愛を請うひと

くろねこや

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その後の話

メッセージ

夕方。

急いで会社からアパートに帰ると、詩音の靴は既になかった。

彼は早めに出勤してしまったようだ。


玄関のシューズボックス。
その上にパステルピンクの箱が置いてある。

「まったく。こんなもの『見えるように玄関に置くな』って何度言ったらわかるんだ…」

箱にはトロけたような文字の形で、
『濡れ濡れ 極うす0.01ミリ』『大容量』と大きく書かれている。
ローション付きのコンドームだ。

『ナマはダメ』と言ったらすぐにネットで取り寄せていた。


「急な来客があったらどうするつもりなんだ」

誰かに見られたら恥ずかしすぎる。
思わず独り言が口から出ていた。

とりあえずタオルを箱の上から掛けて、パッケージが見えないようにする。


初めて『約束』した昼休み。

家に帰り玄関で鍵をかけていると、待ち構えていた詩音に後ろからズボンと下着を引き下ろされた。
靴を脱ぐ前にいきなり背後から襲われたせいで、『お帰りなさい』と囁く彼の声が聴こえるまでの間が怖かった。

飢えた獣のようなハァハァという荒い息を首筋に感じ、思わず首をすくめていると、ローションをまぶした指で後ろをクチクチと早急に慣らされる。そのまま強引に突っ込まれたせいで、ドアにすがりついた手の甲に口を押し当て、必死に声を抑えることになった。

『ナマで突っ込まれた』と気づいた時には遅かった。

事後に、詩音の指でき出してもらったものの、おかげで昼食を摂る時間がなくなり、久しぶりにゼリー飲料のお世話になった。

『朝だけでなく昼もゴムを使ってくれ。じゃないと、もう昼にはやらない』と言ったら、すぐにこの箱が用意された、というわけだ。


ちなみに、この箱は詩音からのメッセージでもある。

玄関に置いてある日は

『明日の昼休みは、必ず帰ってきて抱かせてほしい』

キッチンに置いてある日は

『明日の朝、出勤前に抱かせてほしい』

という意味だ。


朝はベッドでされると長くなるし、また眠ってしまうとまずいから、腕時計を見ながら立ったまま受け入れる。

時計が気になるせいで集中していないことが詩音にバレてからは、スマホのタイマーをセットするようになった。

時間がない日は朝食を準備しながら、後ろから悪戯される。



昼休みは60分間。

そのうち、移動には念のため往復で15分。

食事に15分。

残りは?

そう。30分しかないのだ。


帰ってすぐに玄関で抱かれて、ボーッとしている間に口移しで食事させられる。

または、リビングの床の上。シャツ一枚の姿にされ、対面座位で緩く抽挿されたまま昼食を与えられることもある。


行為の最中にいつも乳首をコリコリされるせいで、仕事中インナーに擦れジンジンしてしまう。
すると、先程までナカにいた詩音が恋しくなり後ろが疼く。
もはや条件反射というやつになってしまったのかもしれない。


気怠い身体で外に出ようとすると、職場まで詩音が腰を支えるように送ってくれて、夕方には迎えに来てくれる。

『近いから平気だ』と言っても聞いてくれない。
鏡を見せられたら、確かにダメな顔になっていた。

職場でバレていないか心配だ。
大人の対応をしてくれる人達しかいないから、気付いていても、気付かないフリをしてくれている可能性が高い。

邪念を払うように必死で仕事をするし、身体が怠いせいで最小限の動きにするため、かえって作業効率は上がっている気がする。




「んっ…、んっ、」

すがりついているシューズボックスが、ガタッガタッと音を立てる。

今日は下半身だけ剥かれた『玄関コース』だった。靴のせいで足首にズボンと下着が絡んだままだ。

後ろからキスされ、口が塞がれているから声は漏れない。ひねられた首が痛む。

体重をかけられ、ガタガタ揺らされることで作りつけのコレが壊れないか心配になる。

「ん~~!!」

集中出来ていないことに気付いた詩音に、両方の乳首をギューっとつねられた。

その時だった。
急に膝裏を抱えるようにして下半身を持ち上げられる。

「んっ?」

そのまま玄関のたたきに、詩音がドスンと腰を下ろした。

その衝撃で、

「~~~♡♡♡」

一気に『奥』まで入った。

視界がチカチカし、腰が痺れる。


がぽっ、ぐぽっ、と深く侵入されては、引き抜く寸前まで尻を持ち上げられる。

「かはっ…」

唇が解放されたのに、息が苦しい。

「くっ、ぁあっ…、ぁあっ…、」


ゴムを着けた詩音がナカに射精したらしい。
最奥で激しく暴れ回る。

こんなことされたら…。

身体の制御が利かず、そのままプシャーッと潮を噴いてしまった。

箱に掛けておいたタオルがさっそく役立つことになった…。



ペチャ、クチュ、

腰に力が入らないオレの口に、詩音が噛み砕いた『昼食』がドロリと流し込まれる。

そのまま舌を絡められるから、彼の唾液と混じり合ったものの味が良くわかった。

「うまいか?」

ゴクリ、と飲み込んだところで問われる。

「おいしい…」

と答えると、彼は満足そうに頷いた。

もう一口、与えられる。

リゾットみたいな食感にされた『それ』は、たぶんパエリアだろう。

魚介の味と、サフランの味がした。

夜勤明けで眠い筈なのに、わざわざオレの好物を作ってくれたらしい。

「ありがとう。すごくおいしい。もっとたべたい…」

うれしそうに微笑んだ詩音は、大きな鍋の中身が空になるまで口移しで食べさせてくれた。

もちろん、
半分は彼の口に戻して飲み込んでもらった。

オレの唾液も混ざってさらにドロドロのはずなのに、彼は幸せそうだ。


ちゅ、くちゅ、と音を立てながら
名残惜しく深いキスを繰り返していると、スマホのタイマーが鳴り、現実に戻る時が来てしまった。





盛大に潮で濡らしてしまった服を着替えると、いつものように会社へ送ってもらった。

彼の腕に支えられていた身体が離れる寸前、
耳元に

『帰ってきたら、またさせて…』

と囁かれた。



また欲しくなっていたオレは、
真っ赤になってコクリと頷いた。
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