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金精様の神力の件

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 俺達は住人達と協力して先ずは資材となる木の伐採から始めた。専門職のオッチャンが居たから、そのオッチャンの指導の元で使える木を伐採して行く。切って倒した木を俺が無重力で軽くしてやると、十二~十四才の子供達が広い場所まで二人一組で運んで行く。広場では枝払いを行い、丸太状態になった木を積み上げて、マコトが魔法で乾燥させる。そして、サヤが皮を剝いで、それをまた子供達が荷車に積み上げる。

 荷車に積まれた丸太はそのまま温泉まで運ばれて、俺が簡易で作った作業場で職人達が板や柱に加工する。軽いので大人なら一人で丸太を持ち上げられる。八人いる職人それぞれが作業を進めていくので板や柱がドンドン出来上がった。

 サービスで良く切れるノコギリや、鉋、鑿等の道具を俺が作ったから、スピードが尋常じゃない。そして、その出来上がった資材を建てる予定の場所に振り分けて持って行くのが女性達だ。それぞれの建設場所に資材置き場を指定して印をしてあるからソコに持って行き置くだけだが、ソレを職人がしなくて良いのは効率を考えれば良い事だろう。

 そうして、三日間は人員を総動員して伐採、運搬、加工、また運搬を繰り返していた。【温泉】はそのまま利用せずに、源泉として利用する事になったので、先ずは一番温度の高い場所を探した。勿論、俺の無謬で。

 温泉のちょうど真ん中辺りが凡そ八十度の湯が湧き出している場所のようだ。しかし、そこから引くとなると、ポンプが必要だな。俺は一旦保留して貰い、サヤやマコトに相談する為に屋敷近くの広場に戻った。広場に着くと金精様とコクアの声が聞こえた。

「我が来たからには温泉が完成したも同然じゃ。さあ、トウジはドコにおる?」

「アナタ、マスタートウジならソコに居るわ」

 コクアが俺を見つけて金精様にそう言った。ちょうど良いと思い俺は金精様にも相談する事にした。
 泉の真ん中辺りから湧き出している高温の源泉を、どうやって引き出すか考えていると言ったら、

「何じゃ、簡単じゃろう。我を案内するのだ」

 金精様が自信満々にそう言うから泉に連れて行く事にした。温泉に着いた金精様は、

「フンフン、アソコじゃな。それで、取り敢えずはドコに引っ張るのだ?」

 と聞かれたので、俺は温泉旅館の建設予定地を教えて、ここに旅館を建てて、全室に温泉風呂と大浴場を三つ作る予定だと伝えた。

「フム、ならば取り敢えず引き上げれば良いな。建設が終わってからソコまで引き込む様にすれば良いしな」

 そう呟いた金精様から温泉に向かって神力が放たれた。すると、泉の真ん中からご神体が! そして、そのご神体の先から湯が筋裏を通って流れ出した。湯量は十分に流れているが、コレで良いのだろうか?
 俺は手を止めて見物していたコンカッセ夫婦や住人達を見た。すると男性は兎も角、女性達も顔を赤らめながらもニコニコしていた。俺はコンカッセ夫婦に近づいて聞いた。

「その、目立つ場所にアレだが、良いのか?」

「トウジ様、温泉とは裸になる場所です。アレが逆に相応しい場所でもないでしょうか」

 コンカッセがそう言うので、俺は実はと金精様について説明をした。そのご神体についても。説明途中にご本人も来て俺の説明を聞いている。俺が説明を終えたらコンカッセが、

「金精様、貴重な素晴らしい奇跡を我らの為に起こして下さり、誠に有難うこざいます。この地に金精様のご神体が出来ました。我らはこれから金精様を敬い信仰いたします。どうか、末永く加護をよろしくお願い致します」

 コンカッセ夫婦が、住人達が揃って頭を下げる。金精様は少し顔を赤らめてぶっきらぼうに言った。

「フン、我を敬うと言うなら止はせぬが、あの程度で奇跡と言われては我の沽券に関わる。よって、この地の温泉に【子宝】の効能を追加しておいてやるから宣伝に使うが良い」

 照れてるな、金精様。何せこの世界で初めての信者だろうしな。しかし【子宝】は最高だな。コレで良い宣伝になる。俺は嬉しくなってコンカッセ夫婦や住人達に言った。

「信仰するには【お社】が必要になる。教会とは違い【お社】は誰でも好きな時に拝みに来れる場所だ。設計図を書くから追加で建設しよう」

「おお、それは良いですな。我らが大切に子々孫々まで守りましょう」

 皆からの賛成の言葉を聞いて更に照れる金精様とニコニコ笑顔のコクアが居た。ソコで俺は思いついた。

「コチラに居るのは金精様の妻神様だ。妻神様のご神体も作って、夫婦和合、子宝、安産のお社にしよう」

 俺の言葉にエッ、エッと慌てるコクアだが、もう遅い。皆がコクアにも頭を下げてよろしくお願いしますと言っている。

「えっと、あの、ハイ。こちらこそよろしくお願いします」

 ソレは神様としてどうなのだという挨拶を返すコクアだが、新興の神様だからちょうど良いかとも思った。そこで、金精様の悪ノリが始まってしまった。

「建物を建てる前に風呂だな。ココに先ずは男湯だ。そして、板塀を敷くだけのスペースを開けて女湯だ。それからその奥に脱衣所を作るとして、そのスペースを開けて、ここに混浴露天風呂だ」

 言葉通りに浴場が完成してしまった。しかも湯船はミスリ製だ…… 床は真っ平らな石が排水口に向かって少しだけ傾き並べられている。手で触るとほんのり温かい。

「これは温石ぬくいしと言ってな、常に二十八度位を保っておるから、寒い時期でも温かいのだ。我からのサービスじゃ」

 俺は諦めと共に職人達に言った。

「少し建屋の変更が必要になったけど、コレだけ立派な風呂が先に出来たんだから、頑張ろうか」

 俺の言葉に固まっていたコンカッセや職人達が口々に金精様を崇め始めた。

「これは凄いです。勿論、この風呂に合わせて建屋を建てましょう。こんの立派な風呂を一瞬で作れるなんて、金精様! 有難うございます!!」

 ここでコクアも悪ノリを始めた。

 ご神体から湧き出ている湯を一旦女陰石ほといしで受けて、ミスリのコノ字配管を伝わせて、湯船に湯を入れ始めたのだ。
 そして、排水口には永久濾過を作って取付けて、キレイな状態で泉に帰るようにしてしまった。永久濾過は溜まったゴミ類を勝手にコクアの所持する亜空間に送り、処理してしまう装置になってるそうだ。
 更に、ミスリの配管もそれぞれの湯船に三本あり、八十度の温度が湯船に入る時には少し熱めの四十三度に調整されている。更に、建てた旅館の各部屋の風呂に送る為の丸配管も準備してしまった。

 建屋が出来て風呂が設置されたら、排水口に同じ濾過装置も取付けるからとコクアが言う。

 皆が二人を拝み倒した。

「我ら金精様とその妻神様を子々孫々に至るまで、崇め奉ります!!」

 まあ、この世界に来て初めての信者だろうしな。よっぽど嬉しかったんだろうな、金精様も。俺はそう思い何も言わないでおく事にした。

 それから、出来た風呂に合わせて建屋の設計を書き換えて職人達は急ピッチで、それでいて丁寧に仕事をこなしていった。旅館の建屋が出来上がったのは五日後だった。各部屋の湯船は日本のヒノキによく似た香りの木を利用して作られた。入ると清々しい香りが鼻孔をくすぐる。ココでも金精様の神力が炸裂した。

「木は使うウチに見た目は味のあるモノになるが、この香りはずっと続くようにしてやったぞ」

 はい、何から何まで有難うございます。コレで旅館は出来たが、次は売店や工房、倉庫を作成していかなければならない。まだまだ完成までは時間がかかりそうだが、俺、サヤ、マコトに金精様、コクアを含めた五人はコンカッセ夫婦や職人たちと充実した日々を過ごしていた。

 そして、村から問題がやって来た。村長とその取り巻きがコンカッセに抗議をしに来たんだ。
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