俺のスキルが無だった件

しょうわな人

文字の大きさ
64 / 92

国王陛下失恋の件

しおりを挟む
 意気揚々と冒険者ギルドに向かうタイサン国王に俺は、侯爵の件が片付いた事を知らせたい人がいるからと抜けさせて貰った。
 俺とサヤだけでマダラの元に向かう。マコトには念の為にタイサン国王の護衛をお願いした。
 少し拗ねてたので、今晩は頑張ろうと思う。

 マダラの隠れ家についた俺達二人はマダラと三姉妹にもう、侯爵に狙われる事はないと伝えた。詳しい事は説明できないが、侯爵は王都で裁かれる事になったと教えたら、マダラはホッとしたようだ。
 
「これでこの娘らにも安心して過ごして貰える。有り難う、トウジさん」

「「「有り難うございます」」」

 四人に礼を言われ、照れる俺とサヤ。サヤは三人姉妹に何かを伝えている。恐らく、自己防衛出来る魔法を教えたのだろう。三人姉妹はサヤに有り難うございますと頭を下げていた。
 俺達はマダラに頑張ってくれと言ってから、隠れ家を出て、冒険者ギルドに向かった。 

 ギルドに入ると皆がワチャワチャと話をしている。皆が笑顔なのは大きな問題が片付いたからだろう。俺とサヤはそれを見ながらギルマスの部屋に向かった。そこでは、

「いくら国王陛下と言えども娘はやらん!」

 ザーバスの怒鳴り声が廊下にまで響いていた。こりゃ、タイサン国王は苦労しそうだな。他人事なので気楽にそう思ってノックしてから部屋に入る。

 そこには顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているヨッパちゃんと同じく赤い顔をして鬼の形相のザーバスがいて、その真正面にタイサン国王とナッツンが座っていた。マコトは我関せずの姿勢で離れた場所に立っていた。俺達二人を見たマコトが嬉しそうに近寄ってくる。

「早かったのね。二人とも」

「詳細は言えないからな。マダラには侯爵がもう悪さが出来ないとだけ伝えて来たんだ」

「あと、三姉妹には防衛魔法を教えてきたよ」

「そうなんだ。それなら良かったわ。じゃあ、私達も宿の確保に行きましょう」

 マコトが俺達を急かしてそう言った時にナッツンがこちらを見て言った。

「キヒヒヒ、ちょっと待って下さい。私も一緒に連れて行って貰えませんか?」

 口では笑っているが、他人の色恋に巻き込まれたくないと目が訴えているナッツン。しかし、タイサン国王はそれを許してくれなかったようだ。

「ナッツン宰相、この怒れる親を鎮める良い方法を一緒に考えてくれないかな?」

 その言葉に泣きそうな顔になるナッツン。俺達はそれに同情しながら、じゃ、と言って出ようとしたが、今度はザーバスが俺達を引き留めた。

「待て、いや待ってくれ。S級冒険者である三人からも言ってくれないか? 私は娘を国王の愛妾にするつもりなどないんだ!」

 そこでタイサン国王が今気がついたと言うようにザーバスに言った。

「少し誤解があるようだな。ザーバス、僕はヨッパをめかけになんて思ってないぞ。王妃に迎えようと思って言ってるんだが」

 俺はそこで口を挟んだ。

「いくら陛下がそう言っても周りがそれを許さないんじゃないか?」

 俺がそう言うとタイサン国王は不思議そうな顔で言った。

「この国の王族は今や僕一人だし、僕はこの国から放逐されてもヤーマーラ国に戻ればまた筆頭魔道具師に戻れるから、困る事はないしね。クフフフ、もし僕とヨッパの結婚を邪魔するようなら、僕はこの国からヨッパと一緒に出て行くだけだよ」

 そこでサヤが口を挟む。

「陛下、肝心なのは陛下の思いとギルマスの思いじゃなくて、ヨッパちゃんがどう思ってるかだと思う」

 そこでタイサン国王とザーバスはハッとしたようにヨッパを見た。皆から見つめられたヨッパは赤い顔が更に赤くなったが、真っ直ぐにタイサン国王を見てあるものを取り出して話をしだした。

「この魔道具は陛下が作られたとお聞きしました。そうなんですか?」

 そう、ヨッパちゃんが取り出したのはあの眼鏡だ。かけてる人の瞳を見えなくしている眼鏡だが、タイサンが作ったのか…… 何であんな風にしたんだろうな。

「そうだね。それは僕が作った魔道具に間違いないよ」

 タイサン国王の返事を聞いてからヨッパちゃんが更に質問を重ねた。

「陛下はどのような気持ちを持ってこの眼鏡を作られたんですか?」

 タイサン国王はその質問にもスラスラと答える。

「気持ちと言われると難しいけど、僕は世の中には弱視や斜視の人がいて、その自分の目にコンプレックスを持っている人が多くいる事を知ったんだ。だから、その人達の目を治す事は僕には出来ないけれど、良く見えるように魔道具を作る事は出来た。そして、コンプレックスの元になる目が相手から見えないならば、その人達も少しは楽に生きられるんじゃないかと思って作ったんだよ」

 その返事にヨッパちゃんは頷いて、タイサン国王を見た。

「陛下、陛下は本当に皆が噂する通りの心優しく、正しい道を行かれる方だと知れました。そんな方に求婚されて、私も非常に嬉しいのてすが、私は平民ですし、貴族やまして王族の作法などは一切知りませんし、知りたくもありません。ですので、陛下のお心に叶う事は出来ません」

 ヨッパちゃんの返事にタイサン国王はまた不思議そうな顔で言った。

「えっ! ヨッパに貴族の相手や王族の作法なんてさせるつもりはないよ。寧ろ仕事を続けたいならそのまま続けて貰って構わないんだ。ただ、僕の妻となって時に僕の愚痴を聞いてくれたり、愛し合ったりして欲しいだけだよ。それをダメだと王宮の者やこの国の貴族達が言うなら、さっきも言ったけどこの国から出て行くだけだよ」

 そこでザーバスが口を開いた。

「ガキか、お前は」

 おおう、冒険者ギルドは確かに国とは関係がないが、一国の王に向かって言うセリフにしては過激だな。などと思いながら実はサヤとマコトの手を引いてジリジリと出入口に近付いている俺。
 後は当事者でお話して欲しいです。そう思った時にタイサン国王がザーバスに言った。

「うん、僕はガキだね。ただね、幼い頃に王位継承者から外れて好きな道をいけと後押ししてくれた父や兄が亡くなった途端に、国民の為に王位につけと脅された僕は今でも少し怒ってるんだ。この国の大人にね」

「それでもお前は受けたのだろう。受けたからには責任があるんだよ。どんな仕事でもな」

「それはザーバスに言われるまでもなく分かっているよ。僕は責任を放棄すると言ってるんじゃないんだ。責任を果たす為に、僕の希望も叶えて貰うのは間違いなのかい? ねえ、ナッツン宰相はどう思う?」

 ここで振られるとは考えてなかったのだろう。慌てるナッツンは見物だったが、俺にも振りかかるかも知れないと心の中で身構えた。
 しかし、そこでマコトが喋り出したのには俺も驚いた。

「あの、ゴチャゴチャとお話されてますが、陛下。陛下はもう振られたので、今回は諦めて振り向いて貰える様に努力すべきだと思います」

 そのマコトの言葉にガーンとした顔をするタイサン国王。

「や、やっぱり振られたんだよね。何とかソコを有耶無耶にしたかったんだけど······」

「ヨッパちゃんからハッキリ告げられたのですから失恋ですね」

 そう言ってニッコリ微笑むマコトは、ヨッパちゃんとナッツンからは感謝の眼差しを、気づいてなかったザーバスからは何で俺は気づかなかったとの呟きを貰って、皆が解散と言う事になった。

 解散の時にタイサン国王が初恋は実らないって本当なんだな······ と呟いたのを聞いたのは俺だけだっただろうな。タイサン国王は今夜は枕を濡らして寝る事になるだろう。それが、人として成長に繋がるんだ、頑張れ、タイサン! と心のなかで応援しておいた。


 その後、俺達は無事に宿屋に入り、夕食も食べて部屋に戻り、無音をかけて久しぶりに『女性喜ぶ左右の手指』を駆使して二人を喜ばせた。
 最近は二人も負けじと色々なテクニックを駆使してくるので、俺も負けるものかと意地になってるところもあるが、互いに気持ちが高ぶるからそれも良いと思うようにしている。
 サヤとは十二回、マコトとも十二回をいたして心地好い眠りに三人でついた。





しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

処理中です...