリと共にナニワサカイ国に出向く事になり申した。ヒヨリはおりますでしょうか?」

「入れ!」

 兄の言葉にふすまを開けて中に入るトウチカ。入るなり兄が木刀を振り上げてトウチカに襲いかかる。が、予測していたトウチカは難なく避けた。

「フンッ、相変わらず可愛げの無い奴じゃ。兄の思いを体で受け止めぬとはな!」

「兄上の思いを体で受けましたら父上の命を守れませぬ。して、ヒヨリは?」

 アッサリと兄の怒りを躱したトウチカは聞く。

「ヒヨリ、父上の命らしい…… コヤツに着いて行け!」

 カクチカの言葉に奥から女中じょちゅうの格好をした女が出てきた。年の頃は17~18歳と見える。

「え~、カクチカ様~、私は行きたくないです~。カクチカ様からお殿様にお願いして下さいませ。私はカクチカ様のお世話をしたいです~」

「フフフ、い奴じゃ。しかし、俺でも父上の命には逆らえん。済まぬがコヤツと一緒に行くのだ。それに心配するな、路銀は俺が用意してやる故に、コヤツと同じ宿に泊まる必要もない。適当なところで戻って参れ」

「本当ですか~…… それならしょうがないから行きます。トウチカ様、カクチカ様との別れの挨拶がございますので、四半刻後30分後に城門に向かいます」

「相分かった、遅れぬようにいたせ」

 そう言ってトウチカは兄の部屋を出た。そうして出立しゅったつの準備を整えて城門に向かうとヒヨリは既に来ていたので、そのまま無言で2人で城を出て城門がみえなくなるまで歩く。

「ヒヨリ、兄上からの路銀はいくらだったのだ?」

「トウチカ様、流石はケチンボのカクチカ様でした。宿代ギリギリの銀貨5枚(500,000円)にございます」

 聞いてトウチカは吹き出す。

「ハハッ、兄上らしいな…… それよりも気づいているか?」

「はい、聞耳ききみみのセンジと読唇どくしんのオリョウ夫婦と他に2人が着いてきてるようです」

「流石だな。まあ、他の2人は適当な場所でセンジとオリョウが始末するであろうよ。それよりもコレが其方そなたの手形じゃ。俺と夫婦めおとという事になっておる」

「まあ、それではそれらしく致しませぬとなりませんね。よろしいですか?」

 楽しそうにそう言うヒヨリは兄の部屋に居た時とは別人のようだ。それもその筈、ヒヨリはトウチカに命を救われた者で、トウチカを守る為に兄のカクチカに取り入っていたのだ。

「ああ、勿論だ。それよりもこのまま国を抜けるぞ。俺はやっと自由を手に入れられそうだ」

「はい、トウチカ様。何処までもお供致します」

 そうして、若い2人は希望を胸に旅に出たのだった。 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...