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コアのコクアの件

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 突然の嬌声《きょうせい》に固まる俺達。しかし、そんな俺達を無視して嬌声は響く。

『イヤーん、あハーン、ダメー! ん? アレ、いつもみたいに気持ち良くない? 何で? 金精コンセイ様~、いつもみたいに気持ち良くしてくださ······ いぃーーーっ!? だ、だ、誰!? 貴方は誰なの? 気安く私に触らないでよっ!』

 捲し立てるように言われ思わずコアから手を離した俺。それに安心したのか、部屋の声は俺が何者なのか、何でこんなに沢山この部屋に人が居るのか聞いてきた。

『私が言った通りにちゃんと手を離したから、攻撃するのは止めて上げるわ。それで、貴方は一体誰なの? それに、どうして只の人間がこの部屋にこんなに居るのよ!?』

 その質問に答えたのはアカネさんだった。

「はじめまして、コア様。私達はこの洞窟だんじょんの前の主、金精コンセイ様から権限を譲渡されたトウジの眷属です。今回、コア様にトウジを認定していただく為に、ご迷惑でしょうが大勢で押し掛けて参りました」

『えーーっ! ちょっとそれってどういう事よ! 私は何も金精コンセイ様から聞いてないんだけどー!?』

「コア様、金精コンセイ様は封印を解かれまして、新たな世界を求めて慌ただしく旅立たれました。ですので、コア様へご連絡するのをお忘れになったようでございます。どうか、今一度トウジの手を御身《おんみ》に触れさせていただけないでしょうか?」

『えー! 金精コンセイ様とはまた気持ち良い事をしてくれるって約束してたのに······ まあ、良いわ。それで、あんたたちの名前は? あっ、私はコアのコクアよ』

「はい、あちらにおりますのが先程も申しましたが新たな洞窟だんじょんの主である、トウジ。トウジの左右におりますのが、我が娘にしてトウジの妻のサヤとマコト。そして、こちらが私の配偶者のケンジで、私がアカネと申します、コクア様」

『あんたは礼儀を知ってるようね。良いわ、トウジとやら、貴方が金精コンセイ様と同じように私を気持ち良く出来るなら認めて上げるわよ。出来なかったら······ そうね、あんたの妻のどちらか一人の体を頂くわ。私の依代よりしろとして使用して上げるわ』

 口を挟む間もなく、アレよアレよと話が進んだが、最後の言葉が余計だったな。俺を怒らすには十分だよ。

「いや~、俺は別にこんな権限は要らないし、金精コンセイ様から押し付けられただけだから、もうこのまま帰る事にするよ。何が、体を頂くわだ! 寝言は寝てから言うモンだぞ、アンコみたいな名前のコクアンよ!」

 俺の怒りの言葉に頻りに首を横に振るアカネさん。恐らくアカネさんのスキル天運に逆らうなとか出ていたんだろうが、俺はそんな事は関係ないとばかりに更に言った。

「大体、そこから動けないからって、人様の体を使おうなんて考えが間違ってるよ! ずっと、この場所で一人寂しく過ごしとけっ!」

 俺がそこまで言った時に部屋が揺れ始めた。

 ズゴゴゴゴッと音を立てて壁が動き部屋が広がる。そのあとにまた同じような音を立てて天井が上に上がり出し、二十畳程の広さで天井までの高さが二メートル五十センチ位だった部屋は、一辺六十メートルの正四角形で天井までの高さが二十メートルの広大な空間に変わった。
 そして、

『私の支配する空間で私に対して良くも好き勝手言ってくれたわね。もう怒ったわ! トウジ、貴方を認める方法はデスマッチよ! 今から私が用意する魔物と対戦しなさい! 貴方が勝ったら認めてあげるし何でも一つだけ言う事を聞いてあげるわ! 但し、貴方が負けたら支払うのは【命】よ! さあ、覚悟は良いかしら!』

 俺はとっくに腹を決めているので、四人に無在をかけて姿を隠してから、コクアに向かって言った。

「どうでも良いから早く出せ。秒もかからずに倒してやるよ」

『ムキーーッ! その生意気な鼻をへし折ってやるわ! でよ! 邪竜ヴォーレント!』

 コクアの呼び掛けで姿を現しかけた竜の体に俺は王毒オロチの濃縮毒を送り込んだ。そして、完全に姿を現した時には邪竜ヴォーレントは既に息絶えていた。

『えっ? アレ? ヴォーレント、何を遊んで居るのかな? 死んだふりは必要ないわよ、さあ、貴方のブレスでこの生意気な男を消しちゃって······ って、ホントーに死んでるーーー! な、な、何で! 何をしたの? 教えなさいよ! 世界三大厄災の一つ、邪竜ヴォーレントが貴方ごときに倒せる筈がないわ!』

 うーん、五月蝿いなあ。無音。俺は部屋というよりは台座にあるコアを敵認定して無音をかけた。静かになる部屋。そして、そのまま邪竜ヴォーレントに入れた毒を取り出して、その死体も無限箱に納めた。
 我ながら少し大人気おとなげなかったと反省するが、愛する妻を取引に持ち出されて怒らなければ旦那の資格はないと俺は思う。そこまで考えてから皆の無在を解除した。

「「トウジ、大丈夫? ケガはない?」」

 サヤとマコトが心配そうに聞いてくれる。うん、素直に嬉しいな、心配されるのって。しかし、そんな雰囲気をぶち壊す男が·······

「オイオイ、二人とも見てただろ。何も出来ずに出てきた時には既に息絶えてた邪竜を。ったく、俺は邪竜に同情するよ」

「「パパ(叔父さん)は黙ってて!」」

 二人の娘から冷たく言われて落ち込むケンジさん。アカネさんはキョロキョロしていたが、俺に向かって言った。

「トウジさん、天運が変わったわ。もう心配したわよ。初めの天運だと、トウジさんが死ぬって出てたんだから。私は必死に止めたけど、暴走しちゃって······ でも、母としては娘達の為に怒ってくれて有り難うとお礼を言っておくわね。それと、そろそろコクア様も反省しただろうから、スキルを解除してあげて」

 アカネさんがそう言うので俺は無音を解除した。そして、後悔した······

『ムキーーッ、何よ! どんなズルをしたか答えなさいって言ってるでしょう! この私が聞いてるのに何で何も言わないのよ!』

 こいつ······ 全く、反省してねぇーー!スキルにかけられたのにも気づかずにずーっと喋っていたようだ······ 解除するんじゃなかった······
 そう考えていた時にアカネさんが俺を呼んで無音をかける様に言う。言われた通りに無音をかけるとアカネさんから提案があった。

「ご免なさいね、トウジさん。私の読みが甘かったみたい。ここのダンジョンコアは大分甘やかされてるみたいね。で、もう何も言わずにコアに両手を置いて、女性喜ぶ左右の手指を使っちゃえば良いと思うの。周りを、無音で囲うのも忘れずにね」

 言ってるアカネさんの目が据わっている。ああ、コレが元ヤンの眼力がんりきか。俺は逆らうなという本能に従い頷いた。

 そして、アカネさんと別れてコアに近づいていく。

『ちょっと、何をする気なの? ハン、最初に私が提案した勝負に挑む気ね! でも貴方に勝ち目はないわよ!』

 俺はまだ喋り続けるコクアを無視して両手をおいた。無音も発動する。そして、金精コンセイ様から頂いた異能を発動する。昨夜のサヤとマコトを思い出しながら。その瞬間、

『ハヒィーーン! 何コレー! ダメ、ダメよ! コレ以上はムリーーーッ!』

 一際甲高い嬌声きょうせいを上げてコクアは果てた。俺の勝利だ。

 五分後、素直になったコクアが俺達に謝る。

『私が悪うございました。新しいマスターの言うことに絶対服従いたしますので、どうかお許し下さい。そして、またいつか私に両手を置いて気持ち良くしてください。アレ無しでは生きれない体にされてしまいましたので······』

 その言葉を聞いてから、ジト目でこちらを見るサヤとマコトを意識しながら、俺はコクアに言う。

「さてと、最後の言葉はまあ考えておくということにして······ コレでこの洞窟だんじょんの支配権限は完全に俺のモノになったんだな。そこで、俺達は強くなる為にレベルをここで上げたいと思ってる。今はこの洞窟だんじょんは地下何階まであるんだ?」

『はい、マスタートウジ。現在は地下十五階です。この管理部屋は地下十六階になりますが。死んだ魔物の魔素を利用して階層を深くする事は可能てすが、それでも今の魔素の量では地下二十階が限界になります』

「今は階層を深くするつもりはないんだ。コクア、地下五階以降に効率的にレベル上げを出来るように魔物を出現させる事は可能なのか?」

『はい、可能です。現在、地下五階にいる八名に対してそうすれば宜しいでしょうか?』

「そうだな、地下五階と六階、七階を今いる八人の為に魔物を出現させてくれ。それとは別に俺達五人は地下八階に向かうから、八階、九階、十階を同じように効率的に魔物を出現させてくれるか?」

『はい、マスタートウジ。了解しました······ 完了しました。なお、地下十階には大部屋にてボス級の魔物を配置しております。パーティーで倒されますと通常の二倍の経験値が皆さんに入るように設定しました、ご利用ください』

 すっかり俺に従順になったコクアの提案に嬉しくなった俺は、今後も素直で居てくれるなら、特別な依代よりしろを用意してやると約束してやった。

『本当ですか!? ならば私は一生マスタートウジに逆らいません!!』

 そう期待に満ちた声で言うコクアに、もう暫く様子を見て俺が納得したらだぞと言ってから五人で地下八階に移動した。
 さあ、やっと落ち着いてレベル上げだ。
 あっ、でも邪竜を倒した経験値が入って俺は五レベル上がって、四人は三レベルずつ既に上がっているが······ 
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